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カイランの場合
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------一度立ち入ってしまえば、帰ってくることはできない。
冒険者の間で、そう噂される洞窟があった。
その洞窟から魔物が出てくることは無いから、一般人に被害は無いことが良い点なのだが、そのせいで洞窟の出現から一向に情報が出回ることなく、帰還してきた冒険者が居ないため、その内部は誰も知らない。
王国もこの洞窟を認知してはいるものの、害が無いため攻略はどんどん後回しにされている。そんな間に、怖いもの知らずだったり、そもそも噂を知らなかったりする冒険者たちがこの洞窟に挑んでは、文字通り帰らぬ人となっている。
そうして恐れられている洞窟……その最奥では。
「そろそろこの子たちもどこか預けに行こっかな~?」
一人の童女が、考えを巡らせていた。
〈魔女〉リリス。秘術「レベルドレイン」を操る魔女であり、冒険者行方不明事件の元凶でもある。
初心者も多く通る森のはずれに洞窟を作り上げて早三年。
これまでに数十人の冒険者を迎えてきたが、当然ながら彼女を倒した者はおらず、逃走した者も居ない。
彼女に挑んだ冒険者は皆、その秘術「レベルドレイン」の餌食となり、その副次効果である年齢低下によって軒並み幼児以下の子どもにされていった。
リリスは、当初面白半分で子どもにした冒険者たちを辺境の村々に送り届けていたのだが、いつからかその作業を面倒くさがるようになり、遂には自身の戦闘室の奥に洞窟を広げ、その空間に元冒険者たちを放った。
そして、そこでは彼女の友人であり子どもの面倒を見ることが得意な魔族、乳魔が数人働いている。
そんな幼い監獄……甘獄に入れられた元冒険者たちは、その異様な空間に支配され、数日で堕落を始める。
抵抗するだけ無駄だと、甘やかされるだけの生活は楽で良いと、気付いてしまうのだ。
ただ、その中でただ一人、誇りを捨てなかった者が居た。
カイラン・ フェールズ。
かつては王国騎士団に所属し、最年少で少尉の称号を得るなど、そこそこに出世していた実力者だ。
そんな実力者だったカイランだが、結婚を機に妻の故郷に移るため退団。
王都からは少し離れた町で、兼業冒険者として活動していた。
王国騎士時代の蓄えも十分で、愛する妻と共に余裕のある暮らしを楽しむ日々。
冒険者業はトレーニングのついで。そう思っていた彼は、ギルドで熱心に情報を集めるということなどはせず、災厄の待つ洞窟へ足を踏み入れてしまった。
中の魔族たちのレベルでは、カイランに傷一つ付けることすらかなわない。
「これじゃあトレーニングにならないな。」
元々は将来有望だった騎士だったのだから、こう思うのも仕方ない。
だがそんな彼の考えは、完全に打ち砕かれることになる。
「おじさんちょっと強かったけど、リリスの方が上だったみたいだね。」
そう言って微笑む童女の顔は、今や見上げなければ拝めない。
〈魔女〉リリスの強さは、王国の少尉だったカイランを以てしても凌ぐことは不可能だった。
それもそのはずである。
これまでリリスが相対してきた冒険者は二十を超え、当然ながら全戦全勝。
冒険者たちが稼いできた経験値を全て奪ったリリスは、歴戦の猛者ですら一人で挑むには厳しい相手になっていたのだ。
「こわかったおじさんも、こうやって赤ちゃんにしちゃえば可愛くなるって、やっぱりリリス天才かも!」
そんな独り言を口にしながら、リリスはカイランを軽々と抱き上げる。
彼女はこのようにして、数多の冒険者をその身の糧とし、洞窟の奥に設けた子ども部屋へと収容してきたというわけだ。
そんな子ども部屋は、当然ながら異質な空間で。
子どもは全て元冒険者で、リリスに敗れたものばかり。
全員統一のおむつは丸見えで、固定されたおしゃぶりのせいで言語的コミュニケーションは絶望的。
極めつけは、室内に特殊効果が設定されているということ。
洞窟の主、リリスによって付与されたそれは、彼女が愉しむためのものでしかない。
