グリフォンに転生した...らしい。

キンドル・ファイバー

文字の大きさ
18 / 52
学園生活と魔族と冒険者

魔族の集落を魔物に襲わせてしまっ...魔物から救うことになったらしい

しおりを挟む
※少々お下品要素と大量の虫注意

 ついに魔族の住処へたどり着いてしまった俺。
 だが、具体的にどうこうしようという目標があってきたわけではない。...どうしようか。

 岩影に隠れ、遠くから村のような住処を眺めてみる。
 小さい家が複数個あり、魔族らしき人々が畑仕事や井戸での水汲みをしている。...うん、普通の村の風景だ。


 少し独特な生活をしているのではないかと期待してた分、少し残念な気持ちになってしまった。勝手に期待して、勝手に盛り下がる俺。


 多分魔族も人間と同じで千差万別っていうし、町を築いてる魔族もいるよな!...多分。

 もしかしたら、この村を越えた先にあるのかもしれないが、魔族達に見つからずにここに通るのは多分無理だし、そもそもこれ以上遠くへ行くと帰りが夜中になってしまう。


 罪もない魔族達を驚かすわけにはいかないし、今日のところはコッソリと引き上げよう、そう思い踵を返すと、村の方から叫び声が上がった。


 俺の隠れている岩の方向を見て、村人(村魔族?)が声をあげている。
 俺が見つかったのかと少し焦ったが、後方から気配を感じて振り向いてみると、後ろの森から体高60cm位の大量の蟻のような虫型の魔物が大量に湧き出ており、それを指差しているようだった。100匹くらいか?

 なんでこんなタイミングで魔物が湧いてくるんだ!...ん?
 よく見ると蟻共の体が、なにかをぶつけられたかのように所々へこんでるような...蟻によってはなんか見覚えのある茶色い物体が体に付いているような...

 うん、これあれだ。猿のウン○だ。つまりは...元を辿ると、多分俺のせいだ。


①俺が東の方に来るのに合わせて、猿共も俺を追いかけて東に来た。

②元々東の方にいたであろう、蟻が猿に負けて追いやられる。

③東から来た猿に追いやられた蟻は、東に来る。つまりここ。


 俺のせいで村が襲われると思うと、ちょっと罪悪感が...仕方ない、俺も蟻と戦うとしよう。俺の〈本能〉によると、蟻はウルフよりは少し強い程度みたいだ。

 魔族の村人達はキィナよりは弱い人ばかりだけど、ドリミドールの一般人よりは強いみたい。

 取り敢えず蟻を鑑定して、引き付けるとしよう。


Lv15
名前:なし
種族名:グループアント
体力:180/180
魔力:30
攻撃:150
防御:150
魔攻:0
魔防:130
速さ:150
 スキル
蟻酸Lv3 穴堀りLv5


 何匹か鑑定してみたところ、個体差はあるが大体こんな感じのステータスだった。

 あと、鑑定による不快感を蟻でも感じるのか、鑑定した蟻だけがいい感じに此方に向かってくる。途中からそれが面白くなってきたから、つい鑑定しすぎて7割方の蟻を引き付けることになった。
 村から見たら、蟻の一部が何故か岩に群がり始めたと思うかもしれない。

 因みに、鑑定は対象を見ながら少しだけ魔力を飛ばすようなイメージで使え、結構連射が効く。
 例えると...ボタン長押しで連射できるシューティングゲーム的な感じ?


 さて、君たち蟻たちに罪はないし、なんなら猿を連れて蟻の縄張りを荒らした俺に罪はあるんだが、人命には変えられない。

 蟻さん達は駆除されて頂こう。

 向かってくる蟻を鳥の前足で踏み潰してみる。
 メチバキィといった感じの音ともに蟻の甲殻が割れ、潰れて中身が出てくる。うまそう。
 だが今は喰ってる場合ではない、我慢しよう。次々向かってくる蟻を、ひたすら鳥の前足で踏みつけ押し潰す。

 このままワンパターン戦法で倒しきれれば楽だったのだが、何匹も同胞を潰された蟻は俺から距離を取り始めた。
 蟻が横一列に並び、自身のケツ(腹部)を跨ぐようにして先っちょを此方に向けてきた。
 蟻のこの姿勢に心当たりがある俺は真上に飛んだ。そして、俺が飛ぶと同時くらいに蟻がケツの先から黄色い液体を飛ばしてきた。

 俺なら見てから避けても余裕くらいの速度で、俺がいた場所の地面に飛ばされ、ジュージューと音を立てて荒れ地を溶かす黄色い液体。その正体は蟻酸である。


 「ウ○コの次はお○っこですねぇ?下ネタ大好きなのか、この森の魔物は...」と内心変な方向にキレながら〈ウィンド・ボール〉の魔法を使い、バランスボールくらいの風の玉2つを、蟻酸を放った蟻の列にぶちかます。
 ウィンド・ボールの弾けた勢いで多くの蟻が吹き飛び、何匹かは岩に叩きつけられ即死する。


