155 / 173
番外編 クルミ
過度な守りと本質
「くるみ?今日鷹の王子様とお友達になったんでしょ?その割には元気無いね?」
ああ、母様にはそうやって伝わってるのか。
母様の私達への過保護は凄まじいものがある。
種族によっても違うけど、基本的に獣人は生まれたらほったらかしだ。命の危険以外は。それだって崖からわざと放り投げる種族もいるぐらいなのだ。生きる力を身につけさせるのが獣人にとっての愛情だから。
母様はずっと、本当にずっと私達を卵扱いする。呆れるくらい。
兄様達はそんな母様が好きで受け入れてる。
私も。けど最近は甘やかされてダメになってしまうのが怖い。
母様は出来ないことを絶対に叱らない。成績がどんなでも、外国語が身に付かなくても、魔力が低くても。そんな事全然気にして無いと言った方が正しい。
その代わり挨拶とか、思いやりとか、そういう事に厳しい。人間というのはみんなこうなんだろうか。
母様が私の母様じゃなかったら、出来の悪い私はとっくに潰れていたと思う。
「うん、いい人だったよ。遠い国の人だけど、言葉は同じだったから良かった」
「言葉は違ったって何とかなるんじゃない?テトなんて話せないけどなんでも分かるし」
そうだろうか。そんな事ないと思う。
国際パーティーで他言語の方に話しかけられても、何を言ってるのかさっぱりだもん。
「母様は、ダンスどうだった?父様、ビックリなさった?」
「サプライズは成功したんだけど、一曲終わった後どこかに消えたの!信じられない!!」
父様……ごめん……………………。
「ムカついたから、陛下と踊ってやった!」
父様…………ほんとにごめん…………。
◇◆◇
医務室までの廊下を秋と一緒に歩く。
あの後クロム兄様の全力の魔力を浴びて気を失った王子は昨日やっと目覚めたらしい。三日も気を失う程の魔力って凄い……
「いいにおい、母上のアップルパイ?」
「うん。お見舞い用に一緒に作ってもらったの。私が作ったのは不恰好だから後で秋にあげるね」
「ん、形はなんでもいい。けど、クルミが作ったやつ、後でクロム兄様にももってきな」
「私のじゃなくて、母様のにする」
「…………………………」
医務室のドアを軽くノックしてから、こちらから開けると、奥のベッドに上半身を起こした彼が見えた。
私と秋をみて立ちあがろうとするのを慌てて駆け寄り止める。
「姫、命を助けて頂き感謝申し上げる。このような無礼な姿で申し訳ない」
そう言ってベッドの上で頭を下げる。
「いぇ……私は何も……」
「クルミが助けなければ、羽をもいで国外追放か生涯強制労働かどっちかだった。感謝しろ」
秋の低い声。秋も、こんな声がでるんだ。
「はい、承知しております。助けて頂いた御恩、決して忘れません」
そんな事言って欲しい訳じゃないのに。
「秋、やめて。少しだけ2人にして」
「それは無理。僕が殺される」
「魔球壁を貼っていい。気配も伺ってていい。お願い」
「………………5分だけなら。あと兄上にはクルミの作ったやつをもってけ」
「ん、それでいい、ありがとう」
何故不恰好な方を持たせたがるのかよく分からないけど仕方ない。
ドアから出ていく秋の背中を見送って、パイの籠を渡す。
「凄く……いい匂いだな……」
秋がいなくなって口調が崩れた彼が笑う。
「母が料理上手なんです、兄上の魔力でライハルト王子は倒れたと聞きました…………お加減は……」
「ライでいい。王族ではあるけれど弱小国の、だ。姫の方がよっぽど地位が高い。それに俺は兄弟の中で一番魔力が低い、王太子の地位すら危うい」
あぁ、この人に感じていた気持ちの正体はこれか。彼は決して強い訳じゃない。それは私でも分かる。それでも格上の竜人国に忍び込んだ。国民の為に。私にはそんな事絶対できない。
「ライ……さまは、おいくつですか?」
「様も無くていいが……17だよ、立太子して2年」
3つ歳を重ねるだけで、私もこんな風に誰かの為に動けるようになるんだろうか。
「リハビリのために一月はここに留まると聞きました、お国は、大丈夫ですか?」
「あぁ…………弟達が頑張ってくれているからそのくらいは…………でも、なるべく早く帰れるようにする」
今回羽へのダメージが一番すごかったらしく、飛ぶのに支障があるそうだ。
医務官に詳細は話せないため、主治医が一月の入院とリハビリを決めてしまったらしい。
「また、会いに来ても?」
「はは、姫も物好きだな、リハビリも頑張れそうだ」
笑うと優しい顔になるんだな、とぼんやり思っていると、秋が入ってくる音がした。
私と同じ悩みを持つ人。それなのに強く、折れない。どうしたら、こんな風になれる?
答えが出ないまま、医務室を後にした。
------------------------------------
▶︎▶︎【あとがき】
フォルド『紬ちゃ~~ん!!踊れる様になったの!?凄く可愛い~~~!僕とも踊ろう!!』
紬『いいですよ!さ、いきましょ!』
フォルド『ふぁ!!???!?』
あなたにおすすめの小説
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!!
打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
【本編完結】初恋のその先で、私は母になる
妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
第19回恋愛小説大賞にて、奨励賞を受賞いたしました。読者の皆様のおかげです!本当ありがとうございます。
王宮で12年働き、気づけば28歳。
恋も結婚も遠いものだと思っていたオリビアの人生は、憧れの年下公爵と一夜を共にしたことで大きく動き出す。
優しく守ろうとする彼。
けれどオリビアは、誰かに選ばれるだけの人生を終わらせたいと思っていた。
揺れる想いの中で、彼女が選んだのは――
自分の足で立ち、自分の未来を選ぶこと。
これは、一人の女性が恋を通して自分を取り戻し、母として、そして一人の人間として強くなっていく物語。
※表紙画像はAI生成イラストをつかっています。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――