その名も、“幼期輪廻”。対象を誕生後5年までの姿で成長、退行させる秘術だ。
これを、リリスは部屋全体に使用した。
つまり、元冒険者たちは皆5歳までの間で成長と退行を繰り返す玩具となったというわけだ。当然、リリスや乳魔たちはこれを無効化するアクセサリーを身に着けている。
ただ一つ問題がある。
元冒険者たちは前述の通り、おむつとおしゃぶりを常時着用している。
それは、彼らの年齢が何歳であろうと変わらない。新生児の体でも、5歳の体でも、トイレは使えないし、言葉を発することも出来ないのだ。
成長する者に憧れ、退行する者に憐れむのも一瞬。
自信もその輪廻に囚われているのだと、成長しても何も変わらないのだと、悟ってしまえば自然と他者への興味も薄れていく。
そんな代わり映えの無い子ども部屋に、新たな刺激が投入される。
諦めの悪い男、カイランが収容されて約1年。
たまに子どもたちの様子を確認しに訪れる洞窟の主、リリスの新たな愉しみが始まったのである。
重い空気の漂う子ども部屋に、突如として明るい声が響き渡る。
子どもたちは皆、声のした方……唯一の扉がある場所に注目した。
そこに立っていたのは、洞窟の主リリスと、幼い見た目の彼女よりも更に小柄な童女が数人。
「赤ちゃんのみんなに、新しいおともだちを紹介するね!」
高らかに宣言するリリス。元冒険者は「新入りか」と一気に興味を失くしていた。
ただ、次に紡がれたリリスの言葉は彼らに衝撃を与えるもので。
「この子たちは、リリスも生活してたサキュバスの森で、今お勉強してるベビーサキュバスちゃん!サキュバスの長老からお願いされて、何日かに1回連れてくることになったの!
ただ、ベビーって言っても皆おはなし上手だし、この部屋の赤ちゃんたちよりはおねえちゃんかな?
ってなわけで今日は、乳魔ママたちだけじゃなくて、おねえちゃんたちにいっぱい遊んでもらってね!」
リリスが言い終えるや否や、子どもたちのもとに走り出すベビーサキュバスたち。
話しかけられないようにと強く警戒し、体を背けたカイランだったが、その姿は一人のベビーサキュバスに発見されていた。
「はじめまして!あたしメルヴィナっていうの!あなたは?」
一直線にカイランめがけて寄ってきたベビーサキュバス、メルヴィナ。
彼女に目を付けられていたことが、不運だったと言って良い。
メルヴィナに詰め寄られるカイラン。
警戒を最大限に引き上げている彼は、意地でも質問に答える気は無かったし、そもそも口がおしゃぶりで塞がれている関係上、答えることは不可能だった。
必死に無視を決め込むカイランと、諦めず構い続けるメルヴィナ。
この戦いに勝利したのは、メルヴィナであった。
近くの乳魔からカイランの情報を聞きだしたメルヴィナは様々な手段でカイランを誘惑するも、悉く失敗。最後は半ば強引に頭をつかみ、自身の方を向かせることに成功した。
「カイランくんっていうんでしょ?メルヴィナと一緒に遊ぼうよ!」
本来ならば娘でもおかしくないほどの体格の子どもに、子ども扱いされているという現実。
強引だとしても、サキュバスのアプローチに負けてしまったという事実。
それに、抵抗しようと考えてしまったことが、破滅への引き金だったのかもしれない。
刹那、カイランを軽い違和感が襲った。
ぼやける視界、火照っていく体、おしゃぶりをしているのに自然と開く口。
彼自身は理解できなかったが、傍目から見るとその現象は一目瞭然で。
この瞬間、元王国騎士少尉という華々しい過去を持つ男カイランは、生後数年のベビーサキュバス、メルヴィナに“魅了”させられてしまった。
「カイランちゃん大丈夫……って、あら?」
カイランの異変を最初に察知したのは、先ほどまでメルヴィナにカイランの情報を与えていた乳魔であった。
典型的な幼児体型の膨らんだ腹部に、薄く浮かび上がる淫紋。
それにいち早く気付けたのは、毎日おむつ替えをしていたからであろう。
自然と視線が下にもいっていたのが原因だと言える。
このことは、すぐにリリスに報告された。
たとえ自分より幼い体のカイラン相手とはいえ、十分な力も無く、自由に力を制御できないはずのベビーサキュバス、メルヴィナが成功させた、サキュバスの基本スキル、魅了。
