上 下
4 / 7

ひきこもりの弟が兄である僕に嫁になれと迫ってきます。✴︎大人のオモチャ編✴︎

しおりを挟む
✳︎

「……や、やっぱ………無理」
 こっちに遊びにきた、吉岡となっちゃんに久しぶりに会って。僕自身があらぬ想像を掻き立ててしまったのは否めない。
 ……ちょっと興味がわいた、というか。
 あの生真面目に見える吉岡と、あの純粋そうななっちゃんが、どんな顔をして、どんな道具で、どんな風に乱れてるのか。僕の貧弱な想像力でも、容易に想像できてしまったんだ。
 ……変態、だろ。僕は。
 って、思いながらも……酒の勢いもあって。つい、僕はクローゼットにしまい込んだ〝震える機能がついた、変な形の大きなオモチャ〟を紘太に差し出してしまった。「これで、今日はシてみたい」って。
「大丈夫だよ、恵介。もう十分濡れてるし、柔らかくなってるから」
 ……ここまでくると、もうどっちが兄だか分からなくなってくる。夫の威厳とでも、夫の余裕とでも言いんだろうか。一人でよがって喘いでいる自分が、自分じゃないようで、本来の自分みたいに思えるから恥ずかしくて仕方ない。僕は紘太の腕に自分の腕を絡めた。
「痛いって……いったら……やめて、くれる?」
「あぁ、分かってる」
「あっ……や……」
 〝震える機能がついた、変な形の大きなオモチャ〟がゆっくりと、僕の奥まで、入ってくる。
「それ……やっ……」
 僕の中を行ったり来たりするソレが、紘太が僕にするドンピシャなタイミングの入れ方で、僕は思わす身を捩った。
「奥まで入った。スイッチ入れるね、恵介」
「……あ、待って! あ、あぁっ!! やぁっ!!」
 体の中に伝わる振動に、体に埋め込まれた全ての感覚がその振動に集中する! 今まで味わったことない感覚。僕がヤバくなるローターよりエグいソレの存在に、僕は頭がどうにかなってしまいそうで。途端にこわくなって、紘太の体にしがみついてしまった。
 ……や、やだ……やっぱ、ムリ。
「こ、たぁ……ムリぃ……ヌイて……やらぁ」
「恵介のその顔。まだ、見ていたいからダメ」
 そう言うと紘太は、ニヤリと笑って、ソレに触れた。
「あぁぁぁッ!?」
 僕の中のエゲツないオモチャが、ありえない速度をあげて震えて僕をかき乱す。体が反りかえって、意識が飛びそうになった僕は、たまらず叫んでしまった。
「紘太のがいいっ!!……紘太のにしてっ!!」 
「あっ!? ごめん、恵介!!」
 僕の異常を察知した紘太が、エグいオモチャを僕の中から引き抜く。
「あぁ……ムリィ」
 僕はほぼほぼ半泣きで、紘太に抱きついた。……やっぱり、僕にはまだ、この手のハードなオモチャは早いらしい。吉岡となっちゃんの域に達するなんて、程遠いと確信した。……それに、僕は、紘太を……。
「やっぱり……紘太がいい」
「恵介……」
「紘太って分かるくらい、のが……。機械は紘太の代わりにはならない」
 僕はそう言うと、恥ずかしさもかなぐり捨てて、大きく足を広げた。
「紘太のが……欲しい」
 そこからはもう、僕は乱れまくっていたような気がする。冷たく感情の無い機械の痕跡を消したくて、自ら腰を擦り付けて紘太を煽って。それに触発された紘太は、僕の体の奥まで貫くんだ。
「……こぅた……ふか、ぁい」
「ねぇ、どうして使いたくなったの? 恵介」
 紘太の質問に答えるべく。僕は体勢を変えて紘太の上に乗った。下から深いとこまで突き上げられる感覚。その温かな感覚に安心と気持ちよさを覚えながら、愛しい人を見おろした。
「紘太……が、喜んで……くれる、かなって」
「え?」
「たまには……ハードなのも……したい、の、かなって……」
「恵介……」
 紘太が瞳を揺らしながら体を起こして、僕の痩ぼっちな体をギュッと抱きしめる。その僕よりしっかりした体は、僕をすっぽり包み込んで………。僕は、その体温と肌の感触に、驚くほど酔いしれてしまった。
「紘太の喜ぶ顔が見たい……。その紘太の顔を独り占めしたい。だから……だから……」
 〝僕は紘太のために、なんだってしたい〟って、言わないうちに。紘太はその言葉を封じるように僕に唇を重ねて、舌を深く絡ませた。
 キス、だけでも。
 こうして繋がってる、だけでも。僕は、満足で。でも、紘太を喜ばせたい……。そうしたいのは、僕で。
 紘太を離したくない、んだ。
「恵介、俺は恵介の全てが好きだから。ハードなこともたまにはいいかな、って思ったけど。……恵介が無理することはない。……そんなの、俺が耐えられない」
「紘太……」
 僕は紘太にキスをして、腰を揺らす。不覚にも感動してしまって。泣きそうな僕を見られないように、紘太にギュッと抱きついた。
 やっぱり、紘太のが1番だ。オモチャより、何より、紘太のが1番好き。……まぁ、無理するな、とは言われたけど。多少無理してでも、紘太を喜ばせたい僕の性格は変わらないワケで。
 僕の紘太への研究心と愛情は、深く、広く。止まることを知らないんだ。



