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第二章 お見合い編
お客様?1
しおりを挟む外の景色が急に森になり、抜けた先でカラスのお里に入った様だった。
軒下に提灯が並ぶ日本家屋なのに、街灯は洋風で何だか不思議な感じ。
遠くに見える行き交う人々は皆和装で、タイムスリップしたような気持ちになる。
「素敵な街だね、けど車にびっくりしちゃわない?」
「慣れてるから、平気だよ。無理に現世に合わせる事はないが、カラスに合った文化は取り込んでる。飛んだほうが早いから車は使わんだけだ」
後ろから涼風の寝息が聞こえる。
涼風が寝たから、また一つ速度が落ちたんだとわかる。
「俺の周りは現世にとけこんでるしな。雲雀なんて学府まで行ったぞ」
へぇ。うまく取り入れながら独自の文化を築いてるって事かな。
車寄せに停めて、涼風入りのベビーシートゆりかごを片手に持ち助手席のドアを開けてくれた。
「「「お帰りなさいませ」」」
飴色の木の重厚な両扉が開き、じいやさんと数人の使用人が出てきて車から荷物を出していく。
「坊ちゃま、涼風坊ちゃんはじいが」
「いい。来てんだろ?着替えの準備を」
「じいも持ちたい!!!」
「……………………はよしろ」
やっぱりお客さん来てるのか。
月宗様は私とゆりかご涼風を部屋に送り届けてレレさんに何やら命令をしてから出て行った。
「お嬢様、お疲れでしょう?ちゃちゃっと終わらせる予定なんでもうちょっと頑張ってください!終わったらスペシャルスパにしましょう!!」
ん?私もお客様と会うのかな?
休憩をたっぷりとってもらっていたから特に疲れてはない。
薄い金地に白梅の打掛を着せられて、緩く巻いていた髪を生かす様に高い位置で一つに結んでいく。
ニコニコしたマキノさんが私のリボンボックスを持ってきて目の前で開き、白い絹の幅広リボンと銀の組紐を取り出した。
二つとも重ねてリボン結びにして長く垂らす。
裾を引きずる打掛は上手に歩かないとさばけない。
大奥のテレビドラマの様に前を軽く持ち立ち上がると、ちょうどノックの音がした。
「月宗様かな!?」
嬉しくって駆け寄りたいけど、ゆっくりとしか動けなくてもどかしい。
「月宗様!!」
ガバッとドアを開けるとそこにはニコニコしたじいやさん。
「ふぉふぉ、おやおや、坊ちゃまも隅におけませんなぁ。じいやがお迎えにあがりました」
おどけた道化師の様に円を描き片腕を広げ、足をクロスさせてぺこりと頭を下げた。
「じいやさん…………うぅ……恥ずかしいので月宗様には言わないで下さい……」
「じいや、とお呼び頂ければご随意に」
「うぅ…………じいや……お願い」
「ふぉふぉふぉ、承知致しました」
「お姫さん、綺麗やなぁ。これ見せたらあかんのとちゃう?」
後ろに雲雀君もいて、袴姿で帯刀してる。
なぜに帯刀。
ニッコニコで大事そうに涼風揺籠を抱いたじいやに先導されて、私のすぐ後ろを雲雀君が続く。
長い廊下を進み、何度も角を曲がる。これ自分じゃ絶対帰れない。
錦の襖が奥に見えた所で涼風が起きたのか、ピョコンと飛んで前方に棒を向けて立ちはだかった。
「涼風坊ちゃん、分かっております。お嬢様には指一本触らせませんのでご安心下さい」
「涼風~~~ちょっと我慢ねーー!!」
私が呆気にとられている間にレレさんが光の速さで涼風に狩衣を着せつけていく。私とお揃いの薄い金地の狩衣を着せられている間も六尺棒を扉の方に向けて警戒してる。
「涼風、終わったらこれ付けてあげるからね!」
レレさんがオレンジのまん丸ポシェットを涼風に見せ、向こうを向いて警戒したままの涼風のサングラスを外し布面を優しく付けた。
「お顔、見たかった……」
「秘密で~~~す!」
しょんぼりしたじいやが言い、レレさんが着替えの終わった涼風を後ろから抱きしめる。
「可愛いのん?」
雲雀君まで呑気な感じ。
なんかお客さんに会うのにめちゃくちゃ時間がかかっているけれどいいんだろうか……
「す、涼風?」
私の声にこちらを振り返った涼風は駆け寄ってこようとし、着物の端を持つ私の手元を見てショックを受けた様に止まった。
「坊ちゃん、お嬢様はお着物をお持ちですからね、じいやがお抱きしても?」
涼風は布面ごしにじいやをじっと見たあと、ばんざいで応えた。
「ん゛ん゛っっ!!!」
おぅ……陥落したな。
デレデレなじいやが涼風を抱いて進む。
レレさんが錦の襖を開けるとすごく広い座敷の上座に出て息を呑んだ。
20センチほど段になった上座に着流し姿の月宗様が座ってる。黒地に薄い銀の流線が入った羽織を肩からかけて、超だるそうにキセルを吸っている。
下段の広い座敷には、平伏したままの人、人、人。
平伏というか、土下座に近い感じ。皆頭が畳に付いている。
「な、何……」
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