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第四章 風の連理編
12.商売の基本
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入国から一夜明け次の日。シキ達は早速、売りに出されたとされるエーテルコアの情報を求めて、再び何でも屋シャルトルーズの元へと訪れていた。
「さて、結界は解除したよ。入っておいで」
「お邪魔しますー」
「失礼する」
「…………」
入店の前にエリーゼが一人行き、ネオンの体質とシャルトルーズの張った結界の相性が悪い事を伝えた。エリーゼは当初彼が店先へと出て来ると予想していたが、何とわざわざ結界を解除し、ネオンもろとも店内へと招き入れたのだ。
「シャルトルーズさん、ありがとうございます。わざわざ防犯用の結界を解除していただけて……」
「なぁにお安い御用さ。お客さんの要望に応えるのは商売の基本だからね。ま、君たちだからってのもあるけど。それで、今日はどういった御用で?」
「昨日話していた、コアの件です」
「エーテルコアが売りに出されているというのは、本当なのか!?」
一歩踏み出しシャルトルーズへと顔を近づけるシキ。そんな彼の勢いのある情熱に触れながらも、動じることなくシャルトルーズはいつもの椅子へと腰かけ、取引用の机に肘を乗せる。
「あくまで噂話だけどね。なんでも新事業用にすぐさま資金が必要になったらしく、国庫に眠っていたコアへ白羽の矢が立ったらしいよ? まぁこの国はエーテル事業も盛んだし、コアが無くてもエーテルには困らないんじゃない?」
「大国でさえもエーテルコアは、ただのエーテルの塊として扱われているのか」
「私だってシキさんが言ってなければ信じてませんよ」
「あ、そうだよ。君の記憶がコアの中にあるってのは本当なのかい? そりゃまあエーテルは記憶の蓄積だけどさ、なんでまた失った記憶がそんな厄介な物の中にあるんだ?」
「それが分かったら苦労などしていない。だが私の記憶は、コアへ触れる事で少しずつ取り戻している。故に私は、コアを探すしかないのだ」
「ふぅん。じゃあさ、そこの鎧に取り付けてあるエーテル結晶に触れてみてよ」
シャルトルーズは片肘を着けたまま、もう片方の手で売り物の一つである、いかにも立派そうな鎧を指差す。シキはいくつかの鎧の中からエーテルの塊が取り付けられた鎧を見つけると、店主の言う通り片腕を上げ、なぞるようにその胸元に取り付けられた結晶へと触れた。
「……? いいが……ほら、これがどうかしたか?」
「……アレ、何も起きない? こう、ぶわっと鎧の歴史とかさ、見えてこない? 恐ろしい生き物の姿とか見えてこない??」
「いや、私はエーテルコアと呼ばれる物からしか記憶を取り戻せない。この鎧の結晶は違うのだろう?」
シャルトルーズはエリーゼから聞いたシキの記憶に着いて、エーテルの中に眠る記憶が読み取れる。という部分を拡大解釈し、他の手法でも利用出来ないか考えていた。その内の一つとしていわれのある鎧からその歴史を読み取り、箔を着けようと思いついていたのだ。
「なーんだ。ソレ竜の鎧だとか呼ばれてるから、その情報が得られたらもっと付加価値が上がると思ったんだけど。流石にそこまで便利じゃないんだね」
「……シャルトルーズさん、そろそろコアのお話を伺いたいのですが」
「おっとごめんごめん。ま、大体は昨日話した通りだよ。コアの噂が流れてからこの国は大盛り上がり! お宝求めて来訪者も増えて、どこもかしこも商売繁盛さ。あ、関係は無いんだけどね……ウチもいくつかエーテル結晶扱っててさ、良かったら買っていかないかい? ひょっとしたら……かもよ?」
「無いな」
「無いですね」
「あえっっっ!? ひょっとしたらひょっとするかも知れないじゃないさー!?」
「ならば触れて確かめるか? それがコアであれば買い取ろう」
「……コア探し、頑張ってねー」
適当に手を振って、店から立ち去るシキ達をシャルトルーズは見送った。
結局店に眠る商品を売りつける事が出来なかったが、それでもシャルトルーズは一人、誰も居なくなった店内で笑みを浮かべる。
「コアの判別方法にコアに眠る記憶か。もしそんなものが存在するなら、その記憶、買い取らせてくれないかなぁ~……なんて」