それは対象者の使用者に対する好意を最高に引き上げ、操り人形にしてしまう基本にして最強のスキルである。
サキュバスであれば誰でも使えるスキルであるものの、その成功率は低いため中々使用されない。
もちろん、相手が自身より弱ければ弱いほど成功率は上昇するが、だからといって生後数年、まだスキルの使い方すら知らないメルヴィナが成功させたというのは大事なのだ。
報告を受けたリリスは、メルヴィナとカイランを呼び出す。
それは、これからの生活に関する話し合いだったのだが、当然ながらカイランは決定を聞いていることしか出来ない。
こうして、カイランはリリスの手から離れ、メルヴィナに引き取られることとなった。
「リルナ、良い子ね。ご褒美に、おむつにおもらしして良いわよ。」
元王国騎士団少尉、カイラン・フェールズが行方不明になってから15年。
残された妻の捜索願も残念ながら実らず、彼は正式に死亡扱いとなった。
ただ、それは厳密には正解ではない。
実は、彼はまだ生きていたのだ。
つい先日新たに行動を始めたエリートサキュバス、メルヴィナの使い魔として。
10年前、カイランは当時ベビーサキュバスだったメルヴィナに魅了され、〈魔女〉リリスのもとを離れた。
その際、メルヴィナがリリスに求めたこと……それは、カイランの性別変更と、年齢固定だった。
それを承諾したリリスはカイランの体を女児のものに作り変え、メルヴィナの要望通り1歳半頃の身体から成長しないように固定した。
新たに生まれ変わったメルヴィナの操り人形、リルナはどれだけ月日が経っても幼い姿のまま、メルヴィナにお世話され続ける。
リルナの災難は、これだけでは留まらない。
メルヴィナの成長に伴い、造り変えられる脳の構造。
現在では、撫でられるだけで多幸感に包まれ、おむつへのおもらしの許可を最大のご褒美として認識させられていた。
そんな〈使い魔〉リルナの中に、カイランの魂は宿っている。
ただ、彼の意思は表に出ることなく、リルナとしてメルヴィナに尽くす日々。
過去の栄光も既に忘れかけ、残っているのは自分が人間の男だったという記憶だけ。
それだけだが、リルナとして過ごす日々は彼の魂を傷つけるのに十分すぎた。
完全に無力な体で、メルヴィナにお世話される日々。
その無力さを露わにし、初心冒険者を引き込む罠として使われる。
最初は拒絶していたメルヴィナの愛撫を待ち望み、気持ち悪いはずのおもらしが最高のご褒美。
そこに、王国騎士の誇りなど残っているわけは無い。
エリートサキュバス、メルヴィナの使い魔、リルナ。
その姿を存分に活かした冒険者への誘惑は、後世に語り継がれる悪評となって轟いている。
冒険者の間で、そう噂される洞窟があった。
その洞窟から魔物が出てくることは無いから、一般人に被害は無いことが良い点なのだが、そのせいで洞窟の出現から一向に情報が出回ることなく、帰還してきた冒険者が居ないため、その内部は誰も知らない。
王国もこの洞窟を認知してはいるものの、害が無いため攻略はどんどん後回しにされている。そんな間に、怖いもの知らずだったり、そもそも噂を知らなかったりする冒険者たちがこの洞窟に挑んでは、文字通り帰らぬ人となっている。
そうして恐れられている洞窟……その最奥では。
「そろそろこの子たちもどこか預けに行こっかな~?」
一人の童女が、考えを巡らせていた。
〈魔女〉リリス。秘術「レベルドレイン」を操る魔女であり、冒険者行方不明事件の元凶でもある。
初心者も多く通る森のはずれに洞窟を作り上げて早三年。
これまでに数十人の冒険者を迎えてきたが、当然ながら彼女を倒した者はおらず、逃走した者も居ない。
彼女に挑んだ冒険者は皆、その秘術「レベルドレイン」の餌食となり、その副次効果である年齢低下によって軒並み幼児以下の子どもにされていった。
リリスは、当初面白半分で子どもにした冒険者たちを辺境の村々に送り届けていたのだが、いつからかその作業を面倒くさがるようになり、遂には自身の戦闘室の奥に洞窟を広げ、その空間に元冒険者たちを放った。
