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第五章 永遠の探求者編
11.コアの勾引かし
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異常を告げる警報の中。広い通路に一人残ったミクロフィラは、手数を用いてアルパイン達を凌駕する。
腹に強力な一撃を受けたアルパインは思わず仰け反り、驚きと敵意の混じった眼差しでミクロフィラを睨み返した。
「テメェ、騙しやがったな!!」
「騙す? 心外ですね。視界を遮ったまでですよッ!」
「そーかいそーかい、ならこれでも食らってろよォ!」
衝撃で後退りするアルパインは、無理やり腕を振り回しミクロフィラを薙ぎ払おうとする。しかしアルパインの攻撃を察知したミクロフィラは、自身の周りに落ちた枯れ葉を瞬時に蹴り上げる。そして。
「あなたの甘さはその傲慢、爆葉ッッッ!!」
「ビュン×3ーーーッ! 間一髪ネ!」
蹴りによって再び空を舞った枯れ葉が、ミクロフィラの合図と共に真っ赤に染まる。アルパインの全身を光が包んだその時、後方からスリービーが竜巻の魔術を放ち、辺りの光を吹き飛ばし事なきを得る。
逆に自身の放った爆発を受ける形となったミクロフィラであったが、彼女の視線は前を見据えて微動だにしていない。自身の魔術すら涼しい顔で受け流し、ミクロフィラは冷静に戦況を分析する。
「エーテルで岩の身体を作り、それを魔動体と定義しているのでしょうか。決まった魔動体を用いないとは、スフェーンも手を替え品を替え意表を突いて来ますね」
「んあ? 急に何を言ってんだよォ!!」
アルパインが岩石の腕を振り回し、後方からスリービーが竜巻の牙や息で追撃する。
少しずつ敵を押し込みながら猛追するアルパインとスリービーに、遠方から見守るカンパネラと下手に戦況へ影響が出ないよう彼女を止めるヅッチ。
カンパネラとヅッチが離れすぎないように追っていると、不意に前を進む二人が足を止めていた。
二人が睨むその奥でミクロフィラは一人何か呟きながら、進んで来るアルパイン達の前に立ち塞がる。
「……ただの魔術を高出力で放っている訳では無い、なるほど。フードのあなたは頭を本体として、両の手袋が魔動体となっているのですね。さしずめ本体の魔術を両手の魔動体からも発動させて、魔術の重ね掛けを行っているといったところでしょうか。……で、あればッ!」
魔術の相性が悪いと見るや否や、ミクロフィラは目の前のアルパインを避け後方に立つスリービーを狙い地面を蹴る。高威力の竜巻を攻略するため、ミクロフィラは枯れ葉と爆発の魔術を細かく何度も発動する。高い身体能力と相まって通路を不規則に駆け巡り、ミクロフィラは一瞬にしてスリービーの真上を取っていた。
「っ、こっちを狙ってきたノ!? 早過ぎて狙いが定まらないヨ……!」
「あなたの甘さは一瞬の目視! 爆草ッッッ!!」
「予測済みです! 魔術規律:ドババガバザバ!!」
「これは複合魔術!? しかし……ッ!」
スリービーの真上から急降下するミクロフィラを、まだらな光が包み込む。
ヅッチはスリービーを狙ってきた相手の行動を先読みし、魔術を罠のように発動させていた。
目の前から襲い掛かる複数の光を見て、ミクロフィラはそれが複数の魔術を合わせた攻撃であると見破る。
同時に装飾の付けられた右腕を突き出し、中心にある結晶から黄のエーテルを大量に放出させて全身を包み込む。そのまま魔術を発動させ、身にまとったエーテルを枯れ葉の山に変化させる。そしてその中へと身を潜め、枯れ葉の衣によってミクロフィラはヅッチの魔術を凌ぎ切った。
あまりの機転と対応力に驚愕しながら、その能力を支える彼女の魔道具を見て、ヅッチは力の正体を突き止める。
「動きも物量も桁外れです! やはりあの黄色い光はエーテルコア……!!」
「ウチらが追ってたもの以外にも、ナルギットから外に流れていたようネ……!」
「流れた? 違いますね。私は私の意思で、サルビア様を慕っているまでですよッ! 爆葉ッ!!」
