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すごくヤバい特別講師とダンジョンで修行
檻から解き放たれた黒き暴力らしい
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生徒たちは重軽傷を負い、全員が倒れ伏し全滅。俺、レイヴィンも重症を負い息も絶え絶えの状態。
新たなスキルを本能に従って放ち、魔王の右腕を千切ることに成功するも、この技は隙が大きく避け易いせいで、致命傷を与えることができない。
そんな状態で理性を取り戻した俺が取った行動は、そう、人任せ。
〈空裂の魔眼〉は、黒騎士でさえ削る事しかできなかった赤い結晶を空間ごと捻り粉々にして、黒騎士が余裕で抜けられる程の穴を開けることに成功した。
赤い結晶から解放された黒騎士は、目にも止まらぬ速さで魔王に詰め寄り大剣を振るう。
魔王も咄嗟に何処からか細身の剣を取り出し対応するも、瞬きをした瞬間にはキンキンッと金属音が鳴り、魔王の剣が3等分になっていた。
焦った魔王が剣を捨て、死屍累々と倒れている生徒の1人の頭を掴み、人質作戦を決行し始めた。
「クァッハッハ!子供の命が惜しければ、武器を捨てるのだな!!」
それを見た黒騎士は大剣を床に深く刺し、両手を上げる。卑怯過ぎるぞ魔王...!
魔王が、抵抗できない黒騎士に魔法で攻撃しようと魔力を高めている。
魔王は俺の方も警戒しているのか、チラチラ見ているし下手に攻撃してもバレて生徒を殺されては困る。
黒騎士が俺に「心配するな。」と声をかけてくれた。だが、大丈夫だろうか...
どうすることもできないまま魔王が魔法の準備を終え、巨大な黒い霧の様なものを黒騎士へ放つ。
黒騎士はその魔法を受ける...と思いきや風の魔法を使い、軽く受け流している。
それを見て苛立ったのか、魔王は掴んでいる生徒を地面に叩きつけようと構える...それと同時に同時に魔王の足元から薄緑色の液体が吹き出し、生徒を掴んでいた魔王の左腕に巻き付いて、ジュージューという音と共に煙を立てながら溶かし始めた!?
なんだあれ!?スライムか!?
魔王もかなり取り乱し、左手に掴んでいた生徒を放り出して、腕を溶かされる痛みに声を上げ、腕を思いっきり振り回している。
地面から生えた薄緑色のスライムは、振り回される魔王の腕に力で引っこ抜かれ、その全貌を現した。
液体状の身体は一般家庭のお風呂6杯分近い質量を持ち、薄緑色の身体の中には、大体ヤカンくらいの大きさの...乳白色の魔石のような玉が5つ漂っている。
あの乳白色、見たことあるような...あ!黒騎士の新しい大剣に埋め込まれてたやつか!
ふと黒騎士の大剣が刺さっていた場所を見ると、そこには刀身が真ん中から真っ二つに割れ、その他のパーツもバラバラに分解された大剣だった物が散乱している。
戸惑う俺に、黒騎士があのスライムはあの大剣に住んでて、俺達の味方だということを教えてくれた。
正確には魔剣とか、悪魔とか契約とかなんか言ってたけどようわからん。
黒騎士と軽く話していると、スライムが魔王の左腕を溶かし切り、人質に取られていた生徒を乗せて黒騎士の元に這いずるように戻ってくる。
ポヨンポヨンと跳ねてくれたら可愛かったかもしれないが、ドロドロの見た目も相まって這いずる様は、少し禍々しいな...
スライムは生徒を置いた後、バラバラになった大剣のパーツを広い集めて見事に組み立て、黒騎士の元へと戻る。
剣の状態でどうやって移動してるかって?刀身を半開きにして、そこから薄緑色の液体を出して移動してる。例えるとカタツムリみたいな感じだな...剣ツムリ的な?
