150 / 173
番外編 クルミ
レスター主催パーティー2
月に一度王家主催のパーティーが開かれる。
今日は成人から50歳までの若者が対象とされるパーティーで、若いからか皆ちょっとそわそわしている。
母様の繁栄の加護はレスター兄様に遺伝しているけれど、対外的にはレスター兄様に移ったと公表された。
母様がこれ以上狙われるのを避けるためみたい。兄様達とフォルド伯父様と父様で話し合って決めたらしい。
そのレスター兄様が主催するパーティーは毎回多くの人達で賑わう。
竜人の貴族が多いけれど、他種族の商家や力のある家の方達も来る。竜人なら平民も応募可能だ。
カップル成立の確率が高く、出生率がビックリするほど急上昇中なので、申し込みが殺到している。
事前に申請して、レスター兄様が席を決めたりダンスのパートナーを決めたりする。
エルダゾルクにダンスの習慣は無かったのに、レスター兄様のパーティーに出席したいがために皆ダンスの家庭教師を雇い、猛特訓してからここに来る。
母様も父様と踊りたいとかで、父様に内緒で最近練習を始めた。
王族は他国の王族との外交のために履修させられるけれど、クロム兄様が踊れるかどうかは知らない。一度見れば覚えちゃいそうだし、出来そうだけど。
私がワガママを言えばきっと踊ってくださる。
妹として。
「兄上狙いのやつが多い!!!!!」
レスター兄様が嘆く。うん知ってる。ご令嬢達の目がハートだもの。熱視線で兄様達が溶けちゃうんじゃ……ってぐらい。
「僕のは、いらないよ?」
「分かってますよ!」
そう言ってレスター兄様は私の頭をポンポンとする。なんだろう?
クロム兄様はおもてになる。お綺麗なお顔をしていてすごくかっこいいし、卒業した後、フォルド伯父様の側近にまでなった。
成人して母様の爵位を継いだ兄様はレイリン公爵となり、人気は鰻登りだ。
これ以上人気になってほしくないのに、サーザンランドで開かれるトーナメントも毎回優勝なされる。父様は何故か出場されずに母様の側を離れないから、父様の次にお強いクロム兄様がいつも優勝になる。
目立ってほしく無いのに。
小さい頃の私のわがままをまだ覚えてくださっていて、毎回私に花輪をくれる。
嬉しいけれど、自分でねだった記憶がしっかりあるので微妙だ。
私が学校に上がった年に、クロム兄様は卒業してしまったので一緒の学園生活もなかった。
学園でレスター兄様と並んですごくおもてになっていたのも知ってる。私達女の子のお茶会の話題の中心はいつもお二人だもの。
「クルミは離れに戻ろうね。送っていくから」
「はい…………」
「秋!お前は手伝えよ!!」
「……………………はぁ……やりますよ」
◇◆◇
「パーティーが、気になる?」
クロム兄様がにっこり笑いながら聞く。
なぜかいつも私はパーティーの参加がない。
今日こそはお手伝いをと、クロム兄様と同じパーティー会場にいられるだけでもと、朝からぐるぐる考えていたけれどやっぱりだめだった。
いつもクロム兄様が離れに帰そうとなさるし、レスター兄様にも帰れと言われる。
秋は毎回手伝わされているのに。
私には、まだ早いと思われているのだろう。
それか、わたしが平凡だから。お手伝いすらままならない。
「はい……今日は母様が父様にダンスをおねだりするそうです。父様、きっとビックリなさると思って……」
「あぁ、そういう…………」
「私も、出てみたいです」
クロム兄様と踊りたい。妹としてでもいいから。
「こんどね?」
「兄様はいつもパーティーで踊られているのですか?」
「僕?僕は裏方だよ?」
「でも、申し込まれるでしょう?」
クロム兄様はにっこり笑う。何だろう、兄様はあまり口数が多い方じゃないから多くを語ってはくれない。
「僕が踊ったのは母上の練習相手としてだけだよ」
本当かな。あんなに熱視線を送られて、全部断るなんてできるんだろうか。
「母様、下手くそでしょう?普段は、私が教えているのですが……なかなか……」
母様の運動神経はエルダゾルク一低いと言っても過言ではない。
「あはは、うまくリードすれば母上も踊れるよ。主が相手なら大丈夫」
「父様は母様に甘すぎます」
父様は母様にぞっこんだ。普段はキリッとなさっているのに母様に関してはビックリするぐらい人がかわる。
あんなふうに私も好きな人に愛されてみたい。
今の私とクロム兄様は、私のわがままで成り立っているだけ。兄様は家族を本当に大切になさっているから断れない。私はそれを知っててお願いをする。遊んで、かまって、と。
クロム兄様もレスター兄様も、秋だって魔力は高い。魔力が高いというのはそれだけ優秀だって事だ。
私も同じ様に母様に育てられたのに、ラズウェルの言語全てを理解する兄弟達の中、私だけは何も身に付かなかった。
学校の成績もそう。兄様と秋は何もしなくてもいつも主席をとってくる。私は一人、真ん中。頑張って真ん中だから、本当に何にもしなかったらビリだと思う。
