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第三章 砂漠の魔女編
09.過去を集めし者達
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自然の中に、不自然に出来た砂漠地帯。そこは、忌まわしき過去と共に多くの魂が眠る戦禍の後であった。
「まさか……いや、だからこそ今の魔物が生まれた。という訳か……」
「エルフの身に人の武器。死ぬ直前まで争っていた者同士が死後交わり、魔物となって甦るなんて。皮肉な話よね」
人のエーテルとエルフのエーテル。そして自然のエーテルが交わる。敗者の記憶は怨念となって、新たな身体を手に入れ戻らない過去を求めて彷徨い続ける。
それが、この地に湧く魔物の正体であった。
「紛いなりにも元々はエルフだったせいか、コアのエーテルを探すと大体出て来るのは奴らか、奴らの遺品ばかりよ」
「魔物の正体は分かった……。それで、お前の持っているその橙の球はなんだ? 今の魔物のドロップ物か?」
「半分正解で半分不正解かな。ただ倒すだけじゃ、奴らは何も残さず大地へと消えていく。だから私は、この鎌で奴らのエーテルを刈り取る」
そう言うと、オームギは片手に持った大鎌を回し、構え直した。
「集断刀。正式名称は……なんだっけ。何でもエーテルを集めたり、断ったり出来る刃物? ダッサい名前だったから忘れちゃった」
「おいおい、なんだそれは……」
「とにかく、私は集断刀と呼んでいるわ。効果は言った通り、物質だろうが空間だろうが斬ったものからエーテルを集め、固形化させる。そうして出来たのが、この魔物からエルフのエーテルだけを集めた物質。この球体よ」
「では、オームギさんはそれを集めて、エルフのエーテルを回収。そしてこの世からエルフの痕跡を消そうとしているのですか?」
「ええ。ま、と言ってもこんな物ゴロゴロ持ち歩くのも難しいから、これを使うんだけどね」
そういうとオームギは大鎌を砂上に刺し、身を包む白マントの内から驚くべき物を取り出した。
「それはまさか……!」
シキは驚く。そんな彼を見て、オームギはにやりと笑った。
「橙のエーテルコア。エルフに与えられし秘宝。このコアに刈り取ったエーテルを取り込ませる事により、エルフの記憶は私以外誰も知らない過去と化す……!」
魔物から刈り取った橙の球体が、オームギの持つコアへと吸収されていく。砂の上に落ちた残りの二つも拾い上げると、瞬く間に球体は全てコアの中へと収まった。
「貴方達がこれを求めている事は分かっている。でも、私だってこれを手放す訳にはいかない。それでも欲しいというのなら、力尽くで奪い取ってみなさい」
「シキさん! 結局は後か先か、コアを集める以上彼女とは戦う事になります!! これ以上好き勝手させる訳には……!!」
エリーゼは杖を構え、臨戦態勢へと移行した。白の魔女の目的が果たされた時、エルフの存在も彼女の持つコアもシキ達の記憶から消され、二度と手に入らなくなってしまう。
エルフの言いなりとなってしまっては彼女にいいように使われ捨てられると感じたエリーゼは、突発的に攻撃を仕掛けようとした。しかし。
「……ネオンッ!!」
「…………」
シキは声を張り、名を呼ばれた少女はスッとその特異な手をエリーゼの杖の前へと差し出した。
「……ッ、どうして!!」
術を発動しようものなら、ネオンに触れられ大切な杖が壊れてしまう。シキを想っての行動が彼に受け入れられず、エリーゼは困惑した。
「まだだ。まだ、あるのだろう。この大地に眠るエーテルコアが」
「あら、今度は察しが良いじゃない。貴方の言う通り、砂漠にはまだ見つかっていないコアが一つ残っている。それを見つけ出し、回収する。そのために私はずっとこの地で過ごして来たんだから」
「そして、それを見つけ出すにはお前の知識とネオンの力、双方が無ければならない。だからまだ、私達が戦うには早いのだ」
「…………分かりました。見つけるまで、ですからね」
シキに説得され、エリーゼは突き出した杖を引き、彼の意見に同意する。
まだ、この協力関係は続けなければならない。それがシキ達とオームギ、どちらにとっても都合が良かったからだ。
