グリフォンに転生した...らしい。

キンドル・ファイバー

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生まれから巣立ち

父に連れていかれるらしい

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 俺が孵化して数日経った。


 ここは大きな洞穴に作られた巣の上で、産まれた仲間や俺にはまだ産毛程度の毛しか生えていない。
 産まれたばかりの俺たちに出来ることは、生まれた仲間同士で体を寄せ暖め合い(多分秋頃で結構寒いのだ)、親が時折持ってきてくれるドロドロにした緑色っぽい何かを、口移しで食べさせて貰う日々である。

  美味しくはないが本能が『食え』と言ってるし、不思議と不快には感じない。これが母の味(父からも貰っているが)というやつなのかもしれない。


 時々、他の雛鳥仲間とじゃれあったり喧嘩もしたりするが、程々の所で親が止めに来るので怪我もなく過ごすことができている。

 因みに俺は今のところ喧嘩になっても無敗である。
 数日先に生まれた兄弟よりも何故か力が強い。何故だろう。


 この世界では、ステータスと言う自分の力を数値化したものが見られるらしく、〈鑑定〉と言うスキルを使ってみたところ、なにかと疑問に答えてくれるので助かる。
 お陰で暇潰しには困らない。

 足元の巣材になってる枯れ草を鑑定してみると以下のように説明文が出た。


〈枯れた長草〉
枯れた長草、毒はなく無害で柔軟性がある。弓の弦等に使用されるほど千切れにくい。


 生まれて数日の俺自身も鑑定してみた所、結果は以下の様な数値であった。


Lv3
名前:なし
チック・グリフォン(黒羽種)
体力:15/15
魔力:5
攻撃:15
防御:10
魔攻:5
魔防:5
速さ:15
 SPスキル
鑑定 言語理解 本能




 この鑑定結果は大体の数字を表しているらしく、実際はもっと細かいらしい。時々体調や気分で僅かに上下する。

 因みに自分を鑑定した時に少しだけ不快感があり、他の雛鳥や親を鑑定してみたときは彼らに文句を言われてしまった。ごめんなさい。

 力の差があるからか、親のステータスは見られなかった。
 本能には『やめておけ』と言われてたんだけどつい...怒られ損...ぴぃ...


 まだまだ子供(と言うか雛鳥?)の様で俺は弱い。
 因みに巣の同じ雛鳥達も見てみたところ殆ど同じステータスであった。(大体俺の方が少し能力は上だった)

 何故か〈鑑定〉や〈言語理解〉等のスキルは俺にしか無かったが。 
 
 ただ少し気になったのは、この巣には俺を含め5匹の雛がいるのだが、俺の種族名の隣にある〈黒羽くろばね種〉と言うのは他におらず、3匹が〈茶羽ちゃばね種〉で、残りの1匹が〈白羽しろばね種〉であった。
 因みに両親は〈茶羽種〉だ。


 この時の俺は、まぁ、どうせ成長した時の羽の色が違うだけだろうと思っていた。


 親鳥(親グリフォン?)に餌を配給して貰うだけの日々が1ヶ月程続き、羽も生え揃い始めた。
 勿論、羽の色は種族名の隣にある名称通りの色である。

 どうやら、茶色の内の2匹が雄で、残りの茶色の1匹と、1匹だけの白いのが雌らしい。
 〈鑑定〉で、性別が見れないのかなと思い試したらできた。

 まぁ、その頃には仲間とも簡単な会話程度なら出来ており、それぞれの話し方で性別の予想はついていたが。

 因みに俺は雄だった。多分前世も雄だった気がする。良かった。


 どうでもいいことだが、俺は雄の茶色一匹と、白い子になんか懐かれてる。何故だろう?




 産まれてから3ヶ月くらい(体感)経ち、体もしっかりしてきたからか狩りの練習として、親が右腕を千切って弱らせたゴブリンを持ってきた。外は雪が降っているのに、歩き回ってるんだな...。

 人型で緑色の肌、人間の子供くらいの大きさで角の生えた魔物だ。名前は鑑定で知った。腕が千切られててグロい...


Lv6
名前:なし
ゴブリン(負傷)
体力:10/80
魔力:10
攻撃:70
防御:50
魔攻:10
魔防:20
速さ:60
 スキル
なし


 今までの配給って、大体がこれを噛んで柔らかくしたものだったらしい。うへぇ...