母様も、人間だから力は弱いし魔力も弱い。魔力の使い方も慣れないのか下手だ。けれど母様は聖女だ。誰もが憧れる力を持つ。父様があまり使わせないだけで。それに女神様の加護まである、特別な人。やっぱり私とは違う。
父様も、フォルド叔父様も、魔力が高く凄く優秀。王族の中で、私だけが平凡に生まれてしまった。
お話の中みたいに、母様みたいに、後付けで凄い力が手に入ればいいのに。
そうしたら、クロム兄様の横に立てるかもしれないのに。
「兄様、少しだけ私といてもらえますか?」
がらんとした離れは母様がいないと火が消えたように感じる。母様はお日様みたいな人だ。そこにいるだけで周りが明るくなる。
「ん、いいよ」
頭を撫でられて、兄様の顔を覗き込む。
銀灰のフワフワした髪と、濃いダークグレーの瞳の中に透き通る様なエメラルドグリーンの虹彩。
私よりよっぽど王族みたい。
凛としていて、カッコいい。
縁側で足を投げ出して2人で座る。
全令嬢が嫉妬するだろうなと思う。
ガチャンと王家の紋章が入った二振りの刀を脇に置く仕草も素敵。
ケイとエレノアがかけてきて、私にスリスリを送ってくれる。
「わわっ、くすぐったいょ」
何かを話すわけではないけれど、そんな私をニコニコと兄様は見る。
完全に、妹としてしか見てもらえていない。
今日は成人から50歳までの若者が対象とされるパーティーで、若いからか皆ちょっとそわそわしている。
母様の繁栄の加護はレスター兄様に遺伝しているけれど、対外的にはレスター兄様に移ったと公表された。
母様がこれ以上狙われるのを避けるためみたい。兄様達とフォルド伯父様と父様で話し合って決めたらしい。
そのレスター兄様が主催するパーティーは毎回多くの人達で賑わう。
竜人の貴族が多いけれど、他種族の商家や力のある家の方達も来る。竜人なら平民も応募可能だ。
カップル成立の確率が高く、出生率がビックリするほど急上昇中なので、申し込みが殺到している。
事前に申請して、レスター兄様が席を決めたりダンスのパートナーを決めたりする。
エルダゾルクにダンスの習慣は無かったのに、レスター兄様のパーティーに出席したいがために皆ダンスの家庭教師を雇い、猛特訓してからここに来る。
母様も父様と踊りたいとかで、父様に内緒で最近練習を始めた。
王族は他国の王族との外交のために履修させられるけれど、クロム兄様が踊れるかどうかは知らない。一度見れば覚えちゃいそうだし、出来そうだけど。
私がワガママを言えばきっと踊ってくださる。
妹として。
「兄上狙いのやつが多い!!!!!」
レスター兄様が嘆く。うん知ってる。ご令嬢達の目がハートだもの。熱視線で兄様達が溶けちゃうんじゃ……ってぐらい。
「僕のは、いらないよ?」
「分かってますよ!」
そう言ってレスター兄様は私の頭をポンポンとする。なんだろう?
クロム兄様はおもてになる。お綺麗なお顔をしていてすごくかっこいいし、卒業した後、フォルド伯父様の側近にまでなった。
成人して母様の爵位を継いだ兄様はレイリン公爵となり、人気は鰻登りだ。
これ以上人気になってほしくないのに、サーザンランドで開かれるトーナメントも毎回優勝なされる。父様は何故か出場されずに母様の側を離れないから、父様の次にお強いクロム兄様がいつも優勝になる。
目立ってほしく無いのに。
小さい頃の私のわがままをまだ覚えてくださっていて、毎回私に花輪をくれる。
嬉しいけれど、自分でねだった記憶がしっかりあるので微妙だ。
私が学校に上がった年に、クロム兄様は卒業してしまったので一緒の学園生活もなかった。
学園でレスター兄様と並んですごくおもてになっていたのも知ってる。私達女の子のお茶会の話題の中心はいつもお二人だもの。
「クルミは離れに戻ろうね。送っていくから」
「はい…………」
「秋!お前は手伝えよ!!」
「……………………はぁ……やりますよ」
◇◆◇
「パーティーが、気になる?」
クロム兄様がにっこり笑いながら聞く。
なぜかいつも私はパーティーの参加がない。
今日こそはお手伝いをと、クロム兄様と同じパーティー会場にいられるだけでもと、朝からぐるぐる考えていたけれどやっぱりだめだった。
いつもクロム兄様が離れに帰そうとなさるし、レスター兄様にも帰れと言われる。
秋は毎回手伝わされているのに。
私には、まだ早いと思われているのだろう。
それか、わたしが平凡だから。お手伝いすらままならない。
「はい……今日は母様が父様にダンスをおねだりするそうです。父様、きっとビックリなさると思って……」
「あぁ、そういう…………」
「私も、出てみたいです」
クロム兄様と踊りたい。妹としてでもいいから。
「こんどね?」
「兄様はいつもパーティーで踊られているのですか?」
「僕?僕は裏方だよ?」
「でも、申し込まれるでしょう?」
