グリフォンに転生した...らしい。

キンドル・ファイバー

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学園生活と魔族と冒険者

騎馬の授業後、学校で一悶着らしい

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 魔族の村から無事帰還した俺、グリフォン。次の日の学校は、なんとか寝坊せずに召喚されることができた。

 今、キィナと俺は学校の外にある訓練場に、他の生徒(約20人くらい)と並び、前に立っている、あの冴えない顔の先生の話を聞いている。


 どうやら今回の授業は、魔物や馬に騎乗した状態での移動や戦闘スタイルを磨こう、的な授業内容らしい。

 周りを見ると、馬に乗れない人は乗馬訓練から始めるらしい。
 おや?あの目付き悪い弓女もキィナと同じクラスだったのか、試合の時に糞男とチームだった奴だな。ついでに第2王子もこのクラスにいた。


 キィナは俺に鞍と手綱を着ける。普通のグリフォン用の物より、少し大きめの鞍があって、それが俺にちょうど良いサイズだった...それ、中型竜用って書いてない?

 鞍と手綱を着け、乗りやすさに磨きの掛かった俺はキィナを乗せ、肩慣らしの為に訓練場を軽く走る。

 全校試合の時にもキィナを乗せたが、あの時は何も着けずに乗せてたからか、気を抜くと落ちそうだった。
 鞍を着けた今なら、上空でも回転とかしなければ大丈夫そうだな。

 ...キィナを乗せたまま、糞猿の投糞を回避するのは難しそうだが。


 少し慣らしたら、次は少し激しい動きをするらしい。
 生徒や先生が大きなハードルみたいな物を何個か置き始めた。どうやら乗り手と息を合わせて、あれを飛び越えればいいらしい。

 ...息を合わせるのが目的なので、俺の場合はキィナの指示を受けたタイミングで飛ぶとのこと。
 最初から飛ぶのはダメらしい。まぁ、そんな気はしてた。

 他の人がしているのを見ると、半分くらいは馬に乗っており、ハードルを飛び越せるタイミングで、馬に鞭や足等を使い指示を出し飛び越えている。

 俺が気になったのは、背に乗れるほどの大きさではないが、テイマーの片腕を足で掴んで飛べる、大型の鳥だ。
 テイマーが肩に鳥を乗せて走り、タイミングを見計らって鳥に指示を出す。
 指示を受けた鳥は前方に飛び立ち、テイマーがその鳥の足に掴まり、飛び上がる。
 その一連の動作は息が合っており、見てて気持ちがよかった。

 因みにあの弓女は普通に馬に乗れてた。後、こいつはそんなに素行は悪いやつじゃないらしく、クラスで普通に友達もいるらしい。
 なんであんなチームに入ってたのか本気で謎である。目付きの悪さで判断してごめん。

 第2王子?あいつは白竜に乗って余裕でクリアしてたわ。
 あの王子はサモナーで、極めれば魔物を手足みたいに使えるみたいだしな。




 ついに俺達の番が来た。タイミングは〈モンスターテレパス〉でキィナが指示してくれることになった。
 俺が自分のタイミングで飛んでもいいんだが、こういうのはテイマーとの連携が大事らしいからな。

 ハードルに向かって走り出す。速度は大体他の馬と同じくらいにしておこう。

 段々とハードルが近づいてくる...来た!合図があったのでジャンプで飛び越える。
 羽を使わずとも、問題なく飛び越えることができた。
 タイミングはバッチリだ、キィナは流石だな。




 この後も問題なく他の人も飛び越えてており、授業が終わった。
 俺はすぐ帰れるのかと思っていたら、キィナから学校や他の授業を見ていかないかと誘われたから、見ていくことにした。

 この学校の廊下や扉は、大きめの従魔が通ることも想定しているらしくて、結構大きい。俺でも扉に引っ掛かる心配は無さそうだ。

 というわけであまり来る機会も無いとは思うが、学校案内の時間だ。


 ここ訓練場は中庭にあるらしく、四方を魔法で強化された校舎で囲われている。
 なんでも王族も通う学校だから、外から気軽に入れないようにする為、らしい。
 また、生徒の攻撃魔法とかが外に行かないよう、防ぐ意味合いもあるらしい。

 そして訓練場から校舎に入ると、椅子とかの置いてある休憩所みたいな、広めの空間に繋がっていた。
 訓練で怪我人が出ても対応できるように、保健室も近いらしい。

 また、この前全校試合をした体育館的な建物もすぐ傍にある。


 そこからキィナの教室を目指して廊下を歩いているが、周囲からの視線が凄い。
 従魔と暮らすことが珍しくないこの国は、建物が大きめと言うだけあって、この学校の廊下も凄く広い。

