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第二章 鏡映しの兄弟編
30.愚者を灯す紫の太陽
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瞬きをした瞬間。それぞれのエーテルは光を放ち、戦場は輝きに包まれる。
「何もさせる前に!! 氷結精製:氷柱の監獄!!」
「おっせぇよ雑魚が! 愚者を焦がす死の太陽!!」
開戦の合図を皮切りに敵の弟、オーキッドは一歩前へ出ると、赤みを帯びた紫の炎を撃ち出す。右耳に取り付けられた紫の耳飾りが、彼の攻撃へ呼応するように不気味な紫の光を放っていた。
氷柱の檻が彼らを捕らえるように生えて来るや否や、産み落とされた紫の炎がその一本一本をその身ごと弾き飛ばす。
「これならどうッスか、チャタロー!!」
「フンニャー!!」
炎を使い終わった直後のオーキッドへ向けて巨大化したチャタローが突撃する。そして爪を立てると思い切り横なぎに大きな前脚を振るった。
衝撃で屋敷の壁は抉れ、破片が散り土煙が舞う。
「当たるかよ!! 幻影を焦がす右手の太陽ァ!!」
チャタローがなぎ払ったと思われたオーキッドは彼の生み出した身代わりであった。大技を放ち隙の出来たチャタローへ、暴れ狂う紫の炎が襲い掛かる。
「ぐあっ!!」
「ミルカ!! チャタロー!!」
巨大化した猫は癖っ毛少女と共に、紫炎の爆発に巻き込まれ吹き飛ばされる。彼女達の悲鳴に思わずシキは声を張り上げた。
「貴様、何故立っているかと聞いている。愚者を灯す紫の太陽」
「……ッ!!」
兄上と呼ばれた男アランブラは、青みを帯びた紫の炎から数十の炎の塊を放つ。弟の炎とは対照的に、従者のように揺らめく紫の炎が、ゆっくりとシキの周囲を囲んで行く。
「アネッサに与えたエーテルコアについて、知っている情報を洗いざらい話して貰おうか!!」
シキはコアを失った短剣を抜き出すと、周囲にいる炎の一つを切り裂いた。修復が上手く行かず、炎の塊はいびつな燃え方をしながら消え去って行く。
コアを失い記憶を奪う斬撃を放てなくなったとしても、エーテルを削る効果自体がこの短剣に宿っている事はこれまでの旅で見つけていた。
そしてそれがこの紫の炎に有効な事も、屋外の戦いで証明済みであった。故に、シキは臆する事無く紫の炎を切り裂いたのであった。
「『大食らいの少身物』……だと? 貴様、赤の国の者か……!」
シキの短剣を目にしたアランブラは、殲滅すべき敵国の兵が目の前にいると認識した。しかし、敵兵だと思われた人物の言葉にそれは間違いだと即座に気づく。
「ただの拾い物だ!!」
シキは切り拓いた包囲網から飛び出すと、そのまま円形に陣を作っていた紫の炎を切り裂きながら、アランブラへと襲い掛かる。
「何故お前のような者がエーテルコアを持っていた? それをどうしてアネッサに与えた? それにこの魔物の大群と隠されていた屋敷……お前達の目的は何だ!! この地で何をしようとしている!?」
半月のように紫炎の半分を切り落とされたアランブラは怒りに燃えながら、歯向かって来る男へ己の存在する理由を語り突きつける。
「歴史を変えるのだよ……。我らダーダネラの民がこの世界を支配する。我らを魔物同然と扱った他種族を服従させ、我らがこの世界の頂点へと君臨する。ここはその始まりになるべく生まれた場所であった。はずであったのに、貴様らは……!!」
アランブラの左手に、青みを帯びた紫の炎が灯る。炎は強く、アランブラの怒りに呼応するようにその大きさを増していく。
そして炎は下される。襲い掛かる愚者へと。
「今ここで終わる訳にはいかぬのだ!! 灯せ、理想を灯す左手の太陽ァ!!」
アランブラの怒りを受け入れるように、彼の左耳に付けられた耳飾りが眩い紫の光を放つ。
理想を掲げる左手は、紫の太陽を灯し過去を求める旅人へと振り落とされた。
