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1.登場人物とちょっとの蛇足

前書き:蛇足の前借り

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 始めまして。お会い出来て、そして読んで頂けてとても光栄です。

 皆さんは「ゾウ」をご存知でしょうか?

 いいえ。違います。パオーンで、ズシーン、なエレファントでは無い別の「ゾウ」です。

 敢えて英語で言うならば「スタチュー」です。

 チューとは申しましたがほっぺの赤い10万ボルトな黄色いネズミのお話でもありません。

 漢字で書くならば「像」です。石像や銅像といった人の形をしたカッチカチの置物です。

 その像について、ふと思った事があります。

 学校に一人は絶対いる二宮金次郎はただでさえ薪を背負って重いのに同じ本の同じページばっかりを読まされて飽きないのだろうか。とか。

 北海道のどっかにいるクラーク博士はずーっと、腕を伸ばして指をピンっとしていて、吊ったりはしないんだろうか。とか。

 東京のどっかにいるハチ公はいっつも人の待ち合わせの為に使われてその度に、色んな人間ドラマを見させられて中にはうんざりするような内容もあったんじゃないだろうか。とか。

 宮城のどっかにいる伊達政宗に乗られているお馬は伊達政宗を乗せたまま前足を上げっぱなしで、疲れないのか。伊達政宗は乗っているお馬の気持ちを考えた事はあるのか。とか。

 町の体育館や公園や橋の上で立っているすっぽんぽんの人達は雨の日や夜や冬の日に寒くはないのだろうか。とか。

 例えその状態を不満に思っていたとしても、彼らにはどうする事も出来ません。

 なぜなら、動けないし、喋れないんだもの。

 でも、そんな銅像達にだって。きっと心はある。いや、やっぱ無いかもしれない。

 その真意は人間にはとても分かりません。

 でも、そんな彼らにも背負ってる薪を降ろして寝そべってギャグ漫画を読んだり、乗ってる人を振り落として何処か遠くへ駆け出して、別の景色を見てみたい、そう願う時もあるのでは無いでしょうか。

 このお話の主人公は私のそう言った妄想から産まれた、身体がチョコで出来た王子様の像。

 他の像の例に漏れず動けない彼が、ある目的の為に自らの足で走り出す。そんなお話です。
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