グリフォンに転生した...らしい。

キンドル・ファイバー

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すごくヤバい特別講師とダンジョンで修行

クロムラックへの道中らしい

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 現在かなり高い上空を飛んでいるグリフォンである俺、レイヴィン。
 そして真下にはまるで商会が率いてるかのような複数の大きい幌馬車と、それを引く沢山の美味しそうな馬、キィナやその友達の白髪の子等が生徒達が御者をしている姿が見える。
 更に俺の近くには、あの第2王子の白竜も一緒に飛んでいる。


 あの特別講師襲来から一週間は、ひたすらに生徒達の修行フェイズだった。
 体力測定、筋トレ、長い紐を腰に巻いてそれが地に落ちないようにランニング、森の中で木から木へ飛び移る、反撃しない特別講師をひたすらに攻める、逆に手加減した特別講師の攻撃をひたすらに防ぎ続ける、最低限の魔法攻撃をできるようにする...etc

 忍者の修行みたいなのも混ざってたが一番驚いたのは、参加した全員が自分の持っている属性の最低限の魔法攻撃ができるようになったことだな。

 今まで魔法が使えなかった生徒達もこれには喜んでいた。
 だが、キィナのお友達の茶髪の大剣君のような魔法適正の低すぎる子達は、特別講師に無理矢理魔力を動かされたとかでゲロゲロ吐いてて、可愛そうだなと思った(他人事)。

 しかも全力でランニングさせられた後に。



 そんな地獄の修行を終えた生徒達の内、何人かは、最初に特別講師に選ばれた生徒と同じくダンジョン攻略への参加が許可された。

 ん?屑とデブはどうなったかって?そういや修行1日目にはいたけど、2日目からは見てないな...多分逃げたんじゃないか?


 そしてなんやかんやあって今現在、目的のダンジョンがあると言うクロムラック王国へ向かう為、ドリミドールから北方向にある道を進んでいる。
 俺は馬車に乗れないので、超上空で生徒達の乗る馬車に追従している。

 キィナは俺に乗って移動したがっていたが、今回参加した生徒の中で御者経験があったキィナとかそのお友だちの白髪の子とかは、多くの生徒が乗った馬車の1つで半ば強制的に御者させられていた。
 あれ、キィナ達って一応貴族の少女だよな?なんで御者できるんだ...?

 他にも、特別講師からの指示がいくつかあり、飛べる大型の従魔は高く飛んでついてくるように、飛べない大型の従魔がいるなら馬車から距離を取ってついてこさせる、若しくは必要な時に〈フォローサモン〉を使って呼ぶように、との指示を出されている。


 何故特別講師がこんな指示を出しているのか、不思議でしょうがない。
 一緒に着いていった方が、山賊とかを威圧できて安全だろうに...

 ん?もしかして逆に...

 と考えを巡らせていたら、フラグが立つかの如く、茂みから山賊風ファッションな30人近い雑魚集団が現れた。

 それを見た俺は理解した。多くの荷物が乗ってるかのような沢山の大きめの馬車(生徒が乗ってる)、周囲に護衛は無し(特別講師も馬車の中)、御者は生徒達の少年少女。

 なるほどな、敢えて山賊に狙われるようにしてたのか、そしてその討伐を授業にと...え、えげつねぇ、学生にやらせることか?


 キィナから〈モンスターテレパス〉で連絡が来た。俺には山賊の後ろに降りて逃げ道を封鎖してほしいと、そして俺の仕事は脅すだけで、攻撃されない限り手は出さないで欲しいんだとか。

 なんでこのノリはロリロリ...じゃなかった、なんでこのロリはノリノリなんですかねぇ?