「ぐっ……はああああああ!!」
シキは攻撃を受けながらも、意識を大食らいの少身物へと注力する。それは記憶ごと奪う斬撃を放つためではなく、降り注ぐ特大のエーテルを吸収するために。
そして、紫の光が消える。それと同時に、ザンッ!! と巨大な赤色の斬撃が屋敷内から屋外へと向かって放たれた。
シキは反動で屋敷の内側へと吹き飛ばされる。そのまま背中を部屋の奥でぶつけるまで宙を舞い、やっとの事で地に足をつけた。大部屋の真ん中へ斬撃の跡を刻みながら、シキはアランブラの一撃を耐え凌いだのだ。
薄暗い屋敷の中で、男の身体に炎が灯り始める。轟々と一つ、また一つと身体の傷口から炎が溢れ出す。
「今ここで終われないのは……私だって同じだ!! 答えろアランブラ! あのエーテルコアをどこで手に入れた!? そもそもエーテルコアとは……何なのだ!!」
扉のあった入口からアランブラが入ってくる。シキの言葉を聞き、ニヤリと笑う。まだ何も知らない男を見下すようにアランブラは理想を語る。
「なんだ……。そんな事も知らずにエーテルコアについて探し回っていたのか。丁度いい、教えてやろう。その結晶が持つ真の力を。この世界を手に入れるための方法を」
「な、なに……!?」
「エーテルコアとは、この世界そのものなのだよ。この世界が出来た時から、既に存在していたとされるエーテルの塊。つまり、この世界が生まれた時からエーテルを貯め続けた莫大なるエネルギーの塊。それがエーテルコアなのだ。後はもう察しが付くだろう。そのようなコアを独占する事が何を意味しているか」
シキは言葉を失った。記憶の断片、それ以外の特性など付属品程度に考えていたエーテルコアが、世界を征服できるほどの力を持つ代物だったのだ。
呆然とする彼を前に、国を背負った男は容赦なく次の一手へと移る。
「だから我らは、成し遂げなければならないのだ。祖国を守るために、我らが種族を守るために。この世界に存在するエーテルコアを独占する!!」
再び青みを帯びた紫の炎がア、ランブラの左手に灯る。
屋敷の奥で潰れている敵へ敗北を突きつけるために、祖国ダーダネラを守るために、双子の太陽は愚者を灯す。
「何もさせる前に!! 氷結精製:氷柱の監獄!!」
「おっせぇよ雑魚が! 愚者を焦がす死の太陽!!」
開戦の合図を皮切りに敵の弟、オーキッドは一歩前へ出ると、赤みを帯びた紫の炎を撃ち出す。右耳に取り付けられた紫の耳飾りが、彼の攻撃へ呼応するように不気味な紫の光を放っていた。
氷柱の檻が彼らを捕らえるように生えて来るや否や、産み落とされた紫の炎がその一本一本をその身ごと弾き飛ばす。
「これならどうッスか、チャタロー!!」
「フンニャー!!」
炎を使い終わった直後のオーキッドへ向けて巨大化したチャタローが突撃する。そして爪を立てると思い切り横なぎに大きな前脚を振るった。
衝撃で屋敷の壁は抉れ、破片が散り土煙が舞う。
「当たるかよ!! 幻影を焦がす右手の太陽ァ!!」
チャタローがなぎ払ったと思われたオーキッドは彼の生み出した身代わりであった。大技を放ち隙の出来たチャタローへ、暴れ狂う紫の炎が襲い掛かる。
「ぐあっ!!」
「ミルカ!! チャタロー!!」
巨大化した猫は癖っ毛少女と共に、紫炎の爆発に巻き込まれ吹き飛ばされる。彼女達の悲鳴に思わずシキは声を張り上げた。
「貴様、何故立っているかと聞いている。愚者を灯す紫の太陽」
「……ッ!!」
兄上と呼ばれた男アランブラは、青みを帯びた紫の炎から数十の炎の塊を放つ。弟の炎とは対照的に、従者のように揺らめく紫の炎が、ゆっくりとシキの周囲を囲んで行く。
「アネッサに与えたエーテルコアについて、知っている情報を洗いざらい話して貰おうか!!」
シキはコアを失った短剣を抜き出すと、周囲にいる炎の一つを切り裂いた。修復が上手く行かず、炎の塊はいびつな燃え方をしながら消え去って行く。