そして、そこでは彼女の友人であり子どもの面倒を見ることが得意な魔族、乳魔が数人働いている。
そんな幼い監獄……甘獄に入れられた元冒険者たちは、その異様な空間に支配され、数日で堕落を始める。
抵抗するだけ無駄だと、甘やかされるだけの生活は楽で良いと、気付いてしまうのだ。
ただ、その中でただ一人、誇りを捨てなかった者が居た。
カイラン・ フェールズ。
かつては王国騎士団に所属し、最年少で少尉の称号を得るなど、そこそこに出世していた実力者だ。
そんな実力者だったカイランだが、結婚を機に妻の故郷に移るため退団。
王都からは少し離れた町で、兼業冒険者として活動していた。
王国騎士時代の蓄えも十分で、愛する妻と共に余裕のある暮らしを楽しむ日々。
冒険者業はトレーニングのついで。そう思っていた彼は、ギルドで熱心に情報を集めるということなどはせず、災厄の待つ洞窟へ足を踏み入れてしまった。
中の魔族たちのレベルでは、カイランに傷一つ付けることすらかなわない。
「これじゃあトレーニングにならないな。」
元々は将来有望だった騎士だったのだから、こう思うのも仕方ない。
だがそんな彼の考えは、完全に打ち砕かれることになる。
「おじさんちょっと強かったけど、リリスの方が上だったみたいだね。」
そう言って微笑む童女の顔は、今や見上げなければ拝めない。
〈魔女〉リリスの強さは、王国の少尉だったカイランを以てしても凌ぐことは不可能だった。
それもそのはずである。
これまでリリスが相対してきた冒険者は二十を超え、当然ながら全戦全勝。
冒険者たちが稼いできた経験値を全て奪ったリリスは、歴戦の猛者ですら一人で挑むには厳しい相手になっていたのだ。
「こわかったおじさんも、こうやって赤ちゃんにしちゃえば可愛くなるって、やっぱりリリス天才かも!」
そんな独り言を口にしながら、リリスはカイランを軽々と抱き上げる。
彼女はこのようにして、数多の冒険者をその身の糧とし、洞窟の奥に設けた子ども部屋へと収容してきたというわけだ。
そんな子ども部屋は、当然ながら異質な空間で。
子どもは全て元冒険者で、リリスに敗れたものばかり。
全員統一のおむつは丸見えで、固定されたおしゃぶりのせいで言語的コミュニケーションは絶望的。
極めつけは、室内に特殊効果が設定されているということ。
洞窟の主、リリスによって付与されたそれは、彼女が愉しむためのものでしかない。
その名も、“幼期輪廻”。対象を誕生後5年までの姿で成長、退行させる秘術だ。
これを、リリスは部屋全体に使用した。
つまり、元冒険者たちは皆5歳までの間で成長と退行を繰り返す玩具となったというわけだ。当然、リリスや乳魔たちはこれを無効化するアクセサリーを身に着けている。
ただ一つ問題がある。
元冒険者たちは前述の通り、おむつとおしゃぶりを常時着用している。
それは、彼らの年齢が何歳であろうと変わらない。新生児の体でも、5歳の体でも、トイレは使えないし、言葉を発することも出来ないのだ。
成長する者に憧れ、退行する者に憐れむのも一瞬。
自信もその輪廻に囚われているのだと、成長しても何も変わらないのだと、悟ってしまえば自然と他者への興味も薄れていく。
そんな代わり映えの無い子ども部屋に、新たな刺激が投入される。
諦めの悪い男、カイランが収容されて約1年。
たまに子どもたちの様子を確認しに訪れる洞窟の主、リリスの新たな愉しみが始まったのである。
重い空気の漂う子ども部屋に、突如として明るい声が響き渡る。
子どもたちは皆、声のした方……唯一の扉がある場所に注目した。
そこに立っていたのは、洞窟の主リリスと、幼い見た目の彼女よりも更に小柄な童女が数人。
「赤ちゃんのみんなに、新しいおともだちを紹介するね!」
高らかに宣言するリリス。元冒険者は「新入りか」と一気に興味を失くしていた。
ただ、次に紡がれたリリスの言葉は彼らに衝撃を与えるもので。
「この子たちは、リリスも生活してたサキュバスの森で、今お勉強してるベビーサキュバスちゃん!サキュバスの長老からお願いされて、何日かに1回連れてくることになったの!
ただ、ベビーって言っても皆おはなし上手だし、この部屋の赤ちゃんたちよりはおねえちゃんかな?