 「キィア!キュエアーキュ!(約:俺、ちょっくら山賊の背後で威嚇してくるわ!)」
 「グルォグルアウォ(約:私は彼の指示通りここで待機して、生徒達が危険なときに向かいましょう。)」


 白竜と鳴き声で意志疎通を行い、山賊の背後に急降下する俺。

 どうやら俺は〈言語理解〉のスキルの効果で意識して理解しようとすれば、他種族とも多少会話できるらしく、白竜と先ほどまで軽くお喋りしてた。

 まぁ、白竜は相槌を打ったり、大体第2王子はこうしてましたとかしか言わないから話がぶった切られるときもあるんだが、まぁ暇潰しにはなる。
 普段は、指示通り言われたことをやる事しかしないみたいだしな。

 命令に忠実で裏切りの心配はなく、サモナーの手足のように動くことができるが、応用は利かないし、進言苦言も呈さない。
 前にキィナが言ってたが、サモナーの魔物の特徴らしい。

 例えるとあれだな、サモナーの魔物は社畜で命令に忠実、自発性がない。テイマーの魔物は仲の言い友達で臨機応変な対応が可能、でも多少裏切ったりできる。みたいな?




 上空から急降下した俺は、山賊の背後に地面をえぐりながら派手に着地する。
 その際に敢えて無駄に砂埃を舞い上げ、その砂埃を払いながら羽を大きく広げて威嚇することで、モ○ハンのモンスターの登場シーンの如く嘶く黒いグリフォンの構図が完成した。

 それを合図に馬車内から打って出る生徒達、勢いよく山賊に襲いかかろうとするも、あることに気がつき彼らの動きが止まる。




 山賊全員が立ったまま気絶していた。




 覚悟を決めて飛び出した生徒達は、拍子抜けしながらも特別講師の指示に従い、山賊達を縄で縛る。
 縛られたまま眼が覚めた山賊は生徒達に命乞いを始めた、自分等は他国の元農民で生活が苦しくて稼ぐために山賊行為を行ったとか、まだ殺しはしてないし、戦い馴れしてないから許してくれだとか。

 だが山賊の格好で汚くて恐い雰囲気を作り、数で威圧して通りかかる人から金品の強奪はしてたんだと。
 鹿とか猪とか狩って大人しく暮らしてれば良いのにな...


 特別講師は「想定とは違ったが...まぁいいだろう。彼らは近くの町に引き渡しておこう。」と言い、荷台に山賊を積みこみ始めた。哀れな盗賊は見逃して貰えませんでした、めでたしめでたし。

 生徒も山賊を詰め込むのを手伝っていたが、重いのか大変そうだったので、俺も縛られた山賊を積み込むのを手伝う。鳥の前足で鷲掴みにして馬車にポイッと。




 ビギナー山賊達の積み込み作業が終わり、再びクロムラックへ向けて出発する馬車。

 数分後に再び山賊に出会ったから、そのときは山賊が逃げそうになるまで上空で待機してたが、何事もなく生徒だけで全ての山賊を捕縛することに成功していた。

 なんでこんなにすぐ山賊に出会うんだと思ったが、特別講師によるとクロムラックの国内は他国から流れてきた山賊がかなり多いんだとか。
 彼も黒騎士として、兵を率いて山賊の討伐は行っているが、軍隊だと目立って散り散りに逃げられてしまうため、全てを捕縛するのが面倒とのこと。で、今回の依頼を使って生徒を育てつつも、こうして山賊討伐に協力させてるんだとか。

 説明も無しに盗賊狩りに参加させられた生徒の一部が軽く不満の声を上げたところ、追加報酬は期待してくれて構わないと特別講師が言ったからか、生徒から不満は殆ど出なくなった。こいつら大半貴族の癖に現金すぎる。

 キィナとかめっちゃ跳び跳ねて喜んでるんだけど、お前喜びすぎだろ!貴族としての誇りはどうした!...え?誇りなんかで飯は喰えないって?ごもっともです、はい。




 その後も何日か野宿しながら道を進み、複数回の山賊襲撃イベントに出会いつつも、ほぼ生け捕りに成功し士気の高まる生徒達。


 一度だけちょっとだけ強い、変な山賊団に逃げられたりしたが、俺や白竜が参戦したから生徒達はほぼ無傷ではある。

 苦戦した盗賊団の名前は...なんだったっけかな...何とか喰う虫、的な名前の盗賊団だったような...黒騎士もあいつらの逃げ足(空を飛んで逃げてた。)には苦戦させられているんだとか。
 奴らの逃げる速度はとんでもなく、俺が飛んでも何時間か追いかけ続けなければ追い付けなさそうだったから諦めるほどだ。