両腕を失った魔王。少しの間、呆然としていたようだが...突然大声で笑いだした。
「クァハハハハ!この私がここまで追い詰められるとはなっ!!黒騎士とやら、その魔剣が貴様の奥の手か。ならば私も本気を出さねばなるまいな!!」
そう言った魔王は、身体をボコボコと膨れ上がらせる。
警戒した黒騎士が氷の魔法を飛ばして攻撃するも、鋭い氷は肉塊のようになった魔王に飲み込まれるように消えていった。
それを見た黒騎士は舌打ちをし、俺に緑色のポーションを掛けて生徒の回収を頼んできた。ちょいと鑑定失礼。
〈ライフポーション(上級)〉
体力を最大HPの70%くらい回復する回復薬。高品質の薬草と、その他高級な植物を調合して作られている。
ポーションのお陰で、魔王にザックリやられた胸部の傷も逆再生するようにみるみると塞がる。ありがとう、いい薬です。
傷が殆ど治った俺は低空飛行し、黒騎士の言う通りに倒れている大勢の生徒を回収し、このボス部屋の外まで急いで運び出す。
俺が生徒を回収している間にもグチュグチュと変形し続けるキモい魔王に対して、黒騎士はスライムを纏った大剣で切り付け始めていた。
何かの形を成そうとしている魔王と、それを止めようと何回も切り付ける黒騎士。
切り付けた場所が切り裂かれ、纏ったスライムが傷口を溶かしている。血が飛び散っている様子を見ると、ダメージはありそうだ。
てか、敵の変身中に攻撃しまくってるけど、これは大丈夫なのだろうか?戦隊物のファンとかに怒られないか?
やはり攻撃されるのが鬱陶しかったのか、魔王が3m近い巨大な右腕のみの異形と成り、黒騎士を追い払うように凪払う。
それを真っ正面から大剣で受け止める黒騎士。そこで俺は、腕になった魔王目掛けて〈眠羽〉を飛ばしてみる。
...数本しか刺さらなかった、肉々しい柔らかそうな質感の見た目に反して結構固いようだ。
黒騎士が手の形をした魔王の指を切り飛ばす、指を切られた魔王は下がろうとするも、それを上回るスピードで追撃しに向かう黒騎士。
だが、切り落とされた指が芋虫のように動き、それぞれが黒い魔法の玉を放ち攻撃。
黒騎士はそれを避けたり、大剣で弾いたりして対応し、足止めされてしまっている。
距離を取ることに成功した魔王が変形し、身長が2m越える大きさのオーガに近い姿になった。
ただ、オーガと違う所があり、背中には蝙蝠に近い羽が生え、腰からは悪魔のような尻尾、額には角が1本ではなく2本、しかも上向きに生えている。
変身を終えた魔王が声高らかに笑い、強力そうな魔法を連発する。
地面から吹き出す溶岩、黒い冷気、濁流の水刃、空間を切り裂く風...どれも全く知らないしヤバそうな魔法が、自らの元指だった肉片をも飲み込みながら襲いかかってくる。
だが、我らが黒騎士様もヤバい。迫り来る溶岩を凍らせて蹴りで砕き、剣から黒い衝撃波を放つことで、溶岩の破片と黒い冷気を吹き飛ばす。
濁った水の刃も凍らせてから、殴って砕いている。
だが問題なのは、次に襲い来る空間を切り裂く風だ。あれは物理的にどうこうできる物ではないし、凍らせることは不可能だろう。
俺の空裂の魔眼なら勢いを弱めるくらいならできそうだが...援護すべきか悩んでいると、空間を切り裂きながら迫る風へ黒騎士が自ら突っ込んで行った!?
空間を刻み、歪ませながら迫る風に飲み込まれる黒騎士。
自分で空裂の魔眼を使用したからわかるが、アレはレベルとか防御力でなんとかなる代物ではない。
だが、あれ程の強さを持つ黒騎士が、無策でやられるとは思えない。
固唾を飲むような緊張感で見守る俺、勝ちを確信したかのように再び高笑いする魔王。
空間を切り裂く風が通りすぎ、後方のダンジョンの壁すら抉り取られ、跡形も無くなってしまった。
黒騎士の姿も無い。
最悪の状況かもしれない、キィナだけでも抱えて逃げるしか...と俺は後退りを始めた。
そんな俺を魔王がニヤケながら見てくる。
俺が恐怖を感じたその瞬間、魔王の後方から突然黒騎士が現れ、魔王の首を大剣で切り飛ばした!?
