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第五章 それぞれの……
第10話 何故だ
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何故だ!何故見つからない!
たかが小娘一人に一体幾ら出せば見つかるというのだ!!
既に白金の戸籍から抜け、住民票さえも移してあった麗羅の娘 百合香。
行き先など簡単に調べがつくと思っていた。が、個人情報保護法に守られ、百合香は忽然と姿を消したかの様に、行方を晦ましたのだ。
仕方がなく、探偵を雇う事にした俺だったが、俺が知っている百合香の特徴と言えば地味で陰キャで前髪で顔半分が隠れる程の黒髪だということだけだ。
百合香の写真も何も無く、交友関係も分からず、娘の手掛かり一つ伝えられない俺に、探偵はあからさまにため息をついた。
「一応やってみますが、期待はしないで下さい。それより、これ程までに自分の子供の事が分からない、関心の無い親を初めて見ましたよ。テレビで見たあの話は本当の事だったんですね。」
そう言われ、顔から火が出るほど羞恥心に苛まれた。
それから探偵は週に一度、調査報告書を会社へ送り付けてきて、それと共に調査費用として請求書も送ってきた。
百合香について、あまりに何も情報を与えられなかった中での捜索の為、捜索の範囲を日本中に広げたので、費用が嵩むというのだから仕方ない。
当然会社の経費で落とす訳には行かず、俺は社長としての給与から、調査費用を支払うしかなかった。
あれ程百合香の為なんて金を使いたくなかったのに……。百合香のせいだ!アイツさえ大人しく俺に従っていればこんな事にはならなかった筈だ。
俺は悔しくて悔しくて、毎日皐月に当たり散らし、酒を煽っていた。
ホテルでの会見から1ヶ月後
ほとぼりが冷めた様なので、自宅に戻り、通常どおり会社へも行くようにした。
基本的に、仕事は会食以外全てリモートで処理が出来ていた為、出勤しても仕事が溜まっていることはなかったが、第二秘書の女が疲弊している様だ。
理由は、社へのクレームや問い合わせの電話対応のせいだろう。
俺達が社長室へ入った途端、そいつは一週間の有給休暇を申請してきた。
仕方がなく俺は、その女の有給休暇を受理する事にした。秘書の仕事は皐月だけで十分だし、桃花は形だけの副社長だから秘書がいなくても問題はないからな。
「寛大なお取り計らいをありがとうございます、社長。」
そう言って、第二秘書は社長室を出ていった。
それから一時間後
「貴生!遠藤 寿美子さんは?なんでいないの?」
と皐月が怒鳴り込んできた。
「遠藤とは誰の事だ?」
「第二秘書の遠藤 寿美子さんの事よ!」
「あ~。彼女なら一週間有給休暇を申請してきたから…「はぁ?有給休暇?」あぁ。」
「まさか受理したわけじゃ…「したぞ?」え?」
「別に第二秘書なんていなくたって大丈夫だろう?桃花はまだ仕事は出来ないから秘書はいらない。利樹君もまだ正式に専務にはなっていない。秘書が欲しいのは俺だけだ。俺だけなら皐月が完璧だから大丈夫だろ?」
「…………」
黙り込む皐月をじっと見ていると、皐月が重い口を開いた。
「……彼女が……遠藤さんが第二秘書をやる様になってから、私は全く秘書業務をしていないの……。」
「な!なんだと?」
「そうなの……。彼女が入ってきた頃から、秘書業務もデジタル化したでしょ?で、でも……私……コンピュータって苦手で。」
聞けば皐月は、スケジュール管理も書類作成も秘書業務の全てを第二秘書に任せ、皐月はその仕事をさも自分のやった仕事の様に俺に報告していたのだという。
「はぁ……。分かった。なら、彼女のデータを俺のパソコンへ送ってくれ。」
「だから!それが出来ないって言ってるじゃない!!」
開き直った皐月がキレてしまった。
仕方なく俺は、秘書課の彼女のデスクへ行き、パソコンを立ち上げ共有フォルダを俺のパソコンへ飛ばした。
「彼女が出勤するまでの一週間、会議や会食の連絡は全て俺に回してくれ。皐月はお茶汲みと電話番で良いから。」
俺はそう言って、社長室へ戻った。
たかが小娘一人に一体幾ら出せば見つかるというのだ!!