 生まれて数ヵ月経った俺のステータスと比較してみる。


Lv15
名前:なし
チック・グリフォン(黒羽種)
体力:100/100
魔力:40
攻撃:60
防御:60
魔攻:30
魔防:50
速さ:80
 SPスキル
鑑定 言語理解 本能


 今まで戦ったことは無いが、エサを食べ成長するにしたがってレベルは少しずつ上がっている。


 数値だけ見れば、このゴブリンくらいになら勝てそうだが...何せ実践経験がない。本能は『そう難しいことではない』と言ってくるけど殺し合いは少し怖い。

 俺が少し躊躇しているとゴブリンは残った左腕を掲げ、白い雛鳥に襲いかかろうとしている。

 弱ってるからかゴブリンの足取りはふらついているが、死に物狂いな表情で迫力があるからか、狙われた雛鳥は完全に混乱し、迎撃することすら頭に無さそうだ。

 元々あの白い雛は兄弟とのじゃれあいや喧嘩でもされるがままで、戦いを好まない気質だった。


 他の雛もビビってしまっている。
 流石にこれは不味いと思い、俺はゴブリンに飛びかかり押し倒す。

 弱っているとは言え、今の俺と大差ない大きさのゴブリンは耳障りな声で叫びながら片腕でもがき、激しく暴れる。

 その拳を受けながらも、俺はゴブリンの体を押さえつけ喉元に嘴をほじくるように何度も突き刺す。

 段々と力が無くなり、抵抗が弱まったゴブリンの頭と肩を鳥の前足で押さえ、引っ張りながら首の骨の関節を嘴で探り、こじ開け、引きちぎり首を落とし、止めを刺す。

 俺のグリフォンとしての初陣はこんなところだった。


 その後も親は何度か弱らせたゴブリンや狼型の魔物のウルフを持ってきて、子供全員に狩りを教えた。
 一度俺が止めを刺したのを見たからか、雛達に最初程の動揺は無く、一番心配だった白い雛も頑張ってなんとか止めを刺していた。




 そんな日々を約3ヶ月ほど過ごしていたある日、母鳥(母グリフォン?)が巣を離れる際に、雛鳥を一匹連れて出掛けた。〈白羽種〉の子だ。

 俺は父鳥(父グリフォン?)に違う方向に連れていかれた。
 因みに、4本ある足の内、前足の鳥足2本で優しく抱えるように、鷲掴みにされて運ばれてる。

 初めての空の旅だが、正直なところまだ俺は殆ど飛べないので(羽ばたいて落下速度を抑えるくらい)、落とされないかと恐怖を感じていた。

 この時、初めて外から巣を見たが、断崖絶壁の壁に空いた穴が巣だったらしい。下は森だったが、今は冬なのか雪が浅く積もっている。


 父親に連れて行かれた先は、どうやら他のグリフォンの巣の様だが...かなり巨大だ。

 俺達の住んでいた巣の5倍程の大きさはあると思われる。因みにここも崖の壁に空いた洞穴である。

 父親には巣立ちに備えて、ここで暮らしていくよう告げられた。
 いきなりだったから兄弟に別れを言えなかったのは残念だが、巣立ちが近い年齢なら何れは別れることになるのだし、まぁ仕方ない。

 俺は父親へ兄弟に宜しく伝えてくれるよう一言伝言を頼み、俺と同じくらいの成長しきってないグリフォン達が多く見える巨大な巣へと、入っていくのであった。






 どうやら俺は巣立ちの訓練施設に入れられた、らしい?

______________________
スキル解説コーナー

○鑑定
 いろんな物の詳細が見られる。
 僅な魔力を対象に送り込み、情報を探らせ、それを再び自らの体に戻すことで情報を得る偵察行為のようなものなので、やられた相手に僅かな不快感が残り、「何かされたな」と思う程度には相手にバレる。
 鑑定が上手い人ならバレにくい。他には相手が魔力に鈍感であったり、寝てるとバレにくい。逆に言うと正面から使用することで挑発にも使える。
 魔力に長けたものなら何処にいるどんな人に鑑定されたかも気がつけるし、防いだり送られた魔力を吸収することも出来る。
(数値にして1にも満たない量だが)

 生き物ならレベル、名前、種族名、ステータス、スキルを知ることが出来るが、スリーサイズは調べられない。
 物に使うと、どんなもので、どういった効果があるか、どう使うと良いか、等を知ることが出来る。

 力の差が隔絶していると鑑定は失敗しやすい。

○言語理解
 ありとあらゆる言葉が理解でき、読み書き出来る。

○本能
 野生の感、ある種の危機察知能力。本能で生きている生き物ほど活用しやすく、獲物との大まかな力量差だけでなく、キノコや木の実が食べれるものか、自分の種族の習性も教えてくれる。
(例えば飛び方、巣の作り方、繁殖期のアプローチの仕方...蛇や熊系だと冬眠の仕方など)

○SPスキル
 レベルの存在しない特殊なスキル。便利なものが多い。
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