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第五章 それぞれの……
第2話 俺のせいか?
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結局俺は、晩飯を作る人間はおらず昼飯も軽食だった事から、タクシーを呼んでホテルへ戻る事にした。
部屋に入ると、
「貴生!」
と待ち構えていたかのように、皐月が駆け寄ってくる。
それに気付いた桃花も、
「パパ!全くもぉ~、どこ行ってたの?それになんなの?あの会見は!桃花、恥ずかしくって明日からお買い物出来ないじゃない。」
と言って頬を膨らませて怒っている。
俺はそれ等を無視した状態で、部屋の電話でルールサービスを頼んだ。
「最高級の赤ワインを頼む。それから……」
そして、ドカッとソファに座り、背もたれに体を預けた。
「貴生…あの……」
恐る恐る話しかけて来る皐月の声を無視し、リモコンでテレビのスイッチを入れると、大型テレビ画面いっぱいに今日の会見のVTR動画が流れ出し、自称コメンテーターがグダグダ言っている。
『いや~、これは酷いでしょう。完全な虐待、ネグレクトですね。』
『ですよね。前の奥様とは死別したとはいえ、遺された百合香さんを蔑ろにするとは、親とは到底思え──』
ブチッ!!
煩い!煩い!どいつもこいつも好き勝手言いやがって!!
俺は届けられたワインのコルクをウェイターに開けさせると、ボトルをふんだくり、グラスに注ぐ事無くそのままラッパ飲みをした。
それを飲みきってしまうと酒を追加し、また飲みきってしまうと追加するを繰り返したのだが、全然酔えなかった。
グダグダに酔っ払って寝てしまいたいと思うのに、意に反して目が冴えていく。
「ねぇ、パパ~。」
「貴生、飲み過ぎよ!」
桃花が何を言ってきても、皐月が止めても、俺はガン無視で酒を呷った。
そうして暫くすると、
「寝る!今夜は一人にしろ!お前らは違う部屋で寝ればいい。入ってくるなよ!」
俺はそう言って、一番広いベッドがある部屋へ入ると、キングサイズのベッドに倒れ込み、天井を仰いだ。
そしてこれ迄の事を考えていた。
麗羅と百合香への愛情なんて初めから無かった。俺の愛情は、皐月と桃花にだけ注がれるものであって、金の成る木のあの母娘など、所詮お飾りに過ぎなかった。
だが、それでも百合香は、俺に認めて貰いたいと願い、黒髪の鬘をつけ目立つな!と言う俺の命令を守り続け、いつかsiroganeを継ぐ時の為に、常に努力をしてきたというのか。
なのに、俺は見せつける様に桃花を溺愛し、アイツへした事といえば、暴言を吐く、何も買い与えず、最近では存在さえも無視していた。
俺は当初、百合香が優秀である事さえ憎かった。
だから、およそ賢いとは言えない桃花に足を引っ張らせて、成績を落としてやろうと思った。
桃花が学園の高等部に入れたのは、実力では無く【金の力】だ。
俺は金に困ってそうな試験官に金を握らせ、桃花をAクラスに入れる様に点数を改ざんして貰った。
学園に入ってしまえばこっちのもの。
あとは桃花が百合香の足さえ引っ張ってくれたら、正直それで良かった。
だがそれは、桃花が勉強よりも一男子生徒に現を抜かしたため失敗に終わったが……。
そういえば、アイツが家を出ると決めたのはいつだったのだろう。
そんな事を考えてみたが、いくら考えても分かりはしなかった。
アイツと話したのは昨日だ。話と言うより命令だった。
その時アイツはなんて言った?分からない。
そんな昨日の事なのに、俺は覚えていない位、アイツの事等どうでも良かったんだ。
アイツは確かに実の娘だ。それは間違いないだろう。令嬢の麗羅が浮気をするとは思えないからな。
だがしかし、近年の俺はアイツに無関心だった。
アイツが何処で何をしていようが気にも止めなかった。
どうせ何も出来やしない。いずれは俺の駒になれば良いと思っているだけの存在だ。
そう思っていた。
そう言えば、駒が嫌で家を出ると言っていたな。俺の駒になりたくないからだと。
だとしたら、アイツが家を出たのは、俺のせいなのか?親なのに娘を駒にしようととした報いなのか?
