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第二章 前世其ノ壱
第四幕 生誕祭⑵
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いよいよロイド様のご生誕をお祝いする演奏会が始まりました。
公爵ご夫妻とロイド様がおられる壇上から右前方に小さな舞台が設えられており、その壇上にて楽器を演奏するのです。
各々がガーディランス公爵ご夫妻とロイド様へのお祝いの言葉を述べると、得意の楽器でお祝いの音楽を奏でます。
この日演奏を行うのは私を含め7名でした。
バイオリン チェロ フルートは、演者自ら持ち込みを致しますが、ピアノは公爵家にある物を使用させて頂くことになりました。
私は当然ピアノを演奏致します。
他の方々が見事な演奏をなさっている(であろう)中、私はそれ等の音が遠くで聴こえるかのように、自身が演奏する曲を脳内で弾きながら、最終おさらいをしておりました。
いよいよ私の番が参りました。
段に上り公爵ご夫妻とロイド様がいらっしゃる方向を見ながら、ドレスの裾を摘みカーテシーをした後、
「この度は、このようなお祝いの席にお招き頂き、誠に嬉しゅう存じます。ロイド•J•ガーディランス様。本日はご生誕おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。拙い演奏ではございますが、お聴き頂けますと幸いに存じます。」
震えそうになる声をなんとか抑えながら、私はピアノの前に腰掛けました。
ふぅと大きく息を吐き出し、ピアノに指を置くと、(邸では、練習前にお母様が必ず、「間違いなく演奏出来たら、お茶にしましょうね?アイリーンが作ったお菓子を頂きながら休憩致しましょ。」と仰るので、私はそれを楽しみに練習をしてたのよね。)邸での事を思い出し、ふっと笑ってしまいました。
するとどうでしょう。余計な力が抜け、私はリラックスして演奏する事が出来たのでした。
最後の音まで丁寧に弾ききり手をピアノから離すと、皆様から温かい拍手を頂けた事に、安堵したら涙が出てしまいました。
なんとか礼を取り舞台を降りますと、お兄様が満面の笑顔で
「アイリーン。本当に良くやったね。頑張ったよ。」
と頭を撫でて下さいました。
「もう、お兄様!私は子供では無いのです。」
と睨みましたが、お兄様はニコニコ笑って「うんうん」と仰っているだけでした。
演奏は進み、最後の演奏者になりました。
勿論リュークアッセンドラ殿下です。
殿下はバイオリンの名手と噂される程の腕前だそうで、私も是非一度お聴きしたいと思ってました。
会場に集まられた方々からの拍手をお受けになり壇上に上がられた殿下は、
「ロイドにはさっき祝いの言葉は述べたから、もういいよな?」
と仰い、会場からはドっと笑いが起こりました。
あっという間に和やかな雰囲気になります。
流石は殿下でした。私はそんな殿下を尊敬の眼差しでもって見つめ、いつかその澄んだ殿下の瞳に私を映して下さる日が来たらどんなに素晴らしいでしょうと思っておりました。
「私のバイオリンだけでは面白くないので、一緒に演奏して下さるご令息ご令嬢をお願いしたいと思う。」
先程まで和やかな会場が、殿下のそのお一言でざわつき始めました。
「殿下と御一緒だなんて緊張しちゃいますわ。」
「私、演奏は苦手ですの。悔しいですわ。」
そんなざわめきの中、殿下がお言葉を発せられます。
「先程の演者の中から、私が独断で決めさせて貰った。今からお名前をお呼びする。先ずはチェロ……
公爵ご夫妻とロイド様がおられる壇上から右前方に小さな舞台が設えられており、その壇上にて楽器を演奏するのです。
各々がガーディランス公爵ご夫妻とロイド様へのお祝いの言葉を述べると、得意の楽器でお祝いの音楽を奏でます。
この日演奏を行うのは私を含め7名でした。
バイオリン チェロ フルートは、演者自ら持ち込みを致しますが、ピアノは公爵家にある物を使用させて頂くことになりました。
私は当然ピアノを演奏致します。
他の方々が見事な演奏をなさっている(であろう)中、私はそれ等の音が遠くで聴こえるかのように、自身が演奏する曲を脳内で弾きながら、最終おさらいをしておりました。
いよいよ私の番が参りました。
段に上り公爵ご夫妻とロイド様がいらっしゃる方向を見ながら、ドレスの裾を摘みカーテシーをした後、
「この度は、このようなお祝いの席にお招き頂き、誠に嬉しゅう存じます。ロイド•J•ガーディランス様。本日はご生誕おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。拙い演奏ではございますが、お聴き頂けますと幸いに存じます。」
震えそうになる声をなんとか抑えながら、私はピアノの前に腰掛けました。
ふぅと大きく息を吐き出し、ピアノに指を置くと、(邸では、練習前にお母様が必ず、「間違いなく演奏出来たら、お茶にしましょうね?アイリーンが作ったお菓子を頂きながら休憩致しましょ。」と仰るので、私はそれを楽しみに練習をしてたのよね。)邸での事を思い出し、ふっと笑ってしまいました。
するとどうでしょう。余計な力が抜け、私はリラックスして演奏する事が出来たのでした。
最後の音まで丁寧に弾ききり手をピアノから離すと、皆様から温かい拍手を頂けた事に、安堵したら涙が出てしまいました。
なんとか礼を取り舞台を降りますと、お兄様が満面の笑顔で
「アイリーン。本当に良くやったね。頑張ったよ。」
と頭を撫でて下さいました。
「もう、お兄様!私は子供では無いのです。」
と睨みましたが、お兄様はニコニコ笑って「うんうん」と仰っているだけでした。
演奏は進み、最後の演奏者になりました。
勿論リュークアッセンドラ殿下です。
殿下はバイオリンの名手と噂される程の腕前だそうで、私も是非一度お聴きしたいと思ってました。
会場に集まられた方々からの拍手をお受けになり壇上に上がられた殿下は、
「ロイドにはさっき祝いの言葉は述べたから、もういいよな?」
と仰い、会場からはドっと笑いが起こりました。
あっという間に和やかな雰囲気になります。
流石は殿下でした。私はそんな殿下を尊敬の眼差しでもって見つめ、いつかその澄んだ殿下の瞳に私を映して下さる日が来たらどんなに素晴らしいでしょうと思っておりました。
「私のバイオリンだけでは面白くないので、一緒に演奏して下さるご令息ご令嬢をお願いしたいと思う。」
先程まで和やかな会場が、殿下のそのお一言でざわつき始めました。
「殿下と御一緒だなんて緊張しちゃいますわ。」
「私、演奏は苦手ですの。悔しいですわ。」
そんなざわめきの中、殿下がお言葉を発せられます。
「先程の演者の中から、私が独断で決めさせて貰った。今からお名前をお呼びする。先ずはチェロ……
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