鳴らない電話を抱き締めて

Saeko

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第一章

決別6

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あの日の夜決めた事。

それは"幼い頃からの夢を叶える事”だ。

それには絶対に大学へ進学しなくてはならない。

だから私は、今までなんとなく受けてた授業を真剣に聞く様にしたし、塾にも通って今までに分からなかったところも取り戻す事にしたんだ。
聡の言動に一喜一憂する馬鹿な女は卒業すると誓ったのだから。


帰宅部の私は、塾へ行くまでの空き時間を図書室で過ごす事にしていた。
塾では今学校でやっている勉強をするから、復習は独学になってしまう。その為私は参考書を買い込むと、ひたすら問題を解くことにしていた。

のだけど
しまった!
行き詰まった………
全く分からないし進みゃしない。

「やっぱり独学は無理があるよねー」
と呟きながら天井を見上げると、
「どうかした?」
と後ろから ┄ 頭の上から? ┄ 声をかけられた。

「ほへ?」
と、間抜けな声を出してしまった口を慌てて手で覆いつつ頭の位置を元に戻し、その声の主が誰であるかを確かめる為に振り向くと、そこにはイケメンさんが口元に手をやり笑いを堪えながら立っていた。

(どこかで見かけた事がある…気がする?)と思うより先に、イケメンさんに笑われてしまったという事実に、一気に顔に熱が集まってきたのが分かった。それだけじゃなくて、恥ずかし過ぎて固まってしまったのだ。
イケメンさんはそんな(固まった)私を見ると、またククッと小さく笑った。そして
「で、ココが分かんないの?かな?」
と、トン!と参考書を指さしたんだ。

「あ… えぇ… えと…はい。」
「ん。見せてごらん?」

イケメンさんは私の隣に座って、私が一向に進まない問題を一瞥すると、直ぐにシャーペンを持ち、いとも簡単に問題を解いてしまったのだ。

呆気にとられた私の顔を覗き込み、
「これはね… 」
と解説を始めたので、私は急いでそれを聞き漏らさないようにと問題に向き直った。

綺麗な横顔と低いけどよく響く声にドキドキしてしまう。
が次の瞬間、はっとしてその人の手元を見た。

(ダメじゃない!折角教えてくれてるんだから集中しないと!)

と、私はノートに綺麗な字で解かれた数式を改めて見つめた。

「ここ迄のやり方は合ってるよ。でも、この後はこの公式を使わないと解けない。」
と、問題を解いたあと解説を始めたイケメンさん。
場所が場所 ┄ 図書室 ┄ だから、顔を近づけ どうしても囁く様な話し方になってしまうけど、その人の分かりやすい説明を聞いていると、頭の中のモヤモヤがスッキリしたのが分かった。

「ありがとうございます!凄く良く分かりました!」

私は思わず立ち上がって、大きな声でお礼を言ってしまった。

途端に周りからギロッと睨まれる。

あ!しまった!此処が図書室だった事を忘れてた。
私は顔を赤らめて、小さな声で周りとその人に謝罪した。そして
「本当にありがとうございました。」 
と、小声だけど笑顔でお礼を言うと、イケメンさんは小さく頷いてくれたんだ。

「オレで良ければ、これからも教えるよ?」
イケメンさんは素敵な笑顔でそう言ってくれた。
「本当ですか?凄く嬉しいです。ありがとうございます。」
「他は?大丈夫なの?」
と問われ、
「えと……お時間、大丈夫なんですか?」
と聞いてみた。
「大丈夫だよ?俺、理系だからそっち系なら教えられるけど?」
「えと…なら、コレはどうですか?」
イケメンさんの前に付箋を付けておいた問題を差し出す。すると、少し考えた様子を見せたものの、またさらさらっと解き、私の前にその問題を戻すと解説を始めてくれたんだ。

その人の優しい人柄と分かりやすい説明は、解けなくて不安だらけ私の心の中を暖かくしてくれた。
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