眷属神の花嫁〜四当主の花嫁争奪譚〜神縁の行方

雨香

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第二章  お見合い編

心配

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 たっぷり獅子丸と遊んでその背中で電池が切れた涼風すずかぜはベシャっとうつ伏せで眠ってしまい、頭のいい獅子丸が心得た様に丸くなって一緒にお昼寝をしている。

類君もなんとか起きようと頑張っているけれど、うつらうつらと船を漕いでいて時間の問題。

 動かすのも可哀想なので私も涼風すずかぜのそばのソファーに落ち着くと、隣に恭さんが座った。

「ゆっくりしていけばいい。晩餐まで、まだ時間はある」

「はい」

「兄君が来ているぞ」

「悠君が…………?」

「ああ、ここは花嫁とその家族が会う場所でもある。兄君は……こういったらなんだが食えない男だな」

鋭い人だ。
今はまだお父様が宗主で、彼は軍部の総帥だと言っていた。

「そう…………ですね、頭のいい人です」

「だろうな」

なんと言ったらいいのかわからない。
手持ち無沙汰になって、月宗様のジャケットをギュッと握る。

「苦手なら、守れる。桜子殿は必要なさそうだが」

苦笑して大丈夫、と呟く。
暴力を振るわれるとか、酷い扱いを受けるわけではない。周りを一切無視した好意の圧が怖いだけ。

「何かあれば遠慮なく言ってくれ。必ず助ける」

「はい……」

恭さんはそれだけ言って私の頭をくしゃっと撫でてから部屋を出て行った。

 冬の午後の柔らかな日差しがアーチの窓から長く入り、私もウトウトと眠くなる。
獅子丸のフサフサの尻尾が私の足に優しく絡まったのがわかった。




◇◆◇




「起きたか?」

「ん…………月宗様……」

 いつのまにか月宗様に横抱きにされ、羽根の中で眠っていたらしい。気づけば私の腕の中には涼風すずかぜがいて、すぅすぅと微かな寝息が聞こえる。寝ぼけながら私の所に来たのが分かって思わず抱きしめる。

「俺がエスコート出来るから、迎えに来た」

「もうそんな時間…………?」
外はもう夜気が満ちている。

「兄貴が待ち構えてる。桜子をぶつけてあるけど、面倒だしこのまま帰りてぇ」

「ほんとだね」

 図書室は淡い光を放つシャンデリアとオレンジのランプに照らされて、静かな温もりに満ちている。

「ここ、素敵だね」

「うちにも同じ物を作ってやるよ」

「ふふ、プレゼントの規模が大きすぎ」

「そうか?別にもっとデカくてもいい」

「月宗様がいれば、それでいい」

 首の後ろから髪を撫でるみたいに頭を支える彼のキスの合図が好きだ。
大きな手が髪を分けて、キスの瞬間長い指が私を優しく引き寄せる。

この手が私に触れるだけで、体が溶けていく様な気がする。 

「ん……はぁ……」

「くっそ!いいとこなのに時間だ。おいガキども起きろ!」

パヤパヤとした涼風すずかぜが類君と獅子丸を探してキョロキョロとする。

「もっと、ここにいたい」

「~~~くっそ!!!!」

片手で顔を覆って何かと葛藤している月宗様を名残惜しく見つめていると、図書室の入り口扉からノックの音が聞こえた。

「おい月宗!誤魔化し切れん!!出てこい!」

その声に覚醒した類君が人化してかけていきドアを開けると、月宗様に怒りながら類君を抱き上げる夜臣さんがいた。

「兄様!類は良い子にしております!」

「知ってるよ」

ふふ、かわいいなぁ。
類君を見る目がすごく優しい夜臣さんは、見た目とのギャップがすごい。

「くぉら!!この場で花嫁の独占はできねぇんだよ!はよ来い!!」

「俺の育て役が鬼…………」

夜臣さん強いな…………



◇◆◇



「結衣ちゃん!!大丈夫だった?心配してたんだよ!?」

 晩餐会場ではなくホールで私を待っていたらしい悠君が駆け寄ってきて肩を掴む。

やんわり月宗様が間に入ってくれて距離は取れたけれど、月宗様にジャケットを返してしまって触られた肩がなんだか気持ち悪い。

どんどん身が縮こまって、彼の後ろに隠れたくなる。

「家族の再会を、邪魔しないで欲しいなぁ」

「兄様!姉さんはもう決まっているけれど、私のエスコート役がいないの……」

桜子が悠君の腕にぶら下がる様にくっ付く。
パステルグリーンのシフォンドレスがとても似合っていて可愛らしい。

月宗様の視線の先が気になって上を向くと、私と目が合ったことに赤面する。

「行くぞ結衣」

「あ、うん」

 月宗様は動じていないように見える。
悠君の小動物みたいな童顔な顔に光の無い目が、私はとても怖いのに。
歯牙にもかけない態度の彼にしがみつくみたいになってしまう。

——私はあの目に映りたくない。

 ゆったりと私をエスコートして晩餐会場まで移動する彼が頼もしく、隣にいられることが嬉しい。

「桜子、ちょっと離れて」

後ろで冷静な悠君の声がする。
桜子と話しているはずなのに、視線をひしひしと感じる。

 バサっと音がして月宗様が羽根を出して私を隠してくれた。黒い羽根が私を囲う様に寄り添って、涙が出そうになる。

安心の場所が嬉しくて、内側に擦り寄るとビクッと羽根全体が硬直した。
不思議に思い上を向くと口元を手で隠した彼がワナワナしてこちらを見る。

「振り回される…………いや振り回してもいいんだが…………」

「?何の話?」

「……………………何でもない…………」



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