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エリスの場合
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エリスは、非常に凡庸な冒険者であった。
風属性の能力に長け、得意技はウィンドカッター。
16歳で成人し冒険者になって以降、気楽に放浪の旅を続けていた。
そんな彼女が、ギルドの紹介で出現したばかりの洞窟に足を踏み入れたのが22歳の頃。
それがギルドに残る最後の記録になった。
「何も情報なかったけど、レベル低くて良かったなぁ。ちょっと疲れたけど、向こうにおっきい扉見えるし、そこがボス部屋でしょ。一回町に戻るなんて面倒だし、ボスドロップを他の奴に取られるなんて嫌だもん。ちょっと休んでから行ってみよ!」
エリスが舞い上がるのも無理はない。何せこの洞窟に生息する魔物たちの平均レベルは9。レベル13のエリスにとって苦戦するほどの敵ではなく、丁度いい経験値でしか無かった。
そんなエリスは、少しの時間を掛けてこの洞窟の主が住む部屋の前まで来ていた。
重い音を上げて、巨大な扉が開く。気合を入れていたエリスは、その中の様子に拍子抜けしてしまった。
------それが、最大の罠であるとも知らずに。
荘厳な雰囲気を醸し出す部屋の中に、座り込む少女が一人。
ここが魔族の作った洞窟だということを考慮するならば、それが魔族だということは推して知るべきものだが、その前提が無ければただ洞窟に迷い込んだ無力の子どもだと思っても仕方のないことだろう。
もちろん、エリスも冒険者になって数年。何も考えず謎の存在に近寄るほどの知能では無かった。
警戒しながら、少女に近づくエリス。
その行動は、冒険者として至極当然な、「間合いを詰める」ものに他ならなかった。
刹那、少女が恐る恐る接近するエリスにその体を向ける。
青白い肌に、紺碧の双眸、そして角ばった鼻。
どこか幼げな雰囲気を醸し出す少女の姿は、明らかにエリスの知る魔族の特徴と合致していた。
「やっぱり魔物か!子どもを倒すのはちょっと心苦しいけど、恨まないでよね!」
そんな掛け声とともに、エリスは得意技のウィンドカッターを繰り出す。
周囲の空気が圧縮された大きな刃が少女に向かう。
一撃でもしっかり食らってしまえば、その幼い体が無惨な姿になってしまいそうなほど、強く圧縮された空気の刃。
ただ少女の顔には一切の焦りも見えず、逆にニヤリと笑うだけ。
その不気味な笑みの意味を、エリスはすぐに知ることになる。
「残念だけど、おねえちゃんは私には勝てないよ。」
今にも空気の刃が少女を切り裂こうという時、その刃は突如としてその場に静止した。
否、”止められてしまった”のだ。
少女……〈魔女〉リリスの手によって。
自慢の最高火力技が、いとも容易く封じられてしまった。
その事実は、洞窟内の魔物を打ち倒してきたエリスにとって、大きな衝撃だった。
エリスの自信が、一瞬にして恐怖へとすり替わる。
エリスは即座に、退避のスキルを放った……ハズだった。
「おねえちゃん、だめだよ?逃げようなんて。こんなおいしそうな獲物、逃すわけないんだから。」
戦慄するエリス。いつの間にか、微笑む少女に距離を詰められていた。
こんなところで、倒れてしまうなんて。
家族との旅行、冒険者として歩みだした日、数々の思い出が彼女の頭を駆け巡る。
今にも途切れそうな意識の中、エリスは少女から発される最後の魔法を聞いた。
「レベルドレイン」
瞬間、体中から力が抜けていく感覚がエリスを襲う。
自分がまだ生きていることに気付くのは、手遅れになった後だった。
恐怖に塗れ、苦しむエリスの体が淡い光に包まれていく。
レベルドレイン。その魔術は名の通り、エリスの体内に蓄積された経験値を奪っていく。
冒険者になってから数年、数々の魔物を倒す中で成長し、覚えてきたスキルは彼女の頭から消える。
攻撃する術も、逃げる術も残されてはいない。
ただ、エリスの変化はそれだけに留まらなかった。
風を操る冒険者として身軽に整えられた体から、必要な分だけ付けていた筋肉が削ぎ落され、柔らかな脂肪に置き換わる。