 だが、大きめの馬をも越える大きさの俺が、室内を歩いている光景はあまりないらしく、興味半分恐怖半分な視線を感じる気がする。


 だが、そんな俺に恐れをなさない人間が正面から近づいてきた。
 あの例の糞男と...なんか太ってる嫌らしい顔した金髪ブタ男が一緒に歩いてきた。


 ...あのデブ、旅の途中で食べたオークみたいに脂が乗ってて旨そうだな...ジュルリ。


 いかんいかん!思考が本能に支配されるところだった!旨そうなものを見ると、たまに欲望を抑えられなくなりそうになる。


 涎が垂れた俺に「毒を撒き散らさないでよね?」と苦笑するキィナと、顔色が少し悪くなるデブ。
 大丈夫だ2人とも、この涎はスキルを使ってないから毒じゃない。ただの涎だ。


 気を取り直したっぽいデブは、キィナの前に立ちなんやかんや難しそうな言葉を並べ出した。
 うーん、つまり要約すると俺を寄越せてきな感じ?なんかこのデブは偉いやつらしい。

 糞男はデブに便乗して「そーだそーだー」的なこと言ってる。
 あいつ、ジャイ○ンじゃなくて、スネ○ポジションだったのか。

 それに対してキィナは従魔を奪うのは違反が云々、デブは奪うのではないとか献上しろとか言葉を変えてるようだった。


 デブの従魔になるのは不満だが、俺が暴れるわけにもいかないし、俺はピイピイ、キェー、クエェ位しか喋れないから話にも入れない。
 埒が明かないなと思っていると、キィナの後ろから金髪イケメンの第2王子と、あの目付きの悪い弓女が来た。

 2人はこの状況を理解すると、第2王子がこりゃまた難しい言葉で王族としての自覚が云々、父上母上へ話す必要が~云々とかなんとか言ってる。

 え、このデブ王族なん?じゃあ後でこっそり食うのも駄目じゃないか...。

 あの弓女はデブの元へ行きつつも、キィナへ頭を下げ謝罪の意思を伝えている。
 仲間の行いを変わりに謝ってるみたいだけど、どういう関係なんだろうか...?

  周りの生徒もこの状況を見ており、デブに厳しい豚を見るような視線を向けている。俺もついでに豚肉を見るような視線を向けておこう。

 ...おっと、また涎が。


 周りに仲間がいないと理解したデブと、あの糞男は「覚えてろよー!」と三下臭い台詞と共に走り出した。すんごい小物感。

...って、以外とデブの足早いなおい!?

 あっ、デブ転んだ。糞男が立たせようと手伝ってる。
 そして立ち上がったら、また走り出した。別に誰も追いかけるつもりなんて無いのに...。


 弓女はそれを見届けたあと、こちらにお辞儀をし、デブ達を追いかけていった。






 美味しそうなデブと一悶着あった後、俺らはキィナの教室へ辿り着いた。

 教室には多くの生徒がおり、こちらを見ている。聞き耳を立てると、「輝きの槍に悪夢の先触れが!」「新しい2つ名どうすんだよ!」「光と闇...混沌の槍?」「それか!!」とかそんな話が聞こえる。

 なんのことだかよく分からないが、キィナは人気者みたいでなによりだ。

 そんな噂話に耳を傾けながらキィナと授業の開始を待っていると、このクラスの生徒と思われる子供たちは全員席に着き、冴えない顔の教師が入ってきて授業が始まった。

 今回の授業は冒険者について話をする、的なことを先生が言っている。


 話の内容に少し興味が出て耳を傾けていると、どうやら生徒に冒険者として働いて、ランクを上げる課題を出すから、今回は冒険者についての説明をする授業だとのこと。






 どうやら俺らは冒険者デビューすることになる、らしい。

_____________________

○オーク
 ピンクの肌をした2m近い体躯をもつ、2足歩行の豚の魔物。知能はゴブリンよりもやや低いが、脂肪に覆われた身体には、ナイフ程度ではまともにダメージを与えることができない。
 また、その重量を支える筋力も発達しており、拳や木の棒を振り回されるだけでも、一般人なら骨が折れてしまうほどの威力をもつ。

 肉は脂が多く柔らかくて美味しい。脂は調理や武器の整備に、骨も武器やテントの骨組み等に使えて、一部の内蔵まで利用される美味しくて便利な魔物。

 亜種に、毛を生やし脂肪を減らして筋肉を引き締めることで、素早さと攻撃力を引き上げたボアオークという猪型の亜種が存在する。
 普通のオークよりも多少打たれ弱いが、素早く攻撃的。
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