改めて目的の一致を確認した一行は、次なる手がかりを求めて死者の魂の眠る大地の上を歩いて行く。
「まさか……いや、だからこそ今の魔物が生まれた。という訳か……」
「エルフの身に人の武器。死ぬ直前まで争っていた者同士が死後交わり、魔物となって甦るなんて。皮肉な話よね」
人のエーテルとエルフのエーテル。そして自然のエーテルが交わる。敗者の記憶は怨念となって、新たな身体を手に入れ戻らない過去を求めて彷徨い続ける。
それが、この地に湧く魔物の正体であった。
「紛いなりにも元々はエルフだったせいか、コアのエーテルを探すと大体出て来るのは奴らか、奴らの遺品ばかりよ」
「魔物の正体は分かった……。それで、お前の持っているその橙の球はなんだ? 今の魔物のドロップ物か?」
「半分正解で半分不正解かな。ただ倒すだけじゃ、奴らは何も残さず大地へと消えていく。だから私は、この鎌で奴らのエーテルを刈り取る」
そう言うと、オームギは片手に持った大鎌を回し、構え直した。
「集断刀。正式名称は……なんだっけ。何でもエーテルを集めたり、断ったり出来る刃物? ダッサい名前だったから忘れちゃった」
「おいおい、なんだそれは……」
「とにかく、私は集断刀と呼んでいるわ。効果は言った通り、物質だろうが空間だろうが斬ったものからエーテルを集め、固形化させる。そうして出来たのが、この魔物からエルフのエーテルだけを集めた物質。この球体よ」
「では、オームギさんはそれを集めて、エルフのエーテルを回収。そしてこの世からエルフの痕跡を消そうとしているのですか?」
「ええ。ま、と言ってもこんな物ゴロゴロ持ち歩くのも難しいから、これを使うんだけどね」
そういうとオームギは大鎌を砂上に刺し、身を包む白マントの内から驚くべき物を取り出した。
「それはまさか……!」
シキは驚く。そんな彼を見て、オームギはにやりと笑った。
「橙のエーテルコア。エルフに与えられし秘宝。このコアに刈り取ったエーテルを取り込ませる事により、エルフの記憶は私以外誰も知らない過去と化す……!」
魔物から刈り取った橙の球体が、オームギの持つコアへと吸収されていく。砂の上に落ちた残りの二つも拾い上げると、瞬く間に球体は全てコアの中へと収まった。
「貴方達がこれを求めている事は分かっている。でも、私だってこれを手放す訳にはいかない。それでも欲しいというのなら、力尽くで奪い取ってみなさい」
「シキさん! 結局は後か先か、コアを集める以上彼女とは戦う事になります!! これ以上好き勝手させる訳には……!!」
エリーゼは杖を構え、臨戦態勢へと移行した。白の魔女の目的が果たされた時、エルフの存在も彼女の持つコアもシキ達の記憶から消され、二度と手に入らなくなってしまう。
エルフの言いなりとなってしまっては彼女にいいように使われ捨てられると感じたエリーゼは、突発的に攻撃を仕掛けようとした。しかし。
「……ネオンッ!!」
「…………」
シキは声を張り、名を呼ばれた少女はスッとその特異な手をエリーゼの杖の前へと差し出した。
「……ッ、どうして!!」
術を発動しようものなら、ネオンに触れられ大切な杖が壊れてしまう。シキを想っての行動が彼に受け入れられず、エリーゼは困惑した。
「まだだ。まだ、あるのだろう。この大地に眠るエーテルコアが」
「あら、今度は察しが良いじゃない。貴方の言う通り、砂漠にはまだ見つかっていないコアが一つ残っている。それを見つけ出し、回収する。そのために私はずっとこの地で過ごして来たんだから」
「そして、それを見つけ出すにはお前の知識とネオンの力、双方が無ければならない。だからまだ、私達が戦うには早いのだ」
「…………分かりました。見つけるまで、ですからね」
シキに説得され、エリーゼは突き出した杖を引き、彼の意見に同意する。
まだ、この協力関係は続けなければならない。それがシキ達とオームギ、どちらにとっても都合が良かったからだ。
改めて目的の一致を確認した一行は、次なる手がかりを求めて死者の魂の眠る大地の上を歩いて行く。
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