「じゃあコアはアタシが貰ってやるよォ! 必殺、不揃い巨人の右ストレートォォォ!!」
枯れ葉の山から姿を現したミクロフィラは、防御に使った枯れ葉の残りを爆発させる。スリービーへの攻撃に加え、ヅッチが張り巡らせているであろう複合魔術の罠からも爆発の衝撃を利用して離れる。だが、一瞬でも背後を晒したミクロフィラに対し、アルパインは隙を逃さず追撃を加えていた。
後方には底の見えない複合魔術の罠、前方からは巨大な岩石の拳が迫る。それでもミクロフィラは一切の焦りを見せず、勢いのままにアルパインへと真っ向から立ち向かう。
「こっちへ来るかい! いいぜ、そのまま叩き潰してやるよォ!!」
「言ったでしょう。あなたの甘さはその傲慢であるとッ!」
「アルちゃん危ないわ!」
「んあっ?」
ミクロフィラは細かな爆発で軌道を逸らし、寸前のところでアルパインの拳を回避する。吐かれた捨て台詞に思わずイラついたアルパインであったが、直後にカンパネラの声が響き自身に危機が迫っていると悟った。
しかしカンパネラの指す危機が何か分からない。目の前のミクロフィラは攻撃を避ける事に必死で反撃に転じている様子はない。当然、アルパイン自身が放った攻撃の行方には注意を払っており、奥に立つ仲間達へ当たるよりも前に魔術は解除され岩石の拳はエーテルの光となって消えていく。
であればいったい何が起こっているのか。アルパインは危機の原因を知るよりも先に、強い地響きによって重心を奪われ、片膝を付いてしまう。
「んだよ、何が起こってんだよォ!?」
「楽しみの~~~カンパネラ~~~!! 不意打ちなんて酷い事は止めて、目を向き合って戦った方がお互い楽しいと思うわ♪ あなた方もそう思わないかしら?」
アルパインのすぐ後ろで、小粋な足取りで踊るカンパネラが目に映る。驚いて視線を上げると、長身であるカンパネラのさらに倍ほどの大きさを放つ魔物が数匹、アルパインの後ろに並んでいた。
アルパインへ向けられた魔物の攻撃を、カンパネラは身を乗り出して止めに入り、無意識のうちに使っている空間魔術によって無力化する。
「援軍だァ!? まさかこれを狙って一人残ったのかよォ!?」
「おやおや、それだけではありませんよ」
魔物達の後ろから怪しい影が迫る。土埃の中から現れたのは、真っ赤な給仕服に身を包んだ女と長毛の猫であった。
「折角手配して頂いた魔物を止めるとは、不思議な魔術を使いますねぇ。これはコア以外にも良い研究材料が手に入りそうです」
「ヴァーミリオン様が何故ここに!? 使いの者達はどこへ……!?」
「彼らは先に帰らせましたよ。受け取りは無事に済みましたから、あとは私に任せて君も本来の業務へと戻ってください」
「かしこまりました。……後はお願い致しますッ!!」
勇ましい返事と共に地面を蹴り、ミクロフィラは通路の奥へと消えていく。そして入れ替わるように、通路の奥からぞろぞろと魔物が姿を現す。
ざっと見て十体前後。広い通路を埋め尽くすように、給仕服の女と長毛の猫の周りを大型の魔物が立ち尽くす。
そして、警報の音と点滅が止まった。
アルパイン達はそこでやっと、自分達が誘い込まれたと気づく。
来た道を戻る事はなんとか出来るだろうが、そもそもとしてこの空間への入り口は無かったのだから戻っても追い詰められるだけだ。
後戻り出来ないほどに入り込んでしまった獲物達は、窮地の中で生きてどうにか帰る術を見つけ出そうとした。
「ボクには見えています。あたり一帯へ溢れる赤いエーテルの中に、外部と繋がったであろうエーテルの形跡が。だからまだ手は残っています!」
「だったらどんな手でも使って、抜け出し方を教えてもらいまショ。例えば目の前の人達とかからネ……!」
「あっ、みんな見てっ。あそこにもコアがあるわ~♪」
「そいつはとーっても嬉しい情報だなァ。ったく次から次へと、ここはコアの採掘場か何かよォ?」
「おやおや、面白い事を言いますねぇ。確かにここは今から採掘場になりそうです。最もコアを頂くのは、私になりますが」
ニヤリと笑うと同時、長毛の猫の首元から禍々しい赤の輝きが放たれる。
輝きを受けた魔物達の目が、同じように血走った赤へと変色する。
