ずっとずっと大好きです 《加賀城 百合音 作》【完結】

Saeko

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やっぱり大好きです

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理事長室に入った私に、理事長は退学を告げました。
理由は、
・学園の規則を破った事
・婚約者がいる身で他の殿方に言い寄った事
・王太子殿下並びに公爵令嬢であり王太子殿下のご婚約者に不敬を働いた事

私は言い訳をさせて頂く機会さえ貰えず、邸へ帰されてしまいました。

屋敷に着いた私に対し、お父様は、

「お前のせいで、お前が侯爵ご子息に不貞を働いたとみなされたせいで、我が家は多額の損害賠償金を払わされる事になった。額面は言えないが、家督を継がせる予定だったお前の弟にまで借金を背負わせる事になったのだ。婚約破棄をされた貴族の娘は傷物となり貰い手が無くなる。お前は残りの人生を修道院で過ごしなさい。そして頂ける給金の3分の2を毎月男爵家に送金する様に。お前が給金を誤魔化す事が無いように、既にシスターにはその旨連絡済みだ。荷物を本日中に纏め、明日の昼前に出立しなさい。」

と仰いました。
いつもはお優しいお母様も『姉様』と慕ってくれる弟も、今は汚い物を見る様な目で見てきました。

私はいたたまれなくなり、お父様の書斎を飛び出して自室に入りました。

泣いて泣いて、いくら泣いても涙があとからあとから溢れてきて、涙が止まる事はありません。

王子様を好きになってしまった事
好きな気持ちを自分の中で止めなかった事
王子様にご迷惑をかけていた事に気づかなかった事
侯爵子息から婚約破棄をされてしまった事

全て私の恋心が原因で、実家にまで借金を負わせてしまった罪悪感で、心が潰れてしまいそうでした。

このまま消えてしまいたい。

そう願いながら、男爵家での最後の夜を
過ごしました。






月日は流れ、私は今日も修道院で毎日神に祈りを捧げています。

毎朝早く起こされ、礼拝堂の掃除をし、食事の支度や洗濯、湯浴みの支度、司祭様の寝台の支度等、男爵令嬢時代にはする事がなかった事をしていました。

辛く厳しい毎日でしたが、神様にお祈りを捧げる代わりに、私は王子様のご無事をお祈りしています。
それくらいの行為なら、誰にも迷惑をかける事はないでしょう。

そして、寝る前には、燭台の仄暗い灯りの元、王子様への気持ちを紙に書き付けていました。

毎月男爵家へ給金の3分の2を送金されている為、残りの僅かな給金だけで過ごさないといけない為、紙も羽根ペンもインクも大事に使わないといけませんでしたが、想いを綴るこの時間は贖罪でもあり戒めでもあり、至福の時でもありました。


あれから何年経ったことでしょう。

王子様はご婚約者だった公爵令嬢と無事御成婚されお子様をもうけられたと、王国の端に位置するこの修道院にも話が流れて来ました。また、男爵家の家督を継いだ弟も結婚し、子供をもうけ幸せに暮らしていると、こちらは風の噂でしたが耳にする事になりました。
お父様は男爵家の面汚しとなった私の事等思い出したくもなかったのでしょう。弟の結婚式にさえ呼ばれる事はありませんでした。


王子様を想う気持ちを書き付けた紙は、やがて修道院の私の部屋には収まらなくなってきてしまいました。
何度か、読み返しては不要な物は廃棄しようと試みたのですが、自身の王子様への想いが込められた紙達を捨てる事が出来ませんでした。
仕方なく、私は部屋の床板を剥がし、収納空間を作り、そこに紙をしまう事にしました。


毎日毎日自身が書いた紙を読んでは、今でも大好きな王子様を想いながら暮らしてた人生も、もう直ぐ終わりが近づいてきました。流行病を拗らせ、晩年は寝台で過ごす事が多くなった私は、自身が天に召された後、この部屋の掃除をされ紙を処分されてしまう事の無いように、遺言書を書きました。

私の棺には、花ではなく、私が書き綴った紙達を入れて欲しいと。そうすれば、私は死してなお王子様への想いを持っていられると思ったのです。

実際に、紙の一部は棺に入れられましたが、殆どの紙は燃やされてしまいました。

天に召された後、神様から、生前修道院に身を置きながらも神ではなく王子様を想い祈っていた事を咎められた私は、人間ではなく王宮の庭園に咲く、花として生まれ変わる事になりました。

王宮では、私が恋焦がれた王子様のお子様でいらっしゃる凛々しいお姿の青年が、私の隣りで咲き誇る真っ赤な薔薇を自身のご婚約者に差し出し愛を囁いていました。

そのご様子を目を細めご覧になっている国王様に、花となった私は話しかける事は出来ません。
ただじっとそこで風に揺られているしか無いのですから。

神に仕える身でありながら神様を蔑ろにしてしまった私へ、神様がお与えになられた罰を、私はこの姿で受け続けるのでしょう。

私は今日も名もない花として、薔薇達に馬鹿にされながら、風に揺られていました。
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