 背後から驚いてる気配や、声が聞こえる。そういや蟻酸を避けるために、隠れてた岩を越えた高さを飛んだから、村の魔族達に俺の存在がバレてしまったな。

 まぁ、向こうから攻撃してこない限りは無視だ無視、蟻をさっさと片付けてしまおう。
 バレちまったなら仕方ない、とばかりに吹っ切れた俺は、〈眠羽〉をばらまきながら縦横無尽に飛び回り、蟻をライオンの後ろ足で足蹴にし、潰して回る。

 純粋な脚力は、鳥の前足よりもライオンの後ろ足の方が強いから、飛び立つときも地面を蹴るのに凄く役に立つのよね。

 蟻共は飛び回る俺に蟻酸を飛ばして攻撃するも、余裕で避ける。
 あの蟻酸はあまり弾速が速くないし、連射はできないみたいだから、正直恐れることなどなかった。

 しかも時間が経てば経つほど、眠羽の睡眠毒が効いてきて、蟻の動きが鈍くなるので虫を潰すだけの作業ゲーと化していった。



 俺の方へ向かってきた蟻を全て潰し終えた。村の方を戦況を見ると、残りは数匹のようだ。

 戦っている魔族達を良くみると、魔族だけじゃなく鎧を着た普通の人間もいるようにみえる。
 あの鎧、ドリミドールの兵士の鎧っぽいな...どういう関係なんだろうか?

 普通の人間と見分けのつかない魔族もいるらしいが、本能に聞いてみるとあれは人間の可能性が高いとのこと。
 魔族との同盟の話があったけど、それの関係かな?


 何はともあれ、彼らはもう放っておいても蟻にやられる心配はないだろう。
 なので、俺はお暇させて頂こう...と思ったが眼前に広がるこの蟻の死体、少しくらい食べていってもいいよね...?

 せめて魔物の体内にある赤い石だけでも食べよう。なんだか知らないがあの赤い石が旨いからな!


 バリバリむしゃむしゃ...


 俺が倒した蟻の数の半分以下である、30匹分くらいの蟻の赤い石を早食いしたところで、村の方の戦闘が終わりそうな様子だったので退散することにした。

 村が襲われたのがほぼ俺のせいだから気まずいし、もしも「蟻の次はお前だ。」と襲って来られたら嫌だからな。

 まぁ、今外に出ている魔族や人が全戦力ならば、襲われても返り討ちにして村滅ぼすくらいは出来そうだけど、無闇に殺したい訳じゃないし、そもそも人間との繋がりがあるっぽい彼らが、悪い魔族の可能性は低いと思うしな。




 俺は村に背を向けて、自分の巣の方角である西へ飛んだ。西日が眩しい。





 どうやら俺は魔族の村を救うことができた、らしい。





 自分で魔物に襲わせてしまうことになったけど、自分で大半片付けたから許して欲しい。てか、そもそも着いてきた糞猿が悪い、俺は悪くねぇ!俺は悪くねぇ!






 あっヤメッ!○ンコ投げんな糞猿!!てめぇ!ぶっ殺すぞ!うわっくせぇ!






 このときの俺は知らなかった。


 この村の魔族が、西日に向かって飛びながら猿のウ○コを機敏に避ける俺に向かって、膝をついて祈るポーズをとっていたことを...

_____________________

○グループアント
 体高約60cm、体長1m弱の黒い蟻の魔物。女王を中心とした群れで暮らしているが、群れの一員に擬態するため、パッと見ただけでは女王を見つけることは難しい。
 肉や茸、果物を主食としている。

 本来はいざというときに女王だけでも逃がすため、群れ全体を影武者として使うのだが、今回の群れは全滅させられたため、少し強い女王が1匹紛れてたが気がつかず、主人公に潰されている。

 森の樹上や、土に穴を掘って生活する。今回は森に移住しに来たが、穴を掘る前に猿の群れにぶつかられた為、森の外に逃走した。


 近くの魔族の村でも、この蟻が移住してきたことを問題視しており、同盟を組んだドリミドールと魔族の国が相談した結果、人間の兵士を何人か駐在させ協力する姿勢を見せていた。


○蟻酸
 蟻がもつ酸性の毒。蟻系の魔物の強さにも寄るが、大体は木なら問題なく溶かせる威力。育ったグループアントは岩や砂すら溶かす。

○穴堀り
 穴を掘る際の力が強化される。このスキルの効果で男同士でアーッ!するときも力強くなるとか、神様も実装するときに気がつけなかった致命的なバグ。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】愛されないと知った時、私は

yanako
恋愛
私は聞いてしまった。 彼の本心を。 私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。 父が私の結婚相手を見つけてきた。 隣の領地の次男の彼。 幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。 そう、思っていたのだ。

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

処理中です...