ってなわけで今日は、乳魔ママたちだけじゃなくて、おねえちゃんたちにいっぱい遊んでもらってね!」
リリスが言い終えるや否や、子どもたちのもとに走り出すベビーサキュバスたち。
話しかけられないようにと強く警戒し、体を背けたカイランだったが、その姿は一人のベビーサキュバスに発見されていた。
「はじめまして!あたしメルヴィナっていうの!あなたは?」
一直線にカイランめがけて寄ってきたベビーサキュバス、メルヴィナ。
彼女に目を付けられていたことが、不運だったと言って良い。
メルヴィナに詰め寄られるカイラン。
警戒を最大限に引き上げている彼は、意地でも質問に答える気は無かったし、そもそも口がおしゃぶりで塞がれている関係上、答えることは不可能だった。
必死に無視を決め込むカイランと、諦めず構い続けるメルヴィナ。
この戦いに勝利したのは、メルヴィナであった。
近くの乳魔からカイランの情報を聞きだしたメルヴィナは様々な手段でカイランを誘惑するも、悉く失敗。最後は半ば強引に頭をつかみ、自身の方を向かせることに成功した。
「カイランくんっていうんでしょ?メルヴィナと一緒に遊ぼうよ!」
本来ならば娘でもおかしくないほどの体格の子どもに、子ども扱いされているという現実。
強引だとしても、サキュバスのアプローチに負けてしまったという事実。
それに、抵抗しようと考えてしまったことが、破滅への引き金だったのかもしれない。
刹那、カイランを軽い違和感が襲った。
ぼやける視界、火照っていく体、おしゃぶりをしているのに自然と開く口。
彼自身は理解できなかったが、傍目から見るとその現象は一目瞭然で。
この瞬間、元王国騎士少尉という華々しい過去を持つ男カイランは、生後数年のベビーサキュバス、メルヴィナに“魅了”させられてしまった。
「カイランちゃん大丈夫……って、あら?」
カイランの異変を最初に察知したのは、先ほどまでメルヴィナにカイランの情報を与えていた乳魔であった。
典型的な幼児体型の膨らんだ腹部に、薄く浮かび上がる淫紋。
それにいち早く気付けたのは、毎日おむつ替えをしていたからであろう。
自然と視線が下にもいっていたのが原因だと言える。
このことは、すぐにリリスに報告された。
たとえ自分より幼い体のカイラン相手とはいえ、十分な力も無く、自由に力を制御できないはずのベビーサキュバス、メルヴィナが成功させた、サキュバスの基本スキル、魅了。
それは対象者の使用者に対する好意を最高に引き上げ、操り人形にしてしまう基本にして最強のスキルである。
サキュバスであれば誰でも使えるスキルであるものの、その成功率は低いため中々使用されない。
もちろん、相手が自身より弱ければ弱いほど成功率は上昇するが、だからといって生後数年、まだスキルの使い方すら知らないメルヴィナが成功させたというのは大事なのだ。
報告を受けたリリスは、メルヴィナとカイランを呼び出す。
それは、これからの生活に関する話し合いだったのだが、当然ながらカイランは決定を聞いていることしか出来ない。
こうして、カイランはリリスの手から離れ、メルヴィナに引き取られることとなった。
「リルナ、良い子ね。ご褒美に、おむつにおもらしして良いわよ。」
元王国騎士団少尉、カイラン・フェールズが行方不明になってから15年。
残された妻の捜索願も残念ながら実らず、彼は正式に死亡扱いとなった。
ただ、それは厳密には正解ではない。
実は、彼はまだ生きていたのだ。
つい先日新たに行動を始めたエリートサキュバス、メルヴィナの使い魔として。
10年前、カイランは当時ベビーサキュバスだったメルヴィナに魅了され、〈魔女〉リリスのもとを離れた。
その際、メルヴィナがリリスに求めたこと……それは、カイランの性別変更と、年齢固定だった。
それを承諾したリリスはカイランの体を女児のものに作り変え、メルヴィナの要望通り1歳半頃の身体から成長しないように固定した。
新たに生まれ変わったメルヴィナの操り人形、リルナはどれだけ月日が経っても幼い姿のまま、メルヴィナにお世話され続ける。
リルナの災難は、これだけでは留まらない。
メルヴィナの成長に伴い、造り変えられる脳の構造。
現在では、撫でられるだけで多幸感に包まれ、おむつへのおもらしの許可を最大のご褒美として認識させられていた。
そんな〈使い魔〉リルナの中に、カイランの魂は宿っている。
ただ、彼の意思は表に出ることなく、リルナとしてメルヴィナに尽くす日々。
過去の栄光も既に忘れかけ、残っているのは自分が人間の男だったという記憶だけ。
それだけだが、リルナとして過ごす日々は彼の魂を傷つけるのに十分すぎた。
完全に無力な体で、メルヴィナにお世話される日々。
その無力さを露わにし、初心冒険者を引き込む罠として使われる。
最初は拒絶していたメルヴィナの愛撫を待ち望み、気持ち悪いはずのおもらしが最高のご褒美。
そこに、王国騎士の誇りなど残っているわけは無い。
エリートサキュバス、メルヴィナの使い魔、リルナ。
その姿を存分に活かした冒険者への誘惑は、後世に語り継がれる悪評となって轟いている。
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