貴方の駒になど真っ平御免です

Saeko

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第七章 襲撃

第5話 日本での初仕事 ~連城駿斗side~

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二年ぶりの日本
昨日は空港まで迎えに来てくれた俺の婚約者 りりこと百合香りりかの手料理を食べられて幸せだった。

そして今朝も……

「ほら、駿斗。朝だよ?起きて?」

とまるで新妻の様にりりに起こされた俺は、寝惚けたフリをしてりりをベッドに引きずり込みシャワーを浴びたばかりらしいりりを抱き締め堪能する(決して俺は変態じゃない。俺は健全な成人男性だし、りりは婚約者なんだから、この行為は問題ない)。

「駿斗。ねぇってば。起きてるの分かってるんだからね?」

俺の腕の中でモゾモゾと動き脱出を試みようとする可愛すぎなりりに、俺の息子が反応しそうになり、

「おはよ、りり。」

と、さも今起きたと言わんばかりに、りりにおはようのKissをした。

「嘘ばっかり。」

と笑って言うりりは、やっぱり可愛すぎで反則だな。

俺もシャワーを浴び、半裸のままタオルで髪を拭きながらリビングへ入ると、

「何か着てよ、もう!」

と言って、二年前の春 渡米前の一週間をこの部屋で過ごした時に買ったスウェットを投げつけられた。

「有り難いけど……多分これ着られないぞ?」

「え?まさか駿斗……また背が伸びの?」

と言って、俺の前に立つと、身長を測る様に自身の頭上に手を乗せてから、俺の鎖骨辺りに手を当て

「ホントだ!おっきくなってる。」

と大きな蒼い瞳をパチパチさせていた。
うん、可愛すぎだ。

「お?朝も和食にしてくれたんだ?」

「あ~、うん。やっぱり和食に飢えてるかな?って。」

「(飢えてるのは違う方だけど……)嬉しいよ。ありがとう。」

ダイニングテーブルを兼ねたカウンターテーブルには、栄養のバランスを考えた一汁三菜の朝ご飯が並んでいる。

この数年、朝はコーヒーとパンだけだった俺の胃には負担がかかるかな?と思いきや、完食してしまう程りりの料理は美味かった。


それぞれの部屋で出勤の支度を終えた俺達は、コンシェルジュに挨拶を済ませ、住人専用の地下駐車場へと移動した。

今日から、俺がりりを勤務先の図書館へ送っていく事になったからだ。


「行ってきます。」

「あぁ。帰りは…「分かってるよ。羽田さんが今までどおり来てくれるんでしょ?」あぁそうだ。流石にりりの終業時刻には都内から向かっても間に合わないからな。」

「うん。ありがと、駿斗。あ!今夜は何がいい?」

「そうだな……カレーライスだな。」

「了解。また今夜。」

「あぁ。行ってきます。」

車内で小さくKissをすると、りりは駐車場を抜け館内に入って行った。


そこから俺は、車を走らせ、都内にある自宅兼事務所がある敷地の駐車場に車を停め、連城弁護士事務所へと入った。

「おはようございます。本日より此方の事務所でお世話になる事になりました、連城駿斗と申します。若輩者ではございますが、精一杯頑張りたいと思いますので、ご指導の程宜しくお願い申し上げます。」

と父であり所長でもある、連城宏樹先生と、パラリーガルの近藤 裕司こんどう ゆうじさん、事務の暁月 良子あかつき りょうこさんに挨拶をした。

「ようこそ、我が弁護士事務所へ。一年間の渡米の成果をきっちり見せてくれよ?」

「宜しくお願い致します、駿斗先生。」

「若い子は元気があっていいわね~。宜しくね、若先生。」

所長、近藤さん、暁月さんの順に挨拶を返され少し照れくさがったが、これから頑張ろうと気を引き締めた。

「では、若先生の今日のお仕事は、大先生と一緒に、お得意先の挨拶回りですね。って事で、はい!若先生の名刺です。」

暁月さんから名刺を渡され、俺は案内された自分の机に向かうと、名刺入れにリストに書かれた枚数プラスアルファを名刺入れに入れ、残りは机の引き出しに入れ、仕事に必要な物を整理しながら配置していった。

「大先生、そろそろお時間では無いですか?」

「ん?あぁそうだな。って、大先生は止めないか?暁月さん。」

「でも……今までの呼び方だと……紛らわしいじゃないですか。」

「僕は良いと思いますよ?大先生。」

「近藤君までそんな……。なんか歳食ったみたいでヤダなぁ。」

と、相変わらず和気あいあいなこの事務所の雰囲気は、俺が小さい頃から変わらない。

「所長。宜しくお願い致します。」

「あぁ、行こう。じゃ、暫く出かけるから。何かあったらスマホにメッセージを入れてくれ。」

「はい、大先生。行ってらっしゃい。若先生も頑張ってね。」

暁月さんの明るい声に見送られ、俺の運転で顧問弁護を受け持つ企業へと向かった。
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