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第五章 それぞれの……
第1話 突きつけられた事実
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記者会見を強引に打ち切り、俺はホテルのスイートルームには帰らず、屋敷に戻ってきた。
本来なら、会見の後呼んだマスコミや会社の関係者達と和やかにビュッフェスタイルの会食をする予定だったのに。
流石にそれを中止にする訳にもいかなかった俺は、潮田に指示を出してマスコミには主役不在でも構わなければ飲んで食べて帰ってくれるようにした。
また家族がスイートルームに泊まるのならば、ルームサービスを頼むなりなんなりしても良いとも申し渡してきた。
屋敷に帰って来た俺が先ず向かった先は、アイツの部屋だった。
が、鍵がかかっていて入ることが出来なかったのだ。
俺は大声で時子の名を呼びながら屋敷中を探した。が、時子は居なかった。
「使えない女だ。」
俺はスマホを取り出し、時子に電話をかけようとしたが、その途端、時子の連絡先を知らなかった事に気付いた。
「雇用契約書に書かれているだろう。」
俺は書斎へ入り、使用人の雇用契約書を探したが、そんな物は何処にも無かった。
イラついた俺はシェフを呼んだ(名前は知らない)が、そいつが俺の呼びかけに答える気配がない。
ドカドカと歩いて厨房へ行ったが、そいつは厨房には居なかった。
仕方なく俺は、厨房の戸棚や引き出しをあさりまくり、やっとの思いでインスタントコーヒーを見つけ、湯を沸かしてコーヒーを啜った。
書斎に戻り、アノ女の捜索をどうするか?を考えようと部屋に入る。
すると、先程は見なかった何かが机の上に置かれていた。
それは、三通の退職願と二本の鍵だった。
三通の退職願の内容は、どれも同じだった。
『私達 名倉時子、羽田義人、大貫完二は、雇用主である櫻井兼近様より、本日付にて屋敷に戻るよう通達がございましたので、白金家よりお暇致します。』
あいつら3人はこの屋敷の使用人じゃ無かったのか!
知らなかった事実に、俺は驚愕した。
わなわなと震えながら退職願を机に置き、二本の鍵を見た。
多分コレはアノ女の部屋の……
俺は書斎のドアを乱暴に開け、そのままの勢いで走り、アノ女の部屋の前まで来た。
鍵を鍵穴に差し込むと、案の定部屋のドアを簡単に開く事が出来た。
アノ女の部屋の中に残っていた物。それは……俺が適当に買って渡したブランド物のスーツと、簡素な机の上に無造作に置かれていた、アイツがかけていたと思われる眼鏡、それに黒髪の鬘だった。
鬘…そうだ!
俺はアイツの髪が、死んだ麗羅と同じ金髪だった事を思い出した。
アイツ 百合香が幼かった頃、見た目が目立つから誘拐されるのだと思った俺は、アイツに髪を染める様に言った。
その日からずっと、百合香はそれを守っていたのか。
俺はその鬘を持ち上げてみると、カサッと音がして、何かが床に落ちた。紙だった。
拾い上げると、そこには
『さようなら
自由になります
百合香』
と書かれていた。
本来なら、会見の後呼んだマスコミや会社の関係者達と和やかにビュッフェスタイルの会食をする予定だったのに。
流石にそれを中止にする訳にもいかなかった俺は、潮田に指示を出してマスコミには主役不在でも構わなければ飲んで食べて帰ってくれるようにした。
また家族がスイートルームに泊まるのならば、ルームサービスを頼むなりなんなりしても良いとも申し渡してきた。
屋敷に帰って来た俺が先ず向かった先は、アイツの部屋だった。
が、鍵がかかっていて入ることが出来なかったのだ。
俺は大声で時子の名を呼びながら屋敷中を探した。が、時子は居なかった。
「使えない女だ。」
俺はスマホを取り出し、時子に電話をかけようとしたが、その途端、時子の連絡先を知らなかった事に気付いた。
「雇用契約書に書かれているだろう。」
俺は書斎へ入り、使用人の雇用契約書を探したが、そんな物は何処にも無かった。
イラついた俺はシェフを呼んだ(名前は知らない)が、そいつが俺の呼びかけに答える気配がない。
ドカドカと歩いて厨房へ行ったが、そいつは厨房には居なかった。
仕方なく俺は、厨房の戸棚や引き出しをあさりまくり、やっとの思いでインスタントコーヒーを見つけ、湯を沸かしてコーヒーを啜った。
書斎に戻り、アノ女の捜索をどうするか?を考えようと部屋に入る。
すると、先程は見なかった何かが机の上に置かれていた。
それは、三通の退職願と二本の鍵だった。
三通の退職願の内容は、どれも同じだった。
『私達 名倉時子、羽田義人、大貫完二は、雇用主である櫻井兼近様より、本日付にて屋敷に戻るよう通達がございましたので、白金家よりお暇致します。』
あいつら3人はこの屋敷の使用人じゃ無かったのか!
知らなかった事実に、俺は驚愕した。
わなわなと震えながら退職願を机に置き、二本の鍵を見た。
多分コレはアノ女の部屋の……
俺は書斎のドアを乱暴に開け、そのままの勢いで走り、アノ女の部屋の前まで来た。
鍵を鍵穴に差し込むと、案の定部屋のドアを簡単に開く事が出来た。
アノ女の部屋の中に残っていた物。それは……俺が適当に買って渡したブランド物のスーツと、簡素な机の上に無造作に置かれていた、アイツがかけていたと思われる眼鏡、それに黒髪の鬘だった。
鬘…そうだ!
俺はアイツの髪が、死んだ麗羅と同じ金髪だった事を思い出した。
アイツ 百合香が幼かった頃、見た目が目立つから誘拐されるのだと思った俺は、アイツに髪を染める様に言った。
その日からずっと、百合香はそれを守っていたのか。
俺はその鬘を持ち上げてみると、カサッと音がして、何かが床に落ちた。紙だった。
拾い上げると、そこには
『さようなら
自由になります
百合香』
と書かれていた。
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