 彼らは通りかかる人の金を根こそぎ取らず、一部だけ盗ってったり、金が無いと逆に少しだけ恵んでくれたり、殺しはしないと公言してたりと意味が分からない奴ららしく、比較的実害は少ないみたいだけど。




 今日泊まる予定の町へと到着し、門番兵士に捕らえた大量の山賊を預ける。 
 盗賊は買い取ってくれるらしく、その金は特別講師が生徒に分配していた。

 大量の金貨銀貨に狂喜乱舞する生徒、生徒の中には金貨を見たことの無い庶民出身の生徒も混ざっていたし、このテンションも仕方がない人もいるとは思う。

 だが、その狂喜乱舞してる集団の中にキィナがいるのが解せぬ。お前、一応貴族だろ...?


 そんな下らない様子を見届けつつ、クロムラックのとある町並みを眺める。
 大きな町だが少し寂れており、なんか破壊痕とかあって戦争後って感じがする。あちらこちらで多くの人が修繕作業をしているようだ。

 周りの様子を見た生徒の1人が特別講師に、この町に何があったのかと質問している。キィナのお友だちのもしゃもしゃ黒髪ツインテの魔法使いの子だ。

 俺には難しい話で良く分からなかったが、この町はクククの町と言う名前で、少し前に悪政を敷いていた領主が住んでいたんだとか。
 んで、そいつを狩る際に大規模な戦闘になって町が壊され、その復興中。と言う感じらしい。


 そしてこの町では、大量発生している山賊を捕縛したら奴隷として再利用し、土木工事をさせているんだとか。

 奴隷なんて使って良いのか?とかおもったが、この国は犯罪奴隷は認められているとのこと。
 それらを有効活用しつつも、不当な理由で奴隷にされた人を取り扱う奴隷商は潰して、奴隷商を捕縛し犯罪奴隷にして労働源を得ていくスタイルらしい。黒の国の名前に恥じない逞しいブラックな国だなクロムラック。小国だけど。

 あ、不当な理由で奴隷にされた人は、ちゃんと解放するんだって。優しさの白を混ぜてグレーな国と呼んで上げようか?




 本日生徒達が泊まる宿はこちら、この町の領主館らしい。
 何故そんな所に泊まれるのか生徒が質問すると、特別講師は少し困ったように「一応私も国の偉い立場の人間だからな」と答えてた。
 生徒からしたら、黒騎士っていうより先生とか師匠感が強くて、国最強の色騎士様だと言うことを忘れてたのかな?
 俺も特別講師という認識が強かったけど、黒騎士って読んだ方がいいのかな?


 因みに領主の館では特別講師である黒騎士がめっちゃ歓迎されており、連れられてきた生徒も歓迎されていた。

 ...俺?俺ら従魔はペットお断り(従魔用の小屋とかが無くて受け入れられない状態)だったから、他の従魔と一緒に〈サモンリターン〉で一度返されたわ。
 俺が入るには入り口が狭く、人間しか想定していない館だったし仕方ないか。


 というわけで俺は巣で寝ることになった。







 どうやら俺は、結局いつも通りの所で寝泊まりすることになる、らしい
────────────────────
※クロムラック国にある町は、同じ文字を繰り返す名前が多い、らしい。

※クロムラックでは、犯罪者は懲役の代わりに奴隷にして、一定の額稼がせるという方法がよく使われている。重罪人には終身奴隷か死刑か被害者に選ばせたりも。
 ドリミドールだと、あまり奴隷販売は推奨されておらず、犯罪者にはよく懲役刑を使い、重罪人は終身刑か死罪。

 因みに全国共通でこの世界での死刑は割とポピュラーだったりする。
 しかし、捜索用の魔法とか嘘発見器な魔道具をバリバリ使って、誤審の無いよう証拠とかをしっかり集めてから行われる。
 いくら偉い貴族でも一声で他者を死刑にはできない。王族なら別とされる国が多いけど。
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