クロム兄様はにっこり笑う。何だろう、兄様はあまり口数が多い方じゃないから多くを語ってはくれない。
「僕が踊ったのは母上の練習相手としてだけだよ」
本当かな。あんなに熱視線を送られて、全部断るなんてできるんだろうか。
「母様、下手くそでしょう?普段は、私が教えているのですが……なかなか……」
母様の運動神経はエルダゾルク一低いと言っても過言ではない。
「あはは、うまくリードすれば母上も踊れるよ。主が相手なら大丈夫」
「父様は母様に甘すぎます」
父様は母様にぞっこんだ。普段はキリッとなさっているのに母様に関してはビックリするぐらい人がかわる。
あんなふうに私も好きな人に愛されてみたい。
今の私とクロム兄様は、私のわがままで成り立っているだけ。兄様は家族を本当に大切になさっているから断れない。私はそれを知っててお願いをする。遊んで、かまって、と。
クロム兄様もレスター兄様も、秋だって魔力は高い。魔力が高いというのはそれだけ優秀だって事だ。
私も同じ様に母様に育てられたのに、ラズウェルの言語全てを理解する兄弟達の中、私だけは何も身に付かなかった。
学校の成績もそう。兄様と秋は何もしなくてもいつも主席をとってくる。私は一人、真ん中。頑張って真ん中だから、本当に何にもしなかったらビリだと思う。
母様も、人間だから力は弱いし魔力も弱い。魔力の使い方も慣れないのか下手だ。けれど母様は聖女だ。誰もが憧れる力を持つ。父様があまり使わせないだけで。それに女神様の加護まである、特別な人。やっぱり私とは違う。
父様も、フォルド叔父様も、魔力が高く凄く優秀。王族の中で、私だけが平凡に生まれてしまった。
お話の中みたいに、母様みたいに、後付けで凄い力が手に入ればいいのに。
そうしたら、クロム兄様の横に立てるかもしれないのに。
「兄様、少しだけ私といてもらえますか?」
がらんとした離れは母様がいないと火が消えたように感じる。母様はお日様みたいな人だ。そこにいるだけで周りが明るくなる。
「ん、いいよ」
頭を撫でられて、兄様の顔を覗き込む。
銀灰のフワフワした髪と、濃いダークグレーの瞳の中に透き通る様なエメラルドグリーンの虹彩。
私よりよっぽど王族みたい。
凛としていて、カッコいい。
縁側で足を投げ出して2人で座る。
全令嬢が嫉妬するだろうなと思う。
ガチャンと王家の紋章が入った二振りの刀を脇に置く仕草も素敵。
ケイとエレノアがかけてきて、私にスリスリを送ってくれる。
「わわっ、くすぐったいょ」
何かを話すわけではないけれど、そんな私をニコニコと兄様は見る。
完全に、妹としてしか見てもらえていない。
あなたにおすすめの小説
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
【本編完結】初恋のその先で、私は母になる
妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
第19回恋愛小説大賞にて、奨励賞を受賞いたしました。読者の皆様のおかげです!本当ありがとうございます。
王宮で12年働き、気づけば28歳。
恋も結婚も遠いものだと思っていたオリビアの人生は、憧れの年下公爵と一夜を共にしたことで大きく動き出す。
優しく守ろうとする彼。
けれどオリビアは、誰かに選ばれるだけの人生を終わらせたいと思っていた。
揺れる想いの中で、彼女が選んだのは――
自分の足で立ち、自分の未来を選ぶこと。
これは、一人の女性が恋を通して自分を取り戻し、母として、そして一人の人間として強くなっていく物語。
※表紙画像はAI生成イラストをつかっています。
間違えられた番様は、消えました。
夕立悠理
恋愛
※小説家になろう様でも投稿を始めました!お好きなサイトでお読みください※
竜王の治める国ソフームには、運命の番という存在がある。
運命の番――前世で深く愛しあい、来世も恋人になろうと誓い合った相手のことをさす。特に竜王にとっての「運命の番」は特別で、国に繁栄を与える存在でもある。
「ロイゼ、君は私の運命の番じゃない。だから、選べない」
ずっと慕っていた竜王にそう告げられた、ロイゼ・イーデン。しかし、ロイゼは、知っていた。
ロイゼこそが、竜王の『運命の番』だと。
「エルマ、私の愛しい番」
けれどそれを知らない竜王は、今日もロイゼの親友に愛を囁く。
いつの間にか、ロイゼの呼び名は、ロイゼから番の親友、そして最後は嘘つきに変わっていた。
名前を失くしたロイゼは、消えることにした。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!!
打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。
愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。