【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香

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番外編 クルミ

レスター主催パーティー2

 月に一度王家主催のパーティーが開かれる。

 今日は成人から50歳までの若者が対象とされるパーティーで、若いからか皆ちょっとそわそわしている。

 母様かあさまの繁栄の加護はレスター兄様に遺伝しているけれど、対外的にはレスター兄様に移ったと公表された。
 母様がこれ以上狙われるのを避けるためみたい。兄様達とフォルド伯父様と父様で話し合って決めたらしい。

 そのレスター兄様が主催するパーティーは毎回多くの人達で賑わう。

 竜人の貴族が多いけれど、他種族の商家や力のある家の方達も来る。竜人なら平民も応募可能だ。

 カップル成立の確率が高く、出生率がビックリするほど急上昇中なので、申し込みが殺到している。

 事前に申請して、レスター兄様が席を決めたりダンスのパートナーを決めたりする。
 エルダゾルクにダンスの習慣は無かったのに、レスター兄様のパーティーに出席したいがために皆ダンスの家庭教師を雇い、猛特訓してからここに来る。

 母様も父様と踊りたいとかで、父様に内緒で最近練習を始めた。

 王族は他国の王族との外交のために履修させられるけれど、クロム兄様が踊れるかどうかは知らない。一度見れば覚えちゃいそうだし、出来そうだけど。
 私がワガママを言えばきっと踊ってくださる。
 妹として。


「兄上狙いのやつが多い!!!!!」 

 レスター兄様が嘆く。うん知ってる。ご令嬢達の目がハートだもの。熱視線で兄様達が溶けちゃうんじゃ……ってぐらい。

「僕のは、いらないよ?」

「分かってますよ!」

 そう言ってレスター兄様は私の頭をポンポンとする。なんだろう?

 クロム兄様はおもてになる。お綺麗なお顔をしていてすごくかっこいいし、卒業した後、フォルド伯父様の側近にまでなった。
 成人して母様の爵位を継いだ兄様はレイリン公爵となり、人気は鰻登りだ。
 これ以上人気になってほしくないのに、サーザンランドで開かれるトーナメントも毎回優勝なされる。父様は何故か出場されずに母様の側を離れないから、父様の次にお強いクロム兄様がいつも優勝になる。
 目立ってほしく無いのに。

 小さい頃の私のわがままをまだ覚えてくださっていて、毎回私に花輪をくれる。
 嬉しいけれど、自分でねだった記憶がしっかりあるので微妙だ。

 私が学校に上がった年に、クロム兄様は卒業してしまったので一緒の学園生活もなかった。
 学園でレスター兄様と並んですごくおもてになっていたのも知ってる。私達女の子のお茶会の話題の中心はいつもお二人だもの。

「クルミは離れに戻ろうね。送っていくから」

「はい…………」

「秋!お前は手伝えよ!!」

「……………………はぁ……やりますよ」



 ◇◆◇


「パーティーが、気になる?」

 クロム兄様がにっこり笑いながら聞く。
なぜかいつも私はパーティーの参加がない。
今日こそはお手伝いをと、クロム兄様と同じパーティー会場にいられるだけでもと、朝からぐるぐる考えていたけれどやっぱりだめだった。

いつもクロム兄様が離れに帰そうとなさるし、レスター兄様にも帰れと言われる。
 
 秋は毎回手伝わされているのに。
私には、まだ早いと思われているのだろう。
それか、わたしが平凡だから。お手伝いすらままならない。

「はい……今日は母様が父様にダンスをおねだりするそうです。父様、きっとビックリなさると思って……」

「あぁ、そういう…………」

「私も、出てみたいです」

 クロム兄様と踊りたい。妹としてでもいいから。

「こんどね?」

「兄様はいつもパーティーで踊られているのですか?」

「僕?僕は裏方だよ?」

「でも、申し込まれるでしょう?」  

 クロム兄様はにっこり笑う。何だろう、兄様はあまり口数が多い方じゃないから多くを語ってはくれない。

「僕が踊ったのは母上の練習相手としてだけだよ」

 本当かな。あんなに熱視線を送られて、全部断るなんてできるんだろうか。

「母様、下手くそでしょう?普段は、私が教えているのですが……なかなか……」

 母様の運動神経はエルダゾルク一低いと言っても過言ではない。

「あはは、うまくリードすれば母上も踊れるよ。あるじが相手なら大丈夫」

「父様は母様に甘すぎます」

 父様は母様にぞっこんだ。普段はキリッとなさっているのに母様に関してはビックリするぐらい人がかわる。
 あんなふうに私も好きな人に愛されてみたい。

 今の私とクロム兄様は、私のわがままで成り立っているだけ。兄様は家族を本当に大切になさっているから断れない。私はそれを知っててお願いをする。遊んで、かまって、と。

 クロム兄様もレスター兄様も、秋だって魔力は高い。魔力が高いというのはそれだけ優秀だって事だ。
 私も同じ様に母様に育てられたのに、ラズウェルの言語全てを理解する兄弟達の中、私だけは何も身に付かなかった。
 学校の成績もそう。兄様と秋は何もしなくてもいつも主席をとってくる。私は一人、真ん中。頑張って真ん中だから、本当に何にもしなかったらビリだと思う。

 母様も、人間だから力は弱いし魔力も弱い。魔力の使い方も慣れないのか下手だ。けれど母様は聖女だ。誰もが憧れる力を持つ。父様があまり使わせないだけで。それに女神様の加護まである、特別な人。やっぱり私とは違う。

 父様も、フォルド叔父様も、魔力が高く凄く優秀。王族の中で、私だけが平凡に生まれてしまった。
 お話の中みたいに、母様みたいに、後付けで凄い力が手に入ればいいのに。

 そうしたら、クロム兄様の横に立てるかもしれないのに。

「兄様、少しだけ私といてもらえますか?」

 がらんとした離れは母様がいないと火が消えたように感じる。母様はお日様みたいな人だ。そこにいるだけで周りが明るくなる。

「ん、いいよ」

 頭を撫でられて、兄様の顔を覗き込む。
銀灰のフワフワした髪と、濃いダークグレーの瞳の中に透き通る様なエメラルドグリーンの虹彩。

 私よりよっぽど王族みたい。
凛としていて、カッコいい。

 縁側で足を投げ出して2人で座る。
全令嬢が嫉妬するだろうなと思う。

 ガチャンと王家の紋章が入った二振りの刀を脇に置く仕草も素敵。
ケイとエレノアがかけてきて、私にスリスリを送ってくれる。

「わわっ、くすぐったいょ」

 何かを話すわけではないけれど、そんな私をニコニコと兄様は見る。

 完全に、妹としてしか見てもらえていない。

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