【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香

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番外編 クルミ

王太子任命の儀      つむぎside

「天と地に誓い、神々を証人としてここに告ぐ。汝を王太子と定め、竜国の正しき後継者と為す。レスター・リア・エルダゾルク、リアの血を持ち王統を継ぐ正しき継承者であることを宣す。王権の証を受け継ぎしその身は国の剣、国のたて、世界の光。この国の歴史に背くことなく、ただひたすらに務めを果たせ」

「御意のままに。御宣下、つつしんで拝承致します」

 真面目な陛下と、こういう時はビックリするぐらいしっかりするレスターの問答が終わり、陛下が王家の報告書類を出して神に奏上を始める。陛下のサインとレスターの拇印をおすと、キラキラと空に光のカケラになって登って行った。

 15歳になったレスターは幼さが抜けてきて、リヒト様そっくりだ。

 王太子拝命の儀式用に、中華風の着物を着ている。上背があるせいか割と似合っているけれど、本人は子供の頃からこの格好が嫌いだ。
 動きづらいらしい。

 陛下の後ろにはクロム君が立ってる。
 学園を卒業後、リヒト様の幹部に戻らず陛下の側近となったクロム君は、だいぶ前に私の背を追い抜き、銀灰の髪が美しい美青年に成長している。
 リヒト様達軍部の軍服は黒地に金の装飾で割とシンプルだけれど、クロム君は黒地にシルバーの装飾の軍服を着ている。陛下の近衛という役割のためか、軍服なのに騎士様のように派手目な装飾がついてる。

 近衛の軍服、イイ!最高!!

 ご病気で宮殿内の寝室で過ごす事の多かった陛下には強い側近が揃っていなかった事もあって、陛下自身が欲しがったんだって。
 クロム君も素直にOKを出したそうだ。
リヒト様の事、すごく好きだったのに何でだろ。
 陛下の側近なら、仕事場も近いし私はどっちでもいいけどね。

「離れに帰るか?俺も今日はもうあがる」

 隣の軍服姿のリヒト様が、眩しい目で中央のレスターを見ながら言う。すごく嬉しそう。

「ん、少し、疲れちゃった。自分の事じゃないのに、緊張しちゃって……」

 当のレスターはすっごく普段通り。楽しそうに陛下とクロム君と何か話してる。メンタル鬼強。

 ひょいと抱かれて運ばれる。
過保護だなとは思うけれど、今日は本当に疲れた。自分の子が将来の王様になる事が約束された日。

 離れではなく母屋の寝室に運ばれて、ベッドにふんわり寝かされた。私をすぐに休ませたかったんだと分かってちょっと面映い。

 大きな広いベッドで隣で何か資料を読み始めた彼の腕の中に入り込むと嬉しそうに笑う。

「リヒト様は良かったの?王様にならなくて」

 今回陛下の次の王様にレスターが任命された。

 リヒト様を抜かして。

 それは陛下とリヒト様が話し合って決めた事なのは知ってるけれど、彼の気持ちを聞いたことは無かった。

「んあ?俺は王なんて器じゃないからな」

「そう?強いんだし、王様向きじゃない?」

「強さだけじゃ駄目だな。兄上のようには俺は出来ない」

「レスターはできるの?」

「あいつはああ見えて兄上に似てるよ」

「ポンコツってこと?」

 リヒト様は楽しそうに笑ったあと何でも無い風に言った。

「思慮深いって事だ」

 えぇ……そうかな……不良予備軍の間違いじゃない?

 リヒト様が父親として子供たちを褒めてくれるのはとても嬉しい。なんだかんだいってても、本当は子供好きなのも知ってる。

 息子達には厳しいけれど、本当は信頼してるんだって分かる。それが嬉しい。

「今日はクロム君とレスターもご飯を食べにくるの。嬉しい」

 クロム君は陛下の居住に部屋を貰い住んでいる。
 来月学園を卒業するレスターも、王宮に王太子の部屋として住まいを与えられ、既にそちらに移ってしまった。
 
 卒業後は王太子として王族の仕事が与えられるんだって。
 離れから旅立つのが寂しすぎて号泣したら、二人とも週に一度はお夕飯を食べに帰って来てくれる。

 秋とクルミは離れから学園に通ってる。
もう1年後にせまるこの子達の卒業後の事はまだわからない。
秋は王太子じゃないから割と自由が効くらしいし、クルミは何を聞いてもはぐらかされてしまう。将来のことを考えるのは、時間がかかるのかもしれない。

 私ばかり双子の進路について焦っているけれど、リヒト様は全く動じてない。
完全に信頼して放っておいてる感じがする。

 そんな風に私も出来たらいいのだけれど、日本人の私には難しい。

「秋はめんどくさがりだけど、王族の仕事にわりとかり出されているし、本気は出さないのになんとかしちゃうじゃない?けどクルミは……」

「クルミは大丈夫だよ」

 ズバッと言われて結論づけられてしまう。
 
「何故そう思うの?」

「軍神がついてるからな」

 軍神?あの子の魔力は強くない。普通の竜人の女の子といったところ。手合わせに参加した事も無いし、本人も興味は無さそうなのに。

 よく分からないけれど、リヒト様の腕の中で、彼に大丈夫と言われるとその通りな気がしてしまう。ウトウトとまどろむような眠気がやってくる。

 彼が私の髪を優しくすく。
 彼に体重を預ける、夫婦の時間。

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