誰に向けるでもない言葉をそっと呟くと、シャルトルーズは再び結界を張り、来客を待つのであった。
「さて、結界は解除したよ。入っておいで」
「お邪魔しますー」
「失礼する」
「…………」
入店の前にエリーゼが一人行き、ネオンの体質とシャルトルーズの張った結界の相性が悪い事を伝えた。エリーゼは当初彼が店先へと出て来ると予想していたが、何とわざわざ結界を解除し、ネオンもろとも店内へと招き入れたのだ。
「シャルトルーズさん、ありがとうございます。わざわざ防犯用の結界を解除していただけて……」
「なぁにお安い御用さ。お客さんの要望に応えるのは商売の基本だからね。ま、君たちだからってのもあるけど。それで、今日はどういった御用で?」
「昨日話していた、コアの件です」
「エーテルコアが売りに出されているというのは、本当なのか!?」
一歩踏み出しシャルトルーズへと顔を近づけるシキ。そんな彼の勢いのある情熱に触れながらも、動じることなくシャルトルーズはいつもの椅子へと腰かけ、取引用の机に肘を乗せる。
「あくまで噂話だけどね。なんでも新事業用にすぐさま資金が必要になったらしく、国庫に眠っていたコアへ白羽の矢が立ったらしいよ? まぁこの国はエーテル事業も盛んだし、コアが無くてもエーテルには困らないんじゃない?」
「大国でさえもエーテルコアは、ただのエーテルの塊として扱われているのか」
「私だってシキさんが言ってなければ信じてませんよ」
「あ、そうだよ。君の記憶がコアの中にあるってのは本当なのかい? そりゃまあエーテルは記憶の蓄積だけどさ、なんでまた失った記憶がそんな厄介な物の中にあるんだ?」
「それが分かったら苦労などしていない。だが私の記憶は、コアへ触れる事で少しずつ取り戻している。故に私は、コアを探すしかないのだ」
「ふぅん。じゃあさ、そこの鎧に取り付けてあるエーテル結晶に触れてみてよ」
シャルトルーズは片肘を着けたまま、もう片方の手で売り物の一つである、いかにも立派そうな鎧を指差す。シキはいくつかの鎧の中からエーテルの塊が取り付けられた鎧を見つけると、店主の言う通り片腕を上げ、なぞるようにその胸元に取り付けられた結晶へと触れた。
「……? いいが……ほら、これがどうかしたか?」
「……アレ、何も起きない? こう、ぶわっと鎧の歴史とかさ、見えてこない? 恐ろしい生き物の姿とか見えてこない??」
「いや、私はエーテルコアと呼ばれる物からしか記憶を取り戻せない。この鎧の結晶は違うのだろう?」
シャルトルーズはエリーゼから聞いたシキの記憶に着いて、エーテルの中に眠る記憶が読み取れる。という部分を拡大解釈し、他の手法でも利用出来ないか考えていた。その内の一つとしていわれのある鎧からその歴史を読み取り、箔を着けようと思いついていたのだ。
「なーんだ。ソレ竜の鎧だとか呼ばれてるから、その情報が得られたらもっと付加価値が上がると思ったんだけど。流石にそこまで便利じゃないんだね」
「……シャルトルーズさん、そろそろコアのお話を伺いたいのですが」
「おっとごめんごめん。ま、大体は昨日話した通りだよ。コアの噂が流れてからこの国は大盛り上がり! お宝求めて来訪者も増えて、どこもかしこも商売繁盛さ。あ、関係は無いんだけどね……ウチもいくつかエーテル結晶扱っててさ、良かったら買っていかないかい? ひょっとしたら……かもよ?」
「無いな」
「無いですね」
「あえっっっ!? ひょっとしたらひょっとするかも知れないじゃないさー!?」
「ならば触れて確かめるか? それがコアであれば買い取ろう」
「……コア探し、頑張ってねー」
適当に手を振って、店から立ち去るシキ達をシャルトルーズは見送った。
結局店に眠る商品を売りつける事が出来なかったが、それでもシャルトルーズは一人、誰も居なくなった店内で笑みを浮かべる。
「コアの判別方法にコアに眠る記憶か。もしそんなものが存在するなら、その記憶、買い取らせてくれないかなぁ~……なんて」
誰に向けるでもない言葉をそっと呟くと、シャルトルーズは再び結界を張り、来客を待つのであった。
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