君は蜜、あなたは蜂。〜都会に来たら、あげまん体質と言われて困ってます。〜

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「おはよう!当麻君!今日も、あげまん度マックスでキラキラしてるね!」
「…………」
「これ!あげるよ!さっきそこで見つけたんだ!当麻君に似合うと思って」
「…………」

朝からウザさ満点の、歯茎が痙攣するようなクッサイ台詞と笑みを浮かべて。
どこぞの花壇から引っこ抜いてきたか分からないような、チューリップを片手に携え。
泉のお兄さんである湧は、毎朝僕の前に現れる。

朝だけじゃない。

下手すれば、昼間の学食にも現れるし、夜はバイト先である「彼女の家」にも、さも当然のように現れる。

この湧のウザさ、しつこさ、痴漢や痴女に会ってる時と変わらない。


………つーか、湧は社会人じゃないのか?!


社会人は、そんなに暇なのか?!


僕なんかにかまけてないで、仕事しろよ、仕事!!


泉と兄弟だからかな………?


泉が作った痴漢・痴女よけのミサンガも、僕の中に宿る泉の痕跡も、何もかも湧には効かない。


その威力というか、なんというか。


それは、高津先生に対しても顕著で。
学食の柱の影から、例の如くジト目で見ていた高津先生が、湧を見るなり「ヒィッ!」と空気を裂くような声を上げて、猛烈な速さで逃げていった。

………さげまんを震え上がらせるほどの、この兄弟は一体何者なんだ………マジで。

「湧さん。あなた、仕事は?」
「あ?今日は休み。というか、仕事がひと段落ついたら、しばらく休み」
「しばらく、休み?」
「知らなかったっけ?俺の職業」
「………今初めて聞いたのに、知るわけないでしょ」
「なんだと思う?」
「出張………ホスト」
「そんなにチャラく見える?」
「チャラい、というか。軽薄に見えます」

僕の嘘偽りのない率直な答えに、湧は持っていたチューリップを振り回しながら苦笑いをする。

「デザイナー」
「は?」
「インテリアとかなんだけどね。デザイナーやってんの、俺」
「………で、今、仕事は?」
「拠点は海外なんだよねぇ。今、こっちの仕事と休暇を兼ねて、帰ってきてんだよ」
「………はぁ」


………だから、こんなに昼夜問わず自由なのか、この人は。


それにしても、泉と容姿はそっくりなのに、中身は違うんだなぁ。

穏やかなんだけどマイペースの極みみたいな泉と、ハイペースなマイペースの湧と。
その温度差が激しすぎて、頭がついていかない。


………と、いうか。


リアクションもいちいち大げさで、押しの強い、この海外臭漂う湧のペースに中々馴染めないんだ、僕は。

「ねぇ、当麻君。泉がいない時とか、寂しくない?寂しかったら、俺と」
「寂しくないです!!全くそんなことはないです!!」
「ちょっとだけ、ちょっとだけならいいでしょ?」
「…………ちょっとの意味が分かりませんけど?」
「先っぽだけ、ほんの先っぽだけでいいからさ。ね?泉にバレないようにするから!当麻君の中に全部は入れないから!ね?お願い、当麻君!!」
「さ、さささ先っぽって!!全部って!!朝っぱらから何言ってるんですか?!」
「じゃあ、昼ならいい?」
「そういう問題じゃないんです!!昼夜問わず下ネタ炸裂なんて最悪です!!じゃ、失礼します!!大学までついてこないでくださいよ!!」
「それは、ついてきて欲しいって前フリ?」
「ンなわけないでしょう!!」

