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第三章 学園生活
閑話 旅立ち そして 約束
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駿斗が地方の大学へ入学する為に東京を出る日
私は駿斗を見送りに行ったんだ。
勿論桃花には内緒でね。
東京駅で待ち合わせをした私達。
駿斗は
「来てくれてありがとう、りり。行こう。」
と言って私の手を握った。
改札を通り新幹線のホームに上がってもずっと、駿斗は私と手を繋いだままだった。
駿斗が乗る車両の近くまで来ると、
「りり」
「ん?」
「あのさ…。周りに知ってる人は誰もいないから、今だけその変装を解いてくれないか?行く前にりりの本当の姿を目に焼き付けておきたいんだ。」
駿斗に熱っぽい視線で言われた。
私は、おずおずとウィッグと眼鏡を外す(今日はそばかすメイクはしていません)。
ウィッグの中から現れた金髪がぱらりと背中に落ちる。
駿斗は私の髪をひと房持ち上げKissをした。そして私の青い瞳を見つめながら、
「りり。綺麗だ。早くこの、お前の本当の姿で暮らせる日が来る様に…… 4年間頑張れよ?」
「駿斗もね?夢を叶えて帰ってきて。」
「あぁ!絶対叶えて帰ってくる!りり、お前の傍に戻ってくるから。だから……」
そう言うと何故か一瞬だけ考えるように視線を斜め右上に上げた。そして、
「りり。ちょっと後ろ向いてろ。」
とぶっきらぼうに言いながら、私の身体を180°回転させたんだ。
チャラっと小さな音が聞こえた?と思ったら、首元にひんやりと冷たい感触がして、それを触ってみた途端、駿斗に後ろから抱き締められ、
「好きだ!りり。」
「……」
「子供の頃、初めてりりを見た時からずっと。」
「は…やと?」
「これから約6年間。俺はお前の傍で守ってやれなくなる。勿論父さん達やお前の伯父さん達が守ってくれるのは分かってる。だけど本当は俺が……俺の手でお前を守ってやりたいんだ。」
「駿斗。ずっと守っててくれてありがと。本当は知ってたよ?桃花が私に絡んで来ないように、私の視界になるべく入らせないようにしてくれてたよね?」
「……」
「嬉しかったよ。」
私を抱き締めている駿斗の腕にそっと触る。
「こっち向いてくれ。」
駿斗に言われ向き直ると、
「似合ってる、それ。お前の瞳の色と同じ空色だ。」
ネックレスを触っている私を、今度は前から抱き締める駿斗。そして耳元で囁くように
「待っててくれ。絶対に国際弁護士の資格を取って帰ってくるから。」
「うん。」
「あっちの大学で司法試験に合格したら直ぐに渡米して、ロースクールに入る予定だ。アメリカでの司法試験も合格したら帰国する。そしたら直ぐに……結婚しような。」
私は吃驚して、広く逞しい駿斗の胸に押し付けられていた顔を上げる。とその途端、駿斗のKissが降ってきた。
チュッチュッと音を立てて啄む様なKissをされ、私の顔はきっと真っ赤になっているだろう。
「アノ女がいるから、暫くりりに会いには来れなくなると思うが、俺はお前の親父さんみたいな事はしない。」
「うん」
「りり……。プロポーズの返事。」
「はい。私なんかで良いなら、駿斗のお嫁さんに…して、下さい。」
今度は大人のKissをされてしまい、息が出来なくて苦しくなった。
やっと離してくれた駿斗の顔を見つめると、
「りり……りり……。愛してる。」
新幹線の発車を告げるアナウンスが流れる。私達はもう一度だけ「またね」のKissをした。
「行ってくる。」
「うん。行ってらっしゃい。」
駿斗が乗り込んだと同時にドアが閉まり、新幹線は静かに走り出し、加速をしながらホームを出ていく。
