隣の芝は

Saeko

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隣りのお引っ越し事情は

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「みんなに悲しいお知らせがあります。」と、さくら組の担任である永倉聖美きよみ先生が、【いつもより早い時刻にお迎えに来て頂き、教室に集まって下さい】とメールを寄越したのだ。それにより教室に集まった保護者達と先生の前で座っている園児の前でそう切り出した。
「この度、橋本結奈ちゃんが、お家の人のお仕事の都合で、お引っ越しをする事になりました。結奈ちゃんがお引っ越しするのは、今月、9月の最後の日です。だからみんな?結奈ちゃんといっぱい遊んだりお話したりしましょうね。」
と仰った。園児達は「はーい」と可愛らしく返事をしていた。それから先生は結奈ちゃんをご自分の隣りに立たせ、結奈ちゃんの横に座って目線を合わせながら、彼女の背中に手を添えてこう仰った。
「結奈ちゃん。さくら組のみんなにお話したい事ある?」
だけど結奈ちゃんは首を横に振るだけだった。

解散した後私は芽衣子さんに話しかけようとしたが、芽衣子さんは結奈ちゃんの手を引いて足早に幼稚園をあとにした。そしてその日を境に結奈ちゃんは我が家に来ることが無くなったのだ。
その来なくなった理由は、例のタワマンに住むママから、芽衣子さん家の現状を教えて貰う事で知った。

その現状とはこうだ

芽衣子さんは先日、単身赴任中だったご主人のお父様が倒れられた為、急遽帰国されたご主人と結奈ちゃんと一緒に、ご主人のご実家がある地方に帰省したらしい。
幸いな事にご主人のお父様は命を取り留められたのだけれど、要介護者になってしまわれたそう。
その為、ご主人のお母様だけにお父様の介護をさせるのは無理があると判断したご主人は、会社に直談判を試みたところ、単身赴任期間を早く終え日本に帰国する事になったのだそう。そしてそのまま勤務先を実家のある地方に転勤という形で赴任し、お父様の介護をする事にしたのだという事だった。
当然その勤務先には結奈ちゃんも奥様である芽衣子さんも一緒に着いて行くし、生活の場はご主人のご実家になるのだとか。

「え?だったら今住んでるお宅は賃貸に出されるとか?」
とそのママに尋ねると、
「あの部屋って、橋本さんの持ち家じゃなくて賃貸なのよ。でもね、急な退去になっちゃったから部屋のオーナー所有者さんが困っちゃうんじゃない?って住人の間て言ったんだけど……。ほら、うちのマンション、立地が良いでしょ?だから直ぐ次の入居者が決まったらしいの。だからあの部屋のオーナーさんが橋本さんに、『次の方が直ぐにでも入りたいと待っているから、出来るだけ早く退去して下さい。本当は、(退去の)申し出期間が短いという理由で違約金を払って貰うという契約でしたが、直ぐに次の入居者が決まったので、今回は違約金は頂かない事にしてあげますので。』って話になったのよ。だから橋本さんの奥様、毎日必死でゴミ屋敷を片付けてるらしいわ。しかもご主人に怒鳴られながね。」
と、とっても詳しく教えてくれたのだ。

どうやら彼女の情報収集のアンテナは、高いだけでは無くパラボラアンテナの様だった。
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