更に黒騎士は大剣を振るい、切り飛ばした頭を真っ二つにし、瞬く間に胴体も5回くらいの輪切りにしてしまった。
突然の展開に訳が分からないが、取り敢えず助かったことに安堵し、体の力が抜ける。
なぜ無事なのかだとか、一体どうやって魔王の後方に現れたのかとか、聞きたいことはあったが俺は鳥。
言葉は多分通じない...黒騎士なら通じそうな気もするが、今はそれどころじゃないだろう。
なぜなら切り落とされて真っ二つにされた魔王の首が喋りだしたからだ。
ボロボロの状態だから何を言っているのか聞き取りにくいが、内容は恨みつらみのようで、黒騎士は溜め息をついた後に魔王の真っ二つの頭部を凍らせて、踏み砕いた。
どうやら、今度こそ魔王は死んだ、らしい。
_____________________
○ダーク・フォッグ・ソウル・コントロール
闇の上位魔法の一種。霧に包まれた相手は、自らの意に従うようになると言われているが、人間で使える者がいない為、詳細は不明。
○フレイム・ストーン・ウェーブ・ラヴァ
溶岩の波で敵を飲み込む、火と岩の混合上位魔法。
並の人間は近づくだけで皮膚が焼けただれ、触れれば瞬く間に溶かされてしまう。並の人間であれば、だが。
○ダーク・アイス・コールドミスト・コントロール
闇の冷気で他者を包み込む、闇と氷の混合上位魔法。
冷気で体の自由を奪い、闇の力で操ることができる魔法で、強力な相手でも多少動きを封じる程度は可能。相手を包み込めれば、だが。
○ウォーター・ストーン・マッド・カッター
細かい土の粒が混ざった高圧水流で敵を切り裂く、土と水の混合上位魔法。
砂を混ぜることで、並の竜の鱗さえも切り裂く威力を得た魔法。しかし、敵との距離が離れすぎると勢いを失い、ただの泥水になるが。
現実世界でもウォーターカッターにガーネットの粉末などを混ぜて、切れ味を増す技術が存在する。
○スペース・ウィンド・カット・ラッシュ
空間を切り裂く風の群れを前方に飛ばす、空間と風の混合上位魔法。
風属性が混ざってる割には、進む速度がお世辞にも早いとは言いにくいが、防御を無視する性質のあるその風は、どんなに硬い対象をも無惨に八つ裂きにする。
外見は線香の煙で可視化した空気砲をイメージすると、多少わかりやすいかもしれない。あれを鋭い感じにして、色が透明な陽炎っぽくしたバージョン。的な。
○ダーク・スペース・ショック・ウェーブ
全てを弾き飛ばす黒い衝撃波を放つ、闇と空間の混合上位魔法。
良くも悪くも効果は周囲のものを弾き飛ばすだけ。だが、どんなに重いものでも弾き飛ばせるのが特徴で、守りや仕切り直しには優秀。
壁際で連続使用すると、魔力消費は激しいものの何度も壁に叩きつけてハメゲーできる糞技。
○スペース・ワープ・ショート・ジャンプ
短距離の空間転移が行える上位空間魔法。視認できる範囲には大体飛べるが、遠くに見える山とか海へは流石に飛べない。
発動から指定した場所へ飛ぶまで、地味にタイムラグがあるので、ド○ゴンボー○の戦闘ような瞬間移動の使い方は難しい。初見殺し。
新たなスキルを本能に従って放ち、魔王の右腕を千切ることに成功するも、この技は隙が大きく避け易いせいで、致命傷を与えることができない。
そんな状態で理性を取り戻した俺が取った行動は、そう、人任せ。
〈空裂の魔眼〉は、黒騎士でさえ削る事しかできなかった赤い結晶を空間ごと捻り粉々にして、黒騎士が余裕で抜けられる程の穴を開けることに成功した。
赤い結晶から解放された黒騎士は、目にも止まらぬ速さで魔王に詰め寄り大剣を振るう。
魔王も咄嗟に何処からか細身の剣を取り出し対応するも、瞬きをした瞬間にはキンキンッと金属音が鳴り、魔王の剣が3等分になっていた。
焦った魔王が剣を捨て、死屍累々と倒れている生徒の1人の頭を掴み、人質作戦を決行し始めた。
「クァッハッハ!子供の命が惜しければ、武器を捨てるのだな!!」
それを見た黒騎士は大剣を床に深く刺し、両手を上げる。卑怯過ぎるぞ魔王...!
魔王が、抵抗できない黒騎士に魔法で攻撃しようと魔力を高めている。
魔王は俺の方も警戒しているのか、チラチラ見ているし下手に攻撃してもバレて生徒を殺されては困る。
黒騎士が俺に「心配するな。」と声をかけてくれた。だが、大丈夫だろうか...
どうすることもできないまま魔王が魔法の準備を終え、巨大な黒い霧の様なものを黒騎士へ放つ。
黒騎士はその魔法を受ける...と思いきや風の魔法を使い、軽く受け流している。
それを見て苛立ったのか、魔王は掴んでいる生徒を地面に叩きつけようと構える...それと同時に同時に魔王の足元から薄緑色の液体が吹き出し、生徒を掴んでいた魔王の左腕に巻き付いて、ジュージューという音と共に煙を立てながら溶かし始めた!?
なんだあれ!?スライムか!?