俺は答えの出ない押し問答を悶々と続けていた。
部屋に入ると、
「貴生!」
と待ち構えていたかのように、皐月が駆け寄ってくる。
それに気付いた桃花も、
「パパ!全くもぉ~、どこ行ってたの?それになんなの?あの会見は!桃花、恥ずかしくって明日からお買い物出来ないじゃない。」
と言って頬を膨らませて怒っている。
俺はそれ等を無視した状態で、部屋の電話でルールサービスを頼んだ。
「最高級の赤ワインを頼む。それから……」
そして、ドカッとソファに座り、背もたれに体を預けた。
「貴生…あの……」
恐る恐る話しかけて来る皐月の声を無視し、リモコンでテレビのスイッチを入れると、大型テレビ画面いっぱいに今日の会見のVTR動画が流れ出し、自称コメンテーターがグダグダ言っている。
『いや~、これは酷いでしょう。完全な虐待、ネグレクトですね。』
『ですよね。前の奥様とは死別したとはいえ、遺された百合香さんを蔑ろにするとは、親とは到底思え──』
ブチッ!!
煩い!煩い!どいつもこいつも好き勝手言いやがって!!
俺は届けられたワインのコルクをウェイターに開けさせると、ボトルをふんだくり、グラスに注ぐ事無くそのままラッパ飲みをした。
それを飲みきってしまうと酒を追加し、また飲みきってしまうと追加するを繰り返したのだが、全然酔えなかった。
グダグダに酔っ払って寝てしまいたいと思うのに、意に反して目が冴えていく。
「ねぇ、パパ~。」
「貴生、飲み過ぎよ!」
桃花が何を言ってきても、皐月が止めても、俺はガン無視で酒を呷った。
そうして暫くすると、
「寝る!今夜は一人にしろ!お前らは違う部屋で寝ればいい。入ってくるなよ!」
俺はそう言って、一番広いベッドがある部屋へ入ると、キングサイズのベッドに倒れ込み、天井を仰いだ。
そしてこれ迄の事を考えていた。
麗羅と百合香への愛情なんて初めから無かった。俺の愛情は、皐月と桃花にだけ注がれるものであって、金の成る木のあの母娘など、所詮お飾りに過ぎなかった。
だが、それでも百合香は、俺に認めて貰いたいと願い、黒髪の鬘をつけ目立つな!と言う俺の命令を守り続け、いつかsiroganeを継ぐ時の為に、常に努力をしてきたというのか。
なのに、俺は見せつける様に桃花を溺愛し、アイツへした事といえば、暴言を吐く、何も買い与えず、最近では存在さえも無視していた。
俺は当初、百合香が優秀である事さえ憎かった。
だから、およそ賢いとは言えない桃花に足を引っ張らせて、成績を落としてやろうと思った。
桃花が学園の高等部に入れたのは、実力では無く【金の力】だ。
俺は金に困ってそうな試験官に金を握らせ、桃花をAクラスに入れる様に点数を改ざんして貰った。
学園に入ってしまえばこっちのもの。
あとは桃花が百合香の足さえ引っ張ってくれたら、正直それで良かった。
だがそれは、桃花が勉強よりも一男子生徒に現を抜かしたため失敗に終わったが……。
そういえば、アイツが家を出ると決めたのはいつだったのだろう。
そんな事を考えてみたが、いくら考えても分かりはしなかった。
アイツと話したのは昨日だ。話と言うより命令だった。
その時アイツはなんて言った?分からない。
そんな昨日の事なのに、俺は覚えていない位、アイツの事等どうでも良かったんだ。
アイツは確かに実の娘だ。それは間違いないだろう。令嬢の麗羅が浮気をするとは思えないからな。
だがしかし、近年の俺はアイツに無関心だった。
アイツが何処で何をしていようが気にも止めなかった。
どうせ何も出来やしない。いずれは俺の駒になれば良いと思っているだけの存在だ。
そう思っていた。
そう言えば、駒が嫌で家を出ると言っていたな。俺の駒になりたくないからだと。
だとしたら、アイツが家を出たのは、俺のせいなのか?親なのに娘を駒にしようととした報いなのか?
俺は答えの出ない押し問答を悶々と続けていた。
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