僕は湧との距離を広げるように、歩幅を広げて早足で歩き出した。


………朝っぱらから、なんちゅーことを言うんだ。


よせばいいのに、湧との会話を反芻して、顔がなんだか熱くなる。

あげまん、とか。
なりたくてなってるわけじゃない。

これから先、あげまんが僕の人生にどう作用してくるのか、全く見当もつかないし。


と、いうか。


ほぼほぼ100%不可抗力で、勝手にあげまんとか言われてるだけなんだよ。

泉が何者かは、わからないけど。
あげまんの僕に、思惑ありげに近づいてきたのは変わりないんだけど。


泉に、早く会いたい………なぁ。


泉のあの雰囲気が、好きだ。


泉の体温も泉の匂いも好きだし、「当麻くん」って呼ぶ声も好き。


………兄弟とはいえど、湧と泉じゃ、全然違うんだよ。


………気持ちが弱くなって。


僕はポケットの中で握りしめていたスマホを取り出した。

『もしもし?当麻くん、おはよう!どうしたの?』
「……泉。今すぐ会いた」

泉に電話をかけて〝会いたい〟と言いかけた瞬間、僕の頭に激痛が走った。

「ぅあっ!」
『当麻くん?!当麻くん!!』

頭に受けた衝撃の弾みで僕は前のめりに倒れて、手にしていたスマホを落とす。

泉の声がだんだんと遠くなって………。


僕は、思考も視界も真っ暗になってしまったんだ。











「………ん…?」
「気がついた?当麻君」


………あれ?


この感じ………前にもあったような。


デジャヴか………?


いや、いやいやいや。


違う!


僕は頭を何にぶつけて、倒れたんだ。


で、僕の目の前にいるのは………湧!!


ゾワッと。


第六感的に危機感を覚えて、僕は慌てて体を起こそうとした。


「!?、なっ!?」


手が、動かせない?!


慌てて見上げると、SMグッズよろしく的な革製の手錠が手首に巻かれていて、ベッドヘッドに固定されていて。
魔法かっ?!ってツッコミたくなるくらい、僕はいつの間にかマッパになってて。
視界にチラチラ入る僕の足は、また、すごく悲惨なことになっていた。

足首と太腿に革製のベルトがつけられて、それが短い鎖で繋がっているから、ちょうどM字開脚みたいな感じになっちゃってて………。

昔、近所の兄ちゃんが見ていた、エロテロリストを語るグラビアアイドルみたいな格好してんじゃん、僕。


…………な、なんで???


なんで、こんなことになってんの?!


は、は、恥ずかしい………。


つーか、なんでこんなエロい手錠が、日常生活に普通に存在してんだよ。
こういうのって、映画かなんかだけの話だろ?

「ちょっと、強引になっちゃったけど。こうでもしなきゃ、無理かなって思って」
「………湧、さん!!」

僕を見下ろす湧が、涼しげに笑いながらネクタイを緩めた。
その目が、異様に冷たくて、それでいて熱を帯びてるようで。


僕は背筋が、寒くなったんだ。


これは………ヤバい。


高津先生の時の100万倍は、ヤバい気がする………。


「湧さん!!やめて!!やめてくださいっ!!」
「………いやぁ、そそるけど。………イロが足んないかな?当麻君には」

そう言った湧が、ジャケットの胸ポケットから茶色の小瓶を取り出した。
僕の顎を見た目からは想像できないくらい強い力で抑えると、その小瓶の中身を僕の口の中に流し込む。


………甘くて、熱いっ……!!


その感覚はゆっくり喉元から食道を通って、一気に身体中に回りだした。


………何?………これ。


身体が熱い………。


呼吸も乱れて、思考がぼんやりして………。


恥ずかしいのに、熱が中心に集まって………。


勃ってくる、んだ。

「………んぅ、あぁ……」
「へぇ、当麻君。回りやすいんだ。思いの外、淫乱でビックリしたなぁ………。じゃあ………下の口にも入れてあげようかな………?」
「………や、やぁ………ぁあ!」

僕の中を指でゆっくり広げた湧は、「あげまんらしい、ね。こんな蜜が溢れてる」と呟いて、さっきの小瓶の中身を僕の中に注ぎ込む。


……あ、あぁっ………熱い………。


………や、だぁ………おかし、く……なる。


口から流し込まれた甘いクスリは、頭を痺れさせ。


下から注ぎ込まれたクスリは、体を開かせる。


………欲しい…………。


僕を貫く、熱を帯びたそのエネルギーの塊が………欲しい。


どエロく変えられた頭と体が、ちゃんと機能したのはこの時までだったんだ。


それからは、なんだか………。


僕の頭も体も、夢みたいにフワフワしていた。



多分、夢だったんだ。



夢を………変な夢を見たんだよ、僕は、



狭い部屋の中に稲光が走る、突風も吹き荒れる。



その中心には二匹、っていうのかな。



とにかく、龍が二匹いて。


口を大きくあけて、体をしならせて、戦っててさぁ。


………やっべぇ…。


クスリで、ラリっちゃったんかな?


………おばぁ。

僕、すんげぇの見たけぇ。

東京は、すんげぇなぁ。

リアルな龍ば、夢ん中で見れるっちゃけぇ。

東京は、すんげぇんよぉ。
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