✳︎

 顔を赤らめて。さらに恥ずかしそうな顔して、恵介が吉岡からもらった未使用のバイブを俺に差し出してきた。
 今日久しぶりにあった吉岡と夏井さんに触発されたに違いない。
 多分、俺を喜ばせたいんだ、恵介は。だから、こんな風に無理をする。
 そして、俺は。そんな恵介の性格を熟知していて、普段見せない恵介の困った顔や泣きそうな顔を見てみたいって。俺の心に天邪鬼な希望が芽生え始める。
 ……変態、だろ。俺は。
「痛いって……いったら……やめて、くれる?」
「あぁ、分かってる」
 その恥ずかしそうな恵介顔が。その小さく震える肩が。俺の推してはいけないスイッチをガツンと推しまくって。そして、俺の中の〝吉岡〟モードが現れるんだ。
「こ、たぁ……ムリぃ……ヌイて……やらぁ」
 いつも以上に腰を揺らして、とろけた顔をしているわりには、涙目で辛そうに喘ぐ恵介に、俺もだんだんヤバくなる。
 心と体が、チグハグな恵介と。それに欲情する俺と。
 ……ヤバ、俺今さ、吉岡に近くなってんじゃね? 真性の変態、みたい、じゃん。でも、とまんねぇ……マズい。
 心が闇にに落ちそうになった、その時。
「紘太のがいいっ!!……紘太のにしてっ!!」
 恵介が叫んで、俺はハッとして。一気に現実に引き戻された。あぶねぇ、吉岡側のダークサイドに落ちるとこだった。
 ここで正気に戻ってよかった。あのまま恵介を弄び続けてたら、きっと俺は〝吉岡ダースベーダー〟かなんかになっていたはずだ。俺だって、恵介をいじめ倒すより、恵介を気持ちよくさせたいわけで。
 こんなことで……まぁ、たまにはいっかな?
 って思うけど……恵介の体だけを好き放題にしたいわけじゃなくて。
 恵介の笑顔も、そのしなやかな体も。心ごと全部、俺のモノにしたいって思うわけで。だから俺は、吉岡の求める欲求とは違う……んだ、と思いたい。
 深く、舌を絡ませるキスをして。
 俺の形に馴染んだ恵介の中を貫いて。 
 こうして繋がってる、だけでも。俺は、満足で〝紘太を喜ばせたい〟っていう恵介の気持ちや表情が可愛くて。それについ甘えてしまうのは、俺で。
 ……恵介を離したくない、んだ。
「恵介、俺は恵介の全てが好きだから。ハードなこともたまにはいいかな、って思ったけど。…恵介が無理することはない。……そんなの、俺が耐えられない」
 って、俺が言った時の恵介の嬉しそうな……顔。盆と正月がいっぺんに来たような、そんな嬉しそうな顔を見ていると。恵介を大事にしたいって思う反面、恵介の性格からしてまた俺を喜ばそうと無理するんじゃないかって期待して……。
 俺の恵介に対する天邪鬼な心は、一向におさまることをしらないんだよな。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...