隣の芝は

Saeko

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隣りの芝は青いらしい?

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 橋本家が遠方に引っ越してから数年後

 娘 那智は相変わらず結奈ちゃんと【文通】を続けている。
 勿論、スマホを持たせているのでメッセージアプリで話もできるにも関わらずだ。

 そういえば一度だけ、ずっと前だったが、娘宛の手紙の中に、芽衣子さんから私に書いた手紙が封入されていた事があった。それには

『那智ちゃんママへ
 ご無沙汰しております。皆様お元気にお過ごしでしょうか?私は旦那の実家でまあなんとかやっています。
 介護や義理の両親との暮らしはなかなか慣れないし、義理の両親は薄味の料理を好むから、私の舌と違う味付けしないといけないのが本当に面倒臭いです。でも那智ちゃんママのお料理はギリ私好みの味付けだったから美味しかったですよ。出前もUberもないから、田舎は本当に面倒臭いです。
 1番嫌なのは、結奈が通う幼稚園は家から歩くと40分ぐらいかかる所にあるんです。車の免許を持ってない私は、旦那にせがんで買って貰った電動アシスト自転車で毎日結奈の送迎をしています。そっちにいた頃は、タワマンから歩いて5分っていう好立地に幼稚園があったから超楽だったのに…。結奈も同じ幼稚園のお友達が近所に住んでなくて誰とも遊べないって言ってて寂しそうにしています。だから那智ちゃんから届くお手紙を凄く楽しみしています。
 結奈は、いつかまた那智ちゃんと一緒に遊びたい。一緒の学校に行きたい。という気持ちをこの前話してくれました。結奈もきっと、私と同じでここでの暮らしが嫌なんだなぁと思います。だからいつか、其方に遊びに行きたいと思ってます。その時はきっとお泊まりしないと無理だと思うので、那智ちゃん家に泊めて貰えると嬉しいです。那智ちゃんの家なら広いし空いてる部屋くらいありますよね?舅の体調が良くて、旦那が休みを取れたら、旦那に介護をやらせてそっちに遊びに行きたいな。
 その時はよろしくお願いします。
 橋本芽衣子』

と、なんとも一方的な願望が書かれていて驚いた。主人にそれを見せると、
「ご主人はちゃんとしてるのに、奥さんは非常識極まりないな。」
と呆れ顔だった。

彼女のその願望は、その後叶う事は無かった。何故なら彼女自身が、太り過ぎが原因でとある病気にかかってしまい、遠距離移動ができなくなってしまったからだと結奈ちゃんからのお手紙にそう書いてあったそうだ。
結奈ちゃんが成長した今
長時間立って作業が出来なくなってしまった芽衣子さんに代わり、結奈ちゃんが家族の食事の支度をしているとの事だ。
そんな環境に身を置く結奈ちゃんは、将来理学療法士と栄養士の資格を取りたいと言っているそうで、娘も結奈ちゃんと同じ大学へ行くのだと言って、今まさに高校受験に備え猛勉強中である。

そういえば…
直近の結奈ちゃんからの手紙にこんな事が書いてあったと娘が見せてくれた。
それには、『幼稚園に行ってた頃、よくママは結奈にこんな事を言ってたよ。【ウチは新しいタワマンだったけど、ほら、マンションだから部屋数も少ないじゃない?だから那智ちゃんが来ても遊べる部屋がないのよ~。でも那智ちゃんの家は、お庭もあってお部屋の数も沢山あるからいいわね~。まあ古いけどね笑笑】って。その時はまだちっちゃかったし那智ちゃんと遊べれば何処でだって良かった気にしてなかったけど、最近よくママが、【那智ちゃんも古かったけど、この家よりはマシよね~。この家の庭なんてほら……】とか言って、那智ちゃん家と直ぐに比べるんだよ。で最後には【タワマンは……】て昔取った杵柄って言うの?そんな事言ってはさり気にじぃじばぁばの家の事をディスるのよ。どうせ今のママの身体じゃどこ住んだって同じなのにね。ほんとママってば、どんだけなんだろ。
あ~早くこの家から出ていきたいよ。』と結奈ちゃんの本音が書かれていた。
「読ませてくれてありがとう那智」
と娘に言うと、
「どういたしまして、ママ。」
と言って封筒に手紙を戻していた。
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