コアを求める者達は、互いの目的を果たすため記憶へ願いを刻むのであった。
腹に強力な一撃を受けたアルパインは思わず仰け反り、驚きと敵意の混じった眼差しでミクロフィラを睨み返した。
「テメェ、騙しやがったな!!」
「騙す? 心外ですね。視界を遮ったまでですよッ!」
「そーかいそーかい、ならこれでも食らってろよォ!」
衝撃で後退りするアルパインは、無理やり腕を振り回しミクロフィラを薙ぎ払おうとする。しかしアルパインの攻撃を察知したミクロフィラは、自身の周りに落ちた枯れ葉を瞬時に蹴り上げる。そして。
「あなたの甘さはその傲慢、爆葉ッッッ!!」
「ビュン×3ーーーッ! 間一髪ネ!」
蹴りによって再び空を舞った枯れ葉が、ミクロフィラの合図と共に真っ赤に染まる。アルパインの全身を光が包んだその時、後方からスリービーが竜巻の魔術を放ち、辺りの光を吹き飛ばし事なきを得る。
逆に自身の放った爆発を受ける形となったミクロフィラであったが、彼女の視線は前を見据えて微動だにしていない。自身の魔術すら涼しい顔で受け流し、ミクロフィラは冷静に戦況を分析する。
「エーテルで岩の身体を作り、それを魔動体と定義しているのでしょうか。決まった魔動体を用いないとは、スフェーンも手を替え品を替え意表を突いて来ますね」
「んあ? 急に何を言ってんだよォ!!」
アルパインが岩石の腕を振り回し、後方からスリービーが竜巻の牙や息で追撃する。
少しずつ敵を押し込みながら猛追するアルパインとスリービーに、遠方から見守るカンパネラと下手に戦況へ影響が出ないよう彼女を止めるヅッチ。
カンパネラとヅッチが離れすぎないように追っていると、不意に前を進む二人が足を止めていた。
二人が睨むその奥でミクロフィラは一人何か呟きながら、進んで来るアルパイン達の前に立ち塞がる。
「……ただの魔術を高出力で放っている訳では無い、なるほど。フードのあなたは頭を本体として、両の手袋が魔動体となっているのですね。さしずめ本体の魔術を両手の魔動体からも発動させて、魔術の重ね掛けを行っているといったところでしょうか。……で、あればッ!」
魔術の相性が悪いと見るや否や、ミクロフィラは目の前のアルパインを避け後方に立つスリービーを狙い地面を蹴る。高威力の竜巻を攻略するため、ミクロフィラは枯れ葉と爆発の魔術を細かく何度も発動する。高い身体能力と相まって通路を不規則に駆け巡り、ミクロフィラは一瞬にしてスリービーの真上を取っていた。
「っ、こっちを狙ってきたノ!? 早過ぎて狙いが定まらないヨ……!」
「あなたの甘さは一瞬の目視! 爆草ッッッ!!」
「予測済みです! 魔術規律:ドババガバザバ!!」
「これは複合魔術!? しかし……ッ!」
スリービーの真上から急降下するミクロフィラを、まだらな光が包み込む。
ヅッチはスリービーを狙ってきた相手の行動を先読みし、魔術を罠のように発動させていた。
目の前から襲い掛かる複数の光を見て、ミクロフィラはそれが複数の魔術を合わせた攻撃であると見破る。
同時に装飾の付けられた右腕を突き出し、中心にある結晶から黄のエーテルを大量に放出させて全身を包み込む。そのまま魔術を発動させ、身にまとったエーテルを枯れ葉の山に変化させる。そしてその中へと身を潜め、枯れ葉の衣によってミクロフィラはヅッチの魔術を凌ぎ切った。
あまりの機転と対応力に驚愕しながら、その能力を支える彼女の魔道具を見て、ヅッチは力の正体を突き止める。
「動きも物量も桁外れです! やはりあの黄色い光はエーテルコア……!!」
「ウチらが追ってたもの以外にも、ナルギットから外に流れていたようネ……!」
「流れた? 違いますね。私は私の意思で、サルビア様を慕っているまでですよッ! 爆葉ッ!!」
「じゃあコアはアタシが貰ってやるよォ! 必殺、不揃い巨人の右ストレートォォォ!!」
枯れ葉の山から姿を現したミクロフィラは、防御に使った枯れ葉の残りを爆発させる。スリービーへの攻撃に加え、ヅッチが張り巡らせているであろう複合魔術の罠からも爆発の衝撃を利用して離れる。だが、一瞬でも背後を晒したミクロフィラに対し、アルパインは隙を逃さず