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番 編
子竜の運ぶ手紙
しおりを挟む「うっっっまっっっっ!!!」
紬の作った料理が届くのが既に楽しみになっている。執務室の面々が恨めしそうに俺を見る。
「つむつむ俺にも作って!!!食べてみたい!!」
ルースの言葉を無視してどんどん籠から出して食べていると、小さなカードが底にあるのに気がついた。
~ 待ってる 早くよくなって ~
笛文を使えないもどかしさが、たった一枚のカードで消えていく。
メッセージのやり取りなんて今までのどんな女ともやった事はない。
番からもらう手紙が、こんなにも俺を満たすなんて思いもしなかった。
紬のカードを引き出しにしまい、新しいカードを出すとクロムが袖を引っ張ってきた。
「主、それ、だめ」
「あ゛ぁ?なんでだよ」
「それ、お嬢、泣く。だめ」
「っ——————————————」
絶句して動けないでいると、ユアンが俺からクロムを引き剥がして抱き上げた。
「クロム、お前も大人になればわかります。つむぎ嬢と殿下には、必要な事なのですよ」
「でも、なみだ、いっぱい」
「あーっとクロム、お兄さんが遊んでやるよ。久しぶりに手合わせするか!」
ルースがユアンからクロムを抱きとり肩車をして気を逸らす。
「僕、また、お嬢のとこ、いく」
「クロム坊までなついたなぁ~」
クロードが苦笑してルースの肩にいるクロムの頭を撫でた。
「ごはん、おいしい」
「クロムまで食べてんのかよ!!俺も行きたい!」
「ルース兄、だめ、主、おこる」
「ちくしょう!!これは由々しき事態だ!早く何とかしないと俺がツムツムの料理を食えない!!」
ルースの肩車から器用に降りたクロムがまた俺の袖を引く。
「主、これ、無理?」
小さな手が指差した先を見ると、甘い匂いがする紙袋があった。
「俺が無理なら貰えって言われたな?」
紬のいいそうな事だ。
「ん、クキとケキ、ぼく、好き」
ホワホワした甘い匂いのする四角い何かを一口食べてみる。
「何これ超うまい」
「………………………………むぅ」
「むぅじゃねーよ!!やらねーよ!!」
「「「 大人気ない 」」」
◇◆◇
無表情だけどしょんぼりと肩を落として帰ってきたクロム君を見て、一瞬で事態を察して笑ってしまう。大人気ないなぁ。
「お嬢、クキとケキ、貰えなかった……」
「ふふふ、大丈夫、クロム君の分もあるよ。昨日のもあるし、今日はプリンもあるよ?デザートに、一緒に食べようね?」
「プリ、何?」
「お楽しみ。手、洗っておいで」
機嫌のなおったらしい(見た目は分からないけれど)クロム君が、駆け足で木箱を持って来て踏み台にして手を洗ってる。
何をしてても可愛い。
クロム君も大人顔負けに食べる事が分かったので、大きなグラタン皿でドリアを出して、フライとフリッターも大盛りにした。
バナナとミルクでバナナミルクを作ってガラスで出来たストローをさしてやる。
ミキサーやジューサーがあれば簡単だけど、無いので何度も裏漉しして、かき混ぜただけ。
クロム君に縁側まで小さなテーブルを運んでもらって、並べていく。
「手を合わせてね」
「手?」
「そう、パッチンって」
「いただきますって言えたら嬉しい」
「いたきます」
「ん゛ん゛んっ!」
何それ可愛い可愛い可愛い!!
「いい子だね。命に感謝して、頂きますって意味だよ。ここにいるときだけでもいいから、一緒にしてくれたら嬉しいな。私の故郷の習慣なの」
「ん、しゅる」
ドリアがまだ熱いので、フライとフリッターを前に出すと夢中でサクサクしている。
ドリアを小さなスプーンですくって、ふうふうして冷ましてあげてから口の前に持っていくと素直にあーんと口を開けるので鳥の雛みたいで可愛い。
あまりにも詰め込むので喉が詰まるのが心配で、バナナジュースを一口飲ませると目が輝いて一気に飲み干していた。
ドリアを冷まして小さな口に運びながら、籠の中を見る。昨日と同じ、小さなカード。
———— 愛してる
それだけ。それだけなのに、嬉しくて涙が溢れる。カードを抱きしめて嗚咽をこらえる。
「お嬢、泣かないで」
「ん、大丈夫、大丈夫だよ」
ドリアを口に運んであげようとクロム君を見ると、前髪の間から眉が下がって悲しそうな顔をしているのがわかった。初めて見た表情が、悲しい表情で切ない。私のせいだ。
「ごめん、ごめん、もう大丈夫!さ、プリンも出してあげるね。もうドリアもちょうど良く冷めたから大丈夫だよ!」
そう言ってドリアを目の前においてやり、プリンを取りに行くふりをして台所に隠れてまた少し泣いた。
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