魔王もかなり取り乱し、左手に掴んでいた生徒を放り出して、腕を溶かされる痛みに声を上げ、腕を思いっきり振り回している。
地面から生えた薄緑色のスライムは、振り回される魔王の腕に力で引っこ抜かれ、その全貌を現した。
液体状の身体は一般家庭のお風呂6杯分近い質量を持ち、薄緑色の身体の中には、大体ヤカンくらいの大きさの...乳白色の魔石のような玉が5つ漂っている。
あの乳白色、見たことあるような...あ!黒騎士の新しい大剣に埋め込まれてたやつか!
ふと黒騎士の大剣が刺さっていた場所を見ると、そこには刀身が真ん中から真っ二つに割れ、その他のパーツもバラバラに分解された大剣だった物が散乱している。
戸惑う俺に、黒騎士があのスライムはあの大剣に住んでて、俺達の味方だということを教えてくれた。
正確には魔剣とか、悪魔とか契約とかなんか言ってたけどようわからん。
黒騎士と軽く話していると、スライムが魔王の左腕を溶かし切り、人質に取られていた生徒を乗せて黒騎士の元に這いずるように戻ってくる。
ポヨンポヨンと跳ねてくれたら可愛かったかもしれないが、ドロドロの見た目も相まって這いずる様は、少し禍々しいな...
スライムは生徒を置いた後、バラバラになった大剣のパーツを広い集めて見事に組み立て、黒騎士の元へと戻る。
剣の状態でどうやって移動してるかって?刀身を半開きにして、そこから薄緑色の液体を出して移動してる。例えるとカタツムリみたいな感じだな...剣ツムリ的な?
両腕を失った魔王。少しの間、呆然としていたようだが...突然大声で笑いだした。
「クァハハハハ!この私がここまで追い詰められるとはなっ!!黒騎士とやら、その魔剣が貴様の奥の手か。ならば私も本気を出さねばなるまいな!!」
そう言った魔王は、身体をボコボコと膨れ上がらせる。
警戒した黒騎士が氷の魔法を飛ばして攻撃するも、鋭い氷は肉塊のようになった魔王に飲み込まれるように消えていった。
それを見た黒騎士は舌打ちをし、俺に緑色のポーションを掛けて生徒の回収を頼んできた。ちょいと鑑定失礼。
〈ライフポーション(上級)〉
体力を最大HPの70%くらい回復する回復薬。高品質の薬草と、その他高級な植物を調合して作られている。
ポーションのお陰で、魔王にザックリやられた胸部の傷も逆再生するようにみるみると塞がる。ありがとう、いい薬です。
傷が殆ど治った俺は低空飛行し、黒騎士の言う通りに倒れている大勢の生徒を回収し、このボス部屋の外まで急いで運び出す。
俺が生徒を回収している間にもグチュグチュと変形し続けるキモい魔王に対して、黒騎士はスライムを纏った大剣で切り付け始めていた。
何かの形を成そうとしている魔王と、それを止めようと何回も切り付ける黒騎士。
切り付けた場所が切り裂かれ、纏ったスライムが傷口を溶かしている。血が飛び散っている様子を見ると、ダメージはありそうだ。
てか、敵の変身中に攻撃しまくってるけど、これは大丈夫なのだろうか?戦隊物のファンとかに怒られないか?
やはり攻撃されるのが鬱陶しかったのか、魔王が3m近い巨大な右腕のみの異形と成り、黒騎士を追い払うように凪払う。
それを真っ正面から大剣で受け止める黒騎士。そこで俺は、腕になった魔王目掛けて〈眠羽〉を飛ばしてみる。
...数本しか刺さらなかった、肉々しい柔らかそうな質感の見た目に反して結構固いようだ。
黒騎士が手の形をした魔王の指を切り飛ばす、指を切られた魔王は下がろうとするも、それを上回るスピードで追撃しに向かう黒騎士。
だが、切り落とされた指が芋虫のように動き、それぞれが黒い魔法の玉を放ち攻撃。
黒騎士はそれを避けたり、大剣で弾いたりして対応し、足止めされてしまっている。
距離を取ることに成功した魔王が変形し、身長が2m越える大きさのオーガに近い姿になった。
ただ、オーガと違う所があり、背中には蝙蝠に近い羽が生え、腰からは悪魔のような尻尾、額には角が1本ではなく2本、しかも上向きに生えている。
変身を終えた魔王が声高らかに笑い、強力そうな魔法を連発する。
地面から吹き出す溶岩、黒い冷気、濁流の水刃、空間を切り裂く風...どれも全く知らないしヤバそうな魔法が、自らの元指だった肉片をも飲み込みながら襲いかかってくる。
だが、我らが黒騎士様もヤバい。迫り来る溶岩を凍らせて蹴りで砕き、剣から黒い衝撃波を放つことで、溶岩の破片と黒い冷気を吹き飛ばす。
濁った水の刃も凍らせてから、殴って砕いている。
だが問題なのは、次に襲い来る空間を切り裂く風だ。あれは物理的にどうこうできる物ではないし、凍らせることは不可能だろう。
俺の空裂の魔眼なら勢いを弱めるくらいならできそうだが...援護すべきか悩んでいると、空間を切り裂きながら迫る風へ黒騎士が自ら突っ込んで行った!?
