グリフォンに転生した...らしい。

キンドル・ファイバー

文字の大きさ
36 / 52
すごくヤバい特別講師とダンジョンで修行

反省とダンジョン攻略当日らしい

しおりを挟む
 前日に勝手にガチギレして巣に帰り、やけ食いからのふて寝コンボをかました俺、レイヴィン。

 翌日、頭を冷やした俺は、魔王城黒騎士の屋敷に〈フォローサモ〉られた後に皆がいる所で、昨日突然ぶちギレたことを頭を下げて謝罪。


 黒騎士さんには特に謝る。お詫びの品として、肉を捧げて頭を下げる。
 レッサーベアーの右手です、お納めください。ビックベアーの両手は俺が食べた分と、昨日キィナに送った分しかありません。

 言葉は話せないけど、反省の意は伝わったらしく、俺の頭を撫でて向こうも飯用意しなかった事を謝ってくれた。めっちゃいい人やん。


 俺のせいで小さいトラブルが起きてしまったが、今日はダンジョン探索の日だ。
 目的としては、最近ダンジョンの魔物が妙に増えているとのことで、それらの間引きに加えて生徒の修行、レベル上げをすることだ。

 忘れかけていたが、これは依頼扱いで金が貰える上に、レベル上げや訓練までしてくれるという、特別講師による粋な計らいである。

 なんでここまでしてくれるんだろうか?山賊なんて黒騎士程の強者なら彼1人でも全滅させられそうだし、ダンジョンの魔物が増えてもダンジョンごと滅ぼせそうなんだが。

 うーむ言いすぎかな?だが、俺の〈本能〉はそれくらいやってのけそうな気がするっつってる。
 因みに俺は、山賊や魔物を雑草程度に考えていて、お手伝いが欲しかった説を提唱してみる。

 まぁ、こちらとしては俺もキィナも鍛えられるだろうし、金も貰えるとかほぼメリットしかないから全然良いんだが。

 多少面倒臭くはあるけど、俺ももっと強くなりたいしな。




 準備を終えた生徒達は、特別講師である黒騎士に引率されダンジョンまで向かうことになった。

 町の門から出て馬車で北東へ暫く進む。すると森が見えてきたので、森の前で馬車と馬を置き、生徒の内半分は馬車で荷物番。

 大体40人くらい生徒がいるから、その半分の20人くらいの生徒達で森の中へ向かう。
 因みに俺らや第2王子は前半ダンジョンへ向かう組で、キィナのお友達は後半組で荷物番だ。

 森の浅いところにダンジョンである〈姫と騎士の密やかな逢瀬〉の入り口があるらしく、生徒は交代で潜らせるとのこと。


 森に入って10分くらい歩くと、目の前に洞窟を見つけた、あれがダンジョンらしい。

 パッと見、土が盛り上がっただけの洞窟だな...ん?あれに似た洞窟の入り口をどこかで見た気がするような...。

 あ、俺が1人で旅してた時に、寝床にしようとしたことのある洞窟とそっくりだ!
 その時は、やけに魔物が多くて寝付けなかったからすぐ出ていったけど、あれはダンジョンだったのか!納得した。


 ダンジョンの側には、俺らと同じくダンジョンを探索しに来た冒険者がいるのかテントが1つだけ張られている。

 黒騎士がそのテントの側まで行き、声を掛けると中から男が出てきて、黒騎士と話し始めた。
 男は魔物の毛皮を使った軽装の装備で、ワイルドな山賊みたいなファッションだ。髪型もなんかトガトガしてる。

 テントから出てきた男によると、ダンジョンの魔物は段々と増え続けているらしく、このままだと溢れてくるかもしれないとのこと。
 他にも一週間近く狩り続けてるとか、休みが欲しいとか、過労死するとか言ってる。

 黒の国なだけにブラック企業かな?

 なんて内心思ってたらそれが伝わったのか、黒騎士が彼らは元山賊の奴隷だからここまで働かせてるんだ的なことを言い出した。
 ほうほう、黒の国のクロムラックでは割と奴隷を有効活用してるみたいだな。

 因みに緑の国のドリミドールでは、奴隷はあまり推奨されていないらしい。
 というかドリミドールだと、何故か奴隷は時代遅れてきな風潮があって、テイマーがゴブリンやオークなどの亜人系の魔物を働かせる方が、便利で人道的だ云々言われる風潮があるんだとか。

 ドリミドールだと刑罰として犯罪者を奴隷落ちさせることは、滅多にないらしい。買いたい人がいないから需要が無いんだとか。
 犯罪者は大体牢屋で懲役刑にされたり、バッサリ首を切られる...俺、ドリミドールはもうちょい優しい国だと思ってたょ。

