眷属神の花嫁〜四当主の花嫁争奪譚〜神縁の行方

雨香

文字の大きさ
72 / 102
第二章  お見合い編

迎え2


 移転の神術で飛び出した所は背の高い針葉樹の森だった。
お城からこんな森が見えたことはないので随分と遠くに移転したのだなとわかる。

まだ夕方のはずなのに、生い茂った木であたりは暗い。

「ゆいっっ!!!!」

私達を追って移転して来た恭が私を認めて大声を出した。

「恭、ありがとう。私のせいで、ごめんなさい」

「っ違う!!これは我が里の失態!俺の責任だ!」

腕を取られ、そのあまりの力に驚く。

「ゆい、女達が失礼をした。全員捕らえ済みだ。あの様なことはもう二度と起こらない」

取られた手首がギリギリと痛い。
涼風すずかぜが六尺棒を出したその時、低い声がした。


———「返してもらう」

「月宗、様…………」

 数メートル先、バサバサっと音がして月宗様とその後ろに四つ守さん達が降り立つ。

——迎えに来てくれた。
——会いに来てくれた。

「カラスごときが。我が狛犬族の領土に入ることまかりならん」

 恭が怒った声を出し、また腕を掴む力が増す。
私達と月宗様の間に透明な膜の様な物が現れていく。

涼風すずかぜ様!領土結界が戻っております!!もう一度鐘を!!」

類君が叫ぶ。
涼風すずかぜのあの鐘は、領土の中に入る為のものだったのか。

————「必要ない」

月宗様はその場で刀を抜いた。
目に光がなくて感情が読めない。

ヒュンっと風を切る音がしたと思ったらカチャンと刀を鞘にしまう音が被さる。
途端ガラガラと目の前の透明な壁が壊れていく。

「悪ぃ。素振りしたら、当たっちまった」

何ごともなかったかのような呑気な口調で月宗様が話し、恭の額に青筋が浮く。

阿呆鳥あほうどりがっ!!!!!」

「謝ってんのに……結衣、来い!」

涼風すずかぜが何か術を使い、恭の腕を弾いた。

 震える足を叱咤して月宗様の胸に飛び込むと、恭がまた私の手を取る。
壊れた透明な壁の境界の外に出たけれど、取られた左手だけはまだ中にある。

「触るな。駄犬が。」

「黙れ。ゆい、国益を損害した女達は斬首にしよう。俺はゆいを大切にしたはず」

「そんな事!!望んでない!!私のせいで彼女達が殺されるなんておかしい!」

 その時類くんが私の腕の中からくるりと出て来て人化じんかし、刀のさやで恭の腕を殴打した。
思いっきりやった様で一瞬拘束がゆるみ、月宗様の腕の中に抱かれる。

「類、やるじゃねぇか。馬鹿犬、花嫁は返してもらう」

「は!どうせまたすぐに俺が必要になる。お前ではゆいを幸せにできない」

「結衣の願いは全て叶う。俺が、惚れた女の願いを叶えるように生きるからな。諦めろ、鐘は鳴った。天が許さん」

 グルルっと低く唸る様な音がして、恭がくるっと踵を返した。そのままあたり一帯の木を剣で薙ぎ払って、消えた。

「こっわ!!!!あいつあんなんでしたっけ!?」

「怒りを抑えるの苦手ちゃんかな~?戦闘向きじゃないねぇ」
小四郎君が叫び、涼さんが答える。

「あの人、僕が一番戦いやすいタイプやわ。
ちょっと煽ったら、すぐ乗らはるし。素直なお人やわ」

「月宗様、紫波しなみ殿を邸にお呼び立て致しましょう」

「ああ。先に帰ってろ」

私の手首のあざを見て光久さんと月宗様が話す。

涼風すずかぜ、行きますよ」

「あーー…………まぁこいつはいい。結衣が怪我をしたんだ、今は絶対離れんだろ」

と言っても当の涼風すずかぜは月宗様の顔にビタッと引っ付いていて、私から離れないって感じではない。
虫みたいに引っ付いてる。

類君を連れた四つ守さん達がヒュンッと消えて、私達だけ。
顔に引っ付いた涼風すずかぜをそのままに、月宗様は私を抱き上げた。



◇◆◇


 
















感想 318

あなたにおすすめの小説

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

婚約者のいる運命の番はやめた方が良いですよね?!

月白みき
恋愛
結婚に恋焦がれる凡庸な伯爵令嬢のメアリーは、古来より伝わる『運命の番』に出会ってしまった!けれど彼にはすでに婚約者がいて、メアリーとは到底釣り合わない高貴な身の上の人だった。『運命の番』なんてすでに御伽噺にしか存在しない世界線。抗えない魅力を感じつつも、すっぱりきっぱり諦めた方が良いですよね!? ※小説家になろうにも投稿しています※タグ追加あり

護衛対象が番だったのですが? 〜お茶とおにぎりで外堀を埋められています〜

tamameso
恋愛
 筋骨隆々で顔まで良い第一王子ソウの護衛に就いたレン・ハクトウ。  けれど護衛対象は強すぎる上に距離感までおかしい。護衛から始まる、じれ甘ラブコメ。 これは、「暗殺対象が番だったのですが?」のユエン×ティオと同じ空の下の、いつかのお話。

初恋の還る路

みん
恋愛
女神によって異世界から2人の男女が召喚された。それによって、魔導師ミューの置き忘れた時間が動き出した。 初めて投稿します。メンタルが木綿豆腐以下なので、暖かい気持ちで読んでもらえるとうれしいです。 毎日更新できるように頑張ります。

女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ
恋愛
女性が極端に少ない異世界に転生した私は、気づけば伯爵令嬢になっていた。 前世は日本で普通に生きていたせいか、貴族令嬢らしい強気な振る舞いがどうしても苦手。 社交界デビューを迎えても、「どうして私が選ばれるの?」と戸惑うばかりだった。 けれど今年デビューする高位令嬢はわずか三人。 家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士―― 五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。 遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。 異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。 女性希少世界で、自分の幸せを選べるようになるまでの逆ハーレム恋愛ファンタジー。

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