空間を刻み、歪ませながら迫る風に飲み込まれる黒騎士。
自分で空裂の魔眼を使用したからわかるが、アレはレベルとか防御力でなんとかなる代物ではない。
だが、あれ程の強さを持つ黒騎士が、無策でやられるとは思えない。
固唾を飲むような緊張感で見守る俺、勝ちを確信したかのように再び高笑いする魔王。
空間を切り裂く風が通りすぎ、後方のダンジョンの壁すら抉り取られ、跡形も無くなってしまった。
黒騎士の姿も無い。
最悪の状況かもしれない、キィナだけでも抱えて逃げるしか...と俺は後退りを始めた。
そんな俺を魔王がニヤケながら見てくる。
俺が恐怖を感じたその瞬間、魔王の後方から突然黒騎士が現れ、魔王の首を大剣で切り飛ばした!?
更に黒騎士は大剣を振るい、切り飛ばした頭を真っ二つにし、瞬く間に胴体も5回くらいの輪切りにしてしまった。
突然の展開に訳が分からないが、取り敢えず助かったことに安堵し、体の力が抜ける。
なぜ無事なのかだとか、一体どうやって魔王の後方に現れたのかとか、聞きたいことはあったが俺は鳥。
言葉は多分通じない...黒騎士なら通じそうな気もするが、今はそれどころじゃないだろう。
なぜなら切り落とされて真っ二つにされた魔王の首が喋りだしたからだ。
ボロボロの状態だから何を言っているのか聞き取りにくいが、内容は恨みつらみのようで、黒騎士は溜め息をついた後に魔王の真っ二つの頭部を凍らせて、踏み砕いた。
どうやら、今度こそ魔王は死んだ、らしい。
_____________________
○ダーク・フォッグ・ソウル・コントロール
闇の上位魔法の一種。霧に包まれた相手は、自らの意に従うようになると言われているが、人間で使える者がいない為、詳細は不明。
○フレイム・ストーン・ウェーブ・ラヴァ
溶岩の波で敵を飲み込む、火と岩の混合上位魔法。
並の人間は近づくだけで皮膚が焼けただれ、触れれば瞬く間に溶かされてしまう。並の人間であれば、だが。
○ダーク・アイス・コールドミスト・コントロール
闇の冷気で他者を包み込む、闇と氷の混合上位魔法。
冷気で体の自由を奪い、闇の力で操ることができる魔法で、強力な相手でも多少動きを封じる程度は可能。相手を包み込めれば、だが。
○ウォーター・ストーン・マッド・カッター
細かい土の粒が混ざった高圧水流で敵を切り裂く、土と水の混合上位魔法。
砂を混ぜることで、並の竜の鱗さえも切り裂く威力を得た魔法。しかし、敵との距離が離れすぎると勢いを失い、ただの泥水になるが。
現実世界でもウォーターカッターにガーネットの粉末などを混ぜて、切れ味を増す技術が存在する。
○スペース・ウィンド・カット・ラッシュ
空間を切り裂く風の群れを前方に飛ばす、空間と風の混合上位魔法。
風属性が混ざってる割には、進む速度がお世辞にも早いとは言いにくいが、防御を無視する性質のあるその風は、どんなに硬い対象をも無惨に八つ裂きにする。
外見は線香の煙で可視化した空気砲をイメージすると、多少わかりやすいかもしれない。あれを鋭い感じにして、色が透明な陽炎っぽくしたバージョン。的な。
○ダーク・スペース・ショック・ウェーブ
全てを弾き飛ばす黒い衝撃波を放つ、闇と空間の混合上位魔法。
良くも悪くも効果は周囲のものを弾き飛ばすだけ。だが、どんなに重いものでも弾き飛ばせるのが特徴で、守りや仕切り直しには優秀。
壁際で連続使用すると、魔力消費は激しいものの何度も壁に叩きつけてハメゲーできる糞技。
○スペース・ワープ・ショート・ジャンプ
短距離の空間転移が行える上位空間魔法。視認できる範囲には大体飛べるが、遠くに見える山とか海へは流石に飛べない。
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