冒険者仲間から羨ましがられていたモデル体型は見る影もなく、彼女の体は努力を逆行するように丸みを帯びていく。
それまで紡いできた時間すら失われるように、エリスの体は小さく、幼く変化していた。
強力な冒険者すら、一瞬で無力に変える魔術、レベルドレイン。
これこそが、〈魔女〉リリスの神髄。
相手の年齢すら減少させながら、自身は魔力を駆使してその体格を保ちながら、対象が幼く、無力な姿に変化していく様子を特等席で眺め続ける。
〈冒険者〉エリスは運の悪いことに、この魔女にとって初の獲物となってしまった。
王都から離れた、辺境の村。
そこに、一人の乳児が捨て置かれていた。
発見した村娘はその子を抱き、親を探し回るも、もちろん名乗り出ることは無い。
それもそのはず。その子どもは、村で生まれた子どもではないのだから。
その晩、村では村長を中心に話し合いが持たれ、乳児は村で育てること、発見した娘を母親とすることが決められた。
------これが、リリスに敗北した〈冒険者〉エリスの末路である。
『レベルドレイン』によって、経験値を奪われたエリスだったが、彼女の身体の変化は全ての経験値が奪われた後も続いていた。
冒険を始めた時期の年齢はとうに過ぎ、その身体は少女、幼女と成長を遡っていく。
変化が止まったのは、自由に身動きの取れない乳児となった時。
リリスはそんな姿まで若返ったエリスを見つめ、無慈悲に催眠魔法を掛ける。
エリスは本当の赤子のように、微笑を浮かべて夢の世界へと落ちていった。
リリスはそんなエリスを抱え、自身の城たる洞窟を後にする。
そして、辺境の村に着くまでの間、身に着けたおむつとおしゃぶりを呪いの装備として固定させた。
ただ、これらは全く外せないというわけではなく、食事、交換のために外せるのだが、つまりはこれらのアイテムを卒業できない体にされてしまったということだ。
そして、エリスは眠ったまま、とある村に捨て置かれたわけであるが、この村には、この呪いを解くほどの強力な聖職者は居ない。
この事実は、王都から遠く離れた何も無い村で、助けを求めることもままならない体のまま、
ただ救世主の登場を待つことしか出来ないということを意味する。
〈冒険者〉エリスが、救われる日は訪れるのだろうか。
風属性の能力に長け、得意技はウィンドカッター。
16歳で成人し冒険者になって以降、気楽に放浪の旅を続けていた。
そんな彼女が、ギルドの紹介で出現したばかりの洞窟に足を踏み入れたのが22歳の頃。
それがギルドに残る最後の記録になった。
「何も情報なかったけど、レベル低くて良かったなぁ。ちょっと疲れたけど、向こうにおっきい扉見えるし、そこがボス部屋でしょ。一回町に戻るなんて面倒だし、ボスドロップを他の奴に取られるなんて嫌だもん。ちょっと休んでから行ってみよ!」
エリスが舞い上がるのも無理はない。何せこの洞窟に生息する魔物たちの平均レベルは9。レベル13のエリスにとって苦戦するほどの敵ではなく、丁度いい経験値でしか無かった。
そんなエリスは、少しの時間を掛けてこの洞窟の主が住む部屋の前まで来ていた。
重い音を上げて、巨大な扉が開く。気合を入れていたエリスは、その中の様子に拍子抜けしてしまった。
------それが、最大の罠であるとも知らずに。
荘厳な雰囲気を醸し出す部屋の中に、座り込む少女が一人。
ここが魔族の作った洞窟だということを考慮するならば、それが魔族だということは推して知るべきものだが、その前提が無ければただ洞窟に迷い込んだ無力の子どもだと思っても仕方のないことだろう。
もちろん、エリスも冒険者になって数年。何も考えず謎の存在に近寄るほどの知能では無かった。
警戒しながら、少女に近づくエリス。
その行動は、冒険者として至極当然な、「間合いを詰める」ものに他ならなかった。
刹那、少女が恐る恐る接近するエリスにその体を向ける。
青白い肌に、紺碧の双眸、そして角ばった鼻。
どこか幼げな雰囲気を醸し出す少女の姿は、明らかにエリスの知る魔族の特徴と合致していた。
「やっぱり魔物か!子どもを倒すのはちょっと心苦しいけど、恨まないでよね!」
そんな掛け声とともに、エリスは得意技のウィンドカッターを繰り出す。
周囲の空気が圧縮された大きな刃が少女に向かう。