既に白金の戸籍から抜け、住民票さえも移してあった麗羅の娘 百合香。
行き先など簡単に調べがつくと思っていた。が、個人情報保護法に守られ、百合香は忽然と姿を消したかの様に、行方を晦ましたのだ。
仕方がなく、探偵を雇う事にした俺だったが、俺が知っている百合香の特徴と言えば地味で陰キャで前髪で顔半分が隠れる程の黒髪だということだけだ。
百合香の写真も何も無く、交友関係も分からず、娘の手掛かり一つ伝えられない俺に、探偵はあからさまにため息をついた。
「一応やってみますが、期待はしないで下さい。それより、これ程までに自分の子供の事が分からない、関心の無い親を初めて見ましたよ。テレビで見たあの話は本当の事だったんですね。」
そう言われ、顔から火が出るほど羞恥心に苛まれた。
それから探偵は週に一度、調査報告書を会社へ送り付けてきて、それと共に調査費用として請求書も送ってきた。
百合香について、あまりに何も情報を与えられなかった中での捜索の為、捜索の範囲を日本中に広げたので、費用が嵩むというのだから仕方ない。
当然会社の経費で落とす訳には行かず、俺は社長としての給与から、調査費用を支払うしかなかった。
あれ程百合香の為なんて金を使いたくなかったのに……。百合香のせいだ!アイツさえ大人しく俺に従っていればこんな事にはならなかった筈だ。
俺は悔しくて悔しくて、毎日皐月に当たり散らし、酒を煽っていた。
ホテルでの会見から1ヶ月後
ほとぼりが冷めた様なので、自宅に戻り、通常どおり会社へも行くようにした。
基本的に、仕事は会食以外全てリモートで処理が出来ていた為、出勤しても仕事が溜まっていることはなかったが、第二秘書の女が疲弊している様だ。
理由は、社へのクレームや問い合わせの電話対応のせいだろう。
俺達が社長室へ入った途端、そいつは一週間の有給休暇を申請してきた。
仕方がなく俺は、その女の有給休暇を受理する事にした。秘書の仕事は皐月だけで十分だし、桃花は形だけの副社長だから秘書がいなくても問題はないからな。
「寛大なお取り計らいをありがとうございます、社長。」
そう言って、第二秘書は社長室を出ていった。
それから一時間後
「貴生!遠藤 寿美子さんは?なんでいないの?」
と皐月が怒鳴り込んできた。
「遠藤とは誰の事だ?」
「第二秘書の遠藤 寿美子さんの事よ!」
「あ~。彼女なら一週間有給休暇を申請してきたから…「はぁ?有給休暇?」あぁ。」
「まさか受理したわけじゃ…「したぞ?」え?」
「別に第二秘書なんていなくたって大丈夫だろう?桃花はまだ仕事は出来ないから秘書はいらない。利樹君もまだ正式に専務にはなっていない。秘書が欲しいのは俺だけだ。俺だけなら皐月が完璧だから大丈夫だろ?」
「…………」
黙り込む皐月をじっと見ていると、皐月が重い口を開いた。
「……彼女が……遠藤さんが第二秘書をやる様になってから、私は全く秘書業務をしていないの……。」
「な!なんだと?」
「そうなの……。彼女が入ってきた頃から、秘書業務もデジタル化したでしょ?で、でも……私……コンピュータって苦手で。」
聞けば皐月は、スケジュール管理も書類作成も秘書業務の全てを第二秘書に任せ、皐月はその仕事をさも自分のやった仕事の様に俺に報告していたのだという。
「はぁ……。分かった。なら、彼女のデータを俺のパソコンへ送ってくれ。」
「だから!それが出来ないって言ってるじゃない!!」
開き直った皐月がキレてしまった。
仕方なく俺は、秘書課の彼女のデスクへ行き、パソコンを立ち上げ共有フォルダを俺のパソコンへ飛ばした。
「彼女が出勤するまでの一週間、会議や会食の連絡は全て俺に回してくれ。皐月はお茶汲みと電話番で良いから。」
俺はそう言って、社長室へ戻った。
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