コアを失い記憶を奪う斬撃を放てなくなったとしても、エーテルを削る効果自体がこの短剣に宿っている事はこれまでの旅で見つけていた。
そしてそれがこの紫の炎に有効な事も、屋外の戦いで証明済みであった。故に、シキは臆する事無く紫の炎を切り裂いたのであった。
「『大食らいの少身物』……だと? 貴様、赤の国の者か……!」
シキの短剣を目にしたアランブラは、殲滅すべき敵国の兵が目の前にいると認識した。しかし、敵兵だと思われた人物の言葉にそれは間違いだと即座に気づく。
「ただの拾い物だ!!」
シキは切り拓いた包囲網から飛び出すと、そのまま円形に陣を作っていた紫の炎を切り裂きながら、アランブラへと襲い掛かる。
「何故お前のような者がエーテルコアを持っていた? それをどうしてアネッサに与えた? それにこの魔物の大群と隠されていた屋敷……お前達の目的は何だ!! この地で何をしようとしている!?」
半月のように紫炎の半分を切り落とされたアランブラは怒りに燃えながら、歯向かって来る男へ己の存在する理由を語り突きつける。
「歴史を変えるのだよ……。我らダーダネラの民がこの世界を支配する。我らを魔物同然と扱った他種族を服従させ、我らがこの世界の頂点へと君臨する。ここはその始まりになるべく生まれた場所であった。はずであったのに、貴様らは……!!」
アランブラの左手に、青みを帯びた紫の炎が灯る。炎は強く、アランブラの怒りに呼応するようにその大きさを増していく。
そして炎は下される。襲い掛かる愚者へと。
「今ここで終わる訳にはいかぬのだ!! 灯せ、理想を灯す左手の太陽ァ!!」
アランブラの怒りを受け入れるように、彼の左耳に付けられた耳飾りが眩い紫の光を放つ。
理想を掲げる左手は、紫の太陽を灯し過去を求める旅人へと振り落とされた。
「ぐっ……はああああああ!!」
シキは攻撃を受けながらも、意識を大食らいの少身物へと注力する。それは記憶ごと奪う斬撃を放つためではなく、降り注ぐ特大のエーテルを吸収するために。
そして、紫の光が消える。それと同時に、ザンッ!! と巨大な赤色の斬撃が屋敷内から屋外へと向かって放たれた。
シキは反動で屋敷の内側へと吹き飛ばされる。そのまま背中を部屋の奥でぶつけるまで宙を舞い、やっとの事で地に足をつけた。大部屋の真ん中へ斬撃の跡を刻みながら、シキはアランブラの一撃を耐え凌いだのだ。
薄暗い屋敷の中で、男の身体に炎が灯り始める。轟々と一つ、また一つと身体の傷口から炎が溢れ出す。
「今ここで終われないのは……私だって同じだ!! 答えろアランブラ! あのエーテルコアをどこで手に入れた!? そもそもエーテルコアとは……何なのだ!!」
扉のあった入口からアランブラが入ってくる。シキの言葉を聞き、ニヤリと笑う。まだ何も知らない男を見下すようにアランブラは理想を語る。
「なんだ……。そんな事も知らずにエーテルコアについて探し回っていたのか。丁度いい、教えてやろう。その結晶が持つ真の力を。この世界を手に入れるための方法を」
「な、なに……!?」
「エーテルコアとは、この世界そのものなのだよ。この世界が出来た時から、既に存在していたとされるエーテルの塊。つまり、この世界が生まれた時からエーテルを貯め続けた莫大なるエネルギーの塊。それがエーテルコアなのだ。後はもう察しが付くだろう。そのようなコアを独占する事が何を意味しているか」
シキは言葉を失った。記憶の断片、それ以外の特性など付属品程度に考えていたエーテルコアが、世界を征服できるほどの力を持つ代物だったのだ。
呆然とする彼を前に、国を背負った男は容赦なく次の一手へと移る。
「だから我らは、成し遂げなければならないのだ。祖国を守るために、我らが種族を守るために。この世界に存在するエーテルコアを独占する!!」
再び青みを帯びた紫の炎がア、ランブラの左手に灯る。
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