海より深い隠れ御曹司の溺愛

Saeko

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第二章 決断と静養

第9話 准子の決意 2

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待つこと5分
会議室のドアがノックされ、横山部長・手塚課長、それから人事課の田原課長が入って来られた。

「お疲れ様です。」
と椅子から立ち上がり頭を下げると、
「お掛け下さい、山下さん。」
と田原課長に着席を促された。

私の前に、3人の上司が座っている様は、さながら入社の面接試験の様だった。
でもまぁ、今日のこれも一種の面接だろう。と言っても、当たり前だが入社するわけでは無く、【退職】の面談なのだけども。

「朝のお忙しいお時間にお手間を取らせてしまい申し訳ございません。」
と椅子に腰掛けた状態で深々と頭を下げる。
「大丈夫ですよ。それより……そのご様子から察するに、お辞めになるおつもりですね?」
察しの良い手塚課長が仰った言葉に
「はい。此方を……。」
と言って退職願を差し出した。

それを受け取った手塚課長が、ご自身の左隣りに座る横山部長に渡すと、チラッと中の便箋を出し目を通した部長が課長へ、その手塚課長がまた隣に座る田原人事課長へとまわしていく。
そして、田原課長が、読み終えた退職願を封筒に戻し
「分かりました。退職願を受理致します。」
と仰った事を受け、私は
「ありがとうございます。長い間お世話になりました。」
と言いながら、社員証と初期化したパソコンとUSBを手塚課長の前に差し出した。

「念の為確認致しますね。」
と、課長はパソコンを起動し、初期化の確認をすると社員証を田原課長に渡した。
「はい。確かに。」
と社員証を受け取った田原課長はそう仰って、私が使っていた社員証の一部にはさみをいれたんだ。
「これでもうこの社員証は使えなくなりました。」
「はい。」
「これからのお話を致しますね。退職願には、来月末の退職をご希望とありましたが、それで宜しいですね?」
「はい。」
「では、1ヶ月分は溜まっていた有給休暇20日分を消化と残りは傷病手当で充当するということで宜しいのですね?」
「はい、それでお願い致します。」
「分かりました。それでは雇用保険被保険者証・年金手帳・源泉徴収票、および離職票は、後日弊社から郵送にて送らせて頂きます。ご住所に変更は?」
「はい。実は今の住所から引っ越しを致します。ですので、私の実家である『電化のヤマシタ』にお送り頂けますでしょうか?」
「承知致しました。給与と退職金をお振込み致しますので、入金が確認出来ますまで、口座の解約はなさらない様お願い致しますね。」
と、優しい口調で話す田原課長からの事務確認が終わった後、
「一つ聞いてもいいかい?」
と、横山部長に聞かれた私は、
「はい。」
と背筋を改めて伸ばした。
「山下さんは本当に仕事が出来る良い秘書でした。辞められてしまうのは、正直言って痛手です。」
「ありがとうございます。ですが……」
「勿論お引き留めはしませんよ。もうこうなってしまいましたからね。」
と仰る横山部長の言葉に反応した田原課長が、鋏が入った社員証を持ちヒラヒラさせている。
私は苦笑いを浮かべ
「そうですね。」
と答えた。

「秘書課の山下さんの私物は?」
と手塚課長に聞かれ
「こちらにあります。」
と紙袋を見せると、
「分かりました。で、社外秘の物は?」
「既にシュレッダーしてあります。また在籍していた頃の諸々共有した方が良いと教えられました事柄につきましては、共有フォルダに入れてありますので、必要とあればご確認下さい。」
と言うと、手塚課長は「流石ですね。」と頷いて下さった。

「では、社長・副社長と、山下さんがついていた専務、それから秘書課で最後の挨拶をして貰いたいと思うので、私についてきてくれますか?」
と横山部長に言われた。
正直気が進まないし、また倒れるかも?という不安もあるがこれもケジメだと思ったのと、これですっきりしてしまおうと思う事で、なんとか部長の言葉に
「はい。宜しくお願い致します。」
と答えた。
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