一撃でもしっかり食らってしまえば、その幼い体が無惨な姿になってしまいそうなほど、強く圧縮された空気の刃。
ただ少女の顔には一切の焦りも見えず、逆にニヤリと笑うだけ。
その不気味な笑みの意味を、エリスはすぐに知ることになる。
「残念だけど、おねえちゃんは私には勝てないよ。」
今にも空気の刃が少女を切り裂こうという時、その刃は突如としてその場に静止した。
否、”止められてしまった”のだ。
少女……〈魔女〉リリスの手によって。
自慢の最高火力技が、いとも容易く封じられてしまった。
その事実は、洞窟内の魔物を打ち倒してきたエリスにとって、大きな衝撃だった。
エリスの自信が、一瞬にして恐怖へとすり替わる。
エリスは即座に、退避のスキルを放った……ハズだった。
「おねえちゃん、だめだよ?逃げようなんて。こんなおいしそうな獲物、逃すわけないんだから。」
戦慄するエリス。いつの間にか、微笑む少女に距離を詰められていた。
こんなところで、倒れてしまうなんて。
家族との旅行、冒険者として歩みだした日、数々の思い出が彼女の頭を駆け巡る。
今にも途切れそうな意識の中、エリスは少女から発される最後の魔法を聞いた。
「レベルドレイン」
瞬間、体中から力が抜けていく感覚がエリスを襲う。
自分がまだ生きていることに気付くのは、手遅れになった後だった。
恐怖に塗れ、苦しむエリスの体が淡い光に包まれていく。
レベルドレイン。その魔術は名の通り、エリスの体内に蓄積された経験値を奪っていく。
冒険者になってから数年、数々の魔物を倒す中で成長し、覚えてきたスキルは彼女の頭から消える。
攻撃する術も、逃げる術も残されてはいない。
ただ、エリスの変化はそれだけに留まらなかった。
風を操る冒険者として身軽に整えられた体から、必要な分だけ付けていた筋肉が削ぎ落され、柔らかな脂肪に置き換わる。
冒険者仲間から羨ましがられていたモデル体型は見る影もなく、彼女の体は努力を逆行するように丸みを帯びていく。
それまで紡いできた時間すら失われるように、エリスの体は小さく、幼く変化していた。
強力な冒険者すら、一瞬で無力に変える魔術、レベルドレイン。
これこそが、〈魔女〉リリスの神髄。
相手の年齢すら減少させながら、自身は魔力を駆使してその体格を保ちながら、対象が幼く、無力な姿に変化していく様子を特等席で眺め続ける。
〈冒険者〉エリスは運の悪いことに、この魔女にとって初の獲物となってしまった。
王都から離れた、辺境の村。
そこに、一人の乳児が捨て置かれていた。
発見した村娘はその子を抱き、親を探し回るも、もちろん名乗り出ることは無い。
それもそのはず。その子どもは、村で生まれた子どもではないのだから。
その晩、村では村長を中心に話し合いが持たれ、乳児は村で育てること、発見した娘を母親とすることが決められた。
------これが、リリスに敗北した〈冒険者〉エリスの末路である。
『レベルドレイン』によって、経験値を奪われたエリスだったが、彼女の身体の変化は全ての経験値が奪われた後も続いていた。
冒険を始めた時期の年齢はとうに過ぎ、その身体は少女、幼女と成長を遡っていく。
変化が止まったのは、自由に身動きの取れない乳児となった時。
リリスはそんな姿まで若返ったエリスを見つめ、無慈悲に催眠魔法を掛ける。
エリスは本当の赤子のように、微笑を浮かべて夢の世界へと落ちていった。
リリスはそんなエリスを抱え、自身の城たる洞窟を後にする。
そして、辺境の村に着くまでの間、身に着けたおむつとおしゃぶりを呪いの装備として固定させた。
ただ、これらは全く外せないというわけではなく、食事、交換のために外せるのだが、つまりはこれらのアイテムを卒業できない体にされてしまったということだ。
そして、エリスは眠ったまま、とある村に捨て置かれたわけであるが、この村には、この呪いを解くほどの強力な聖職者は居ない。
この事実は、王都から遠く離れた何も無い村で、助けを求めることもままならない体のまま、
ただ救世主の登場を待つことしか出来ないということを意味する。
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