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第二章 お見合い編
綻びのはじまり
しおりを挟むフランス料理のコースを無口な方のじいやがメイドと共にスムーズに給仕する。
なごやかとは言えない会話。
桜子が一生懸命悠君に話しかけ、悠君がいなす。
私は月宗様の横で悠君は斜め向かい。
視線は感じるけれど、恭さんや笹音さんと、事務的に話す悠君と目を合わさない様心がける。
ここまで獅子丸に乗ってきた涼風は私の膝の上。(獅子丸は奥にある暖炉の前でねそべってる)
私達の後ろに護衛として立つのが夜臣さん。
今日は四つ守さん達は屋敷の警備なんだって。
広い部屋には笹音さんの臣下らしき人も恭さんの臣下の人も数人ずついる。
すごく落ち着かない。
宗主三人は慣れているのか飄々としてるけど、私はせっかくのご飯も砂を噛んでいる様で味がしなかった。
「桜子は、どこに嫁ぐか決めたの?」
珍しく悠君が桜子に話しかけ、頬を染める桜子が嬉しそうに答える。
「兄様は、どこがいいと思いますか?やっぱりここにいた方が……」
「どこでもいいんじゃない?」
桜子と話す時の優しい声なのに無機質な感じが怖い。桜子の答えに被せる様に切り捨てる返事を返す事も。無意識に月宗様のスーツの裾を掴む。
「とはいえ、兄としては妹の嫁ぎ先がどんなところかは知っておきたいんだけれど」
「潔斎と禊をして頂く事になりますが、不可能ではありません」
笹音さんがにこやかに答える。
「へえ?潔斎と禊、ね」
「早くて5日ほどか。肉と酒、女を断ち、血にふれず、病にふれず、怒りを鎮める。それに加えて毎日清浄な川に打たれる禊がある。この季節に、出来るのか」
恭さんが腕を組んで言う。
「わりと得意なんだよね、そういうの」
「ならば妖狐の里は歓迎致しますよ」
「狛犬の里も特に問題はない」
月宗様はだまってる。
はいもいいえも言わない。鋭い目つきで真っ直ぐ悠くんを見るだけ。
「八咫烏の御当主は僕を入れたくないのかな?そんな態度じゃ結衣ちゃんがどんな扱いを受けているのか不安になるよね?
八咫烏の里を、見ておきたいのだけれど」
にっこり笑った悠君が言う。
「俺が何を言おうとも、お前は結衣を追うつもりだろうが」
「まぁね、嫌とは言わせないよ。こちらは嫁に出す立場だ」
「は!来たければ来ればいい」
頭がぐるぐるする。
涼風が私を心配して顔を覗き込んで来る。
その時ずっと黙っていた桜子が口を開いた。
——————「私も八咫烏の里に行くわ?」
「「「 は? 」」」
三人の宗主が揃って桜子を見る。
「何度も言わせないで。八咫烏の里に行く。早くして」
桜子の隣で悠君はなぜかにこにこしてこちらを見ている。
月宗様は呆気に取られた顔をしていて、会場がしんと静まった。
————「明日、お迎えに参りましょう」
夜臣さんの声が聞こえる。
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