私はそれが見えなくなるまで手を振り続け、
「待ってる……駿斗。大好きだよ。」
と叫んだ。
私は駿斗を見送りに行ったんだ。
勿論桃花には内緒でね。
東京駅で待ち合わせをした私達。
駿斗は
「来てくれてありがとう、りり。行こう。」
と言って私の手を握った。
改札を通り新幹線のホームに上がってもずっと、駿斗は私と手を繋いだままだった。
駿斗が乗る車両の近くまで来ると、
「りり」
「ん?」
「あのさ…。周りに知ってる人は誰もいないから、今だけその変装を解いてくれないか?行く前にりりの本当の姿を目に焼き付けておきたいんだ。」
駿斗に熱っぽい視線で言われた。
私は、おずおずとウィッグと眼鏡を外す(今日はそばかすメイクはしていません)。
ウィッグの中から現れた金髪がぱらりと背中に落ちる。
駿斗は私の髪をひと房持ち上げKissをした。そして私の青い瞳を見つめながら、
「りり。綺麗だ。早くこの、お前の本当の姿で暮らせる日が来る様に…… 4年間頑張れよ?」
「駿斗もね?夢を叶えて帰ってきて。」
「あぁ!絶対叶えて帰ってくる!りり、お前の傍に戻ってくるから。だから……」
そう言うと何故か一瞬だけ考えるように視線を斜め右上に上げた。そして、
「りり。ちょっと後ろ向いてろ。」
とぶっきらぼうに言いながら、私の身体を180°回転させたんだ。
チャラっと小さな音が聞こえた?と思ったら、首元にひんやりと冷たい感触がして、それを触ってみた途端、駿斗に後ろから抱き締められ、
「好きだ!りり。」
「……」
「子供の頃、初めてりりを見た時からずっと。」
「は…やと?」
「これから約6年間。俺はお前の傍で守ってやれなくなる。勿論父さん達やお前の伯父さん達が守ってくれるのは分かってる。だけど本当は俺が……俺の手でお前を守ってやりたいんだ。」
「駿斗。ずっと守っててくれてありがと。本当は知ってたよ?桃花が私に絡んで来ないように、私の視界になるべく入らせないようにしてくれてたよね?」
「……」
「嬉しかったよ。」
私を抱き締めている駿斗の腕にそっと触る。
「こっち向いてくれ。」
駿斗に言われ向き直ると、
「似合ってる、それ。お前の瞳の色と同じ空色だ。」
ネックレスを触っている私を、今度は前から抱き締める駿斗。そして耳元で囁くように
「待っててくれ。絶対に国際弁護士の資格を取って帰ってくるから。」
「うん。」
「あっちの大学で司法試験に合格したら直ぐに渡米して、ロースクールに入る予定だ。アメリカでの司法試験も合格したら帰国する。そしたら直ぐに……結婚しような。」
私は吃驚して、広く逞しい駿斗の胸に押し付けられていた顔を上げる。とその途端、駿斗のKissが降ってきた。
チュッチュッと音を立てて啄む様なKissをされ、私の顔はきっと真っ赤になっているだろう。
「アノ女がいるから、暫くりりに会いには来れなくなると思うが、俺はお前の親父さんみたいな事はしない。」
「うん」
「りり……。プロポーズの返事。」
「はい。私なんかで良いなら、駿斗のお嫁さんに…して、下さい。」
今度は大人のKissをされてしまい、息が出来なくて苦しくなった。
やっと離してくれた駿斗の顔を見つめると、
「りり……りり……。愛してる。」
新幹線の発車を告げるアナウンスが流れる。私達はもう一度だけ「またね」のKissをした。
「行ってくる。」
「うん。行ってらっしゃい。」
駿斗が乗り込んだと同時にドアが閉まり、新幹線は静かに走り出し、加速をしながらホームを出ていく。
私はそれが見えなくなるまで手を振り続け、
「待ってる……駿斗。大好きだよ。」
と叫んだ。
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