 因みにこれらは、なんか前に授業で奴隷についてやってたときに得た知識だ。鳥頭だけどなんとか覚えてた、ふふん。

 てか、犯罪奴隷の立場で、国の最高戦力である黒騎士に愚痴るとか、このワイルドトガトガ頭男の度胸すげぇな。


 黒騎士は彼の愚痴を気にせずダンジョンの状況報告を受け、俺達にも伝える。

 元々は初心者でも入れるダンジョンだったが、ここ数週間で魔物が増え、しかもランクが少し高い魔物まで出始めたんだとか。

 罠も元々は浅い落とし穴とか、足元に時々紐が張られている程度の嫌がらせみたいなダンジョンだったのが、浅い場所でも人の身長くらいの深さの落とし穴や竹槍が壁から生えてくる罠が出てきたらしい。

 既に初心者冒険者からも足首を挫いたり、竹槍が深く刺さる等して負傷者が出始め、ギルドがEランク以下の出入りを禁止し、犯罪奴隷で構成した奴隷冒険者に探索をさせてるんだとか。

 奴隷冒険者というのは、依頼の中でも誰も受けないで溜まってしまっている雑用や、危険な物を片付けることを主とした冒険者で、他にもダンジョンの未知の階層を突撃させたりと、臨機応変に使い捨てることのできる犯罪奴隷で構成した冒険者パーティーらしい。


 使い道えっぐ。



 さてさて、前置きが長くなってしまったが、ついに生徒達のダンジョン攻略が始まることになった。
 俺と白竜のデカイ従魔コンビは、俺らが全部蹴散らしたら生徒の修行にならないということで、後ろの方から観戦しながら着いていくことに。少し暴れたかった。

 先ずは、盛り上がった土に穴を開けただけという、シンパシー感じる見た目の入り口を通ると、中には長い下り階段があった。
 幅は俺でも通れるくらい。人が4人は横に並べそうだ。

 その階段を生徒達が下り始めると、突然横穴から2匹のゴブリンが生徒に襲いかかる。
 薄暗くて見えにくいが、階段の両脇に子供が通れるくらいの穴があり、そこに潜んでいたみたいだ。

 だが、前の方を歩いていた生徒2人は危なげなく対処し、ゴブリンは呆気なく狩られる。

 ...とはいってもゴブリンの不意打ちはお粗末なもので、穴に潜んでる段階で鼻息が荒い、臭い、お喋りなのかゲヘゲヘと無駄に呟いてるし、飛びかかる際も無駄にグギャグキャと声を出してる上に、武器すら持って無い。


 ここにいる生徒達はまだ子供とはいえ、ちゃんと鍛えられており、更に彼らはその中でもエリートな部類だ。だからゴブリン程度は余裕なんだろうな。

 ゴブリン自体が1対1で農具を持った農民でも、油断しなければ狩れる魔物だしな。

 長い下り階段で時々ゴブリンさんによる、お粗末さんな襲撃を受けつつも、黒騎士の指示で生徒全員がゴブリンと戦えるよう、並び順を時々変えながらも階段を下り終える。


 長い階段を下り終えた先は、見た感じ石造りの迷路みたいな場所だった通路は太く、馬より大きい俺がすれ違えるくらいはある。高さも十分で、電柱くらいかな?それなりに飛べる高さで10m位はあると思う。
 迷路のようなダンジョンだが、黒騎士は道を知っているとのことで、彼を先頭に道を進む。

 迷路を歩きながら、黒騎士がこのダンジョンの成り立ちを話し始める。

 元々は何十年も昔に使われていた、城から王族が脱走するための非常口だったもので、クロムラックの城に続いていたが、ダンジョン化した際、城へ繋がっていた部分は崩落して塞がっているんだとか。

 なぜダンジョン化したかは判明してないが、使われなくなった通路に魔物が住み着き、魔力が溜まりダンジョン化したのではないかと言う説が濃厚とされているらしい。

 その説を話したあと、黒騎士は言葉を濁しつつも、「私見ではあるが、可能性として昔の王族がダンジョンコアを使用し、意図的にダンジョンを作り出したという可能性もある」と話してる。
 確かに王族しか知らない隠された通路を、たまたま複数の魔物が見つけて、しかも住み着き始めるなんてのもおかしいし、納得できる話ではあるよな。




 こんな話をしながら歩いていると、新たな下り階段へと辿り着いた。
 道中はダンジョンの調査をさせられている奴隷冒険者数人に出会って、黒騎士が情報収集してたり、黒騎士が罠を生徒に見つけさせたり解除させたり、蝙蝠とか鼠の魔物を生徒に倒させたくらいで、まともな戦闘はなくてつまらなかった。

 罠は話通り大人の身長くらいの落とし穴とか、壁から竹槍が襲ってくる危険なものもあったが、床を踏むと天井から土嚢袋1つ分くらいの砂が降ってくるとか嫌がらせみたいなのもあった。

 だけど、迷路を歩くことしかしてないが、ダンジョンに来てるという感覚が強くなり、段々と楽しくなってきている俺がいる。






 どうやら俺はダンジョンが楽しくなってきている、らしい。

____________________

※浅い層は奴隷冒険者達が魔物を片付けてたから少ししか魔物に出会わなかったが、この1層にも元々魔物は異常発生していた。

●予約投稿ってやつの存在を知り、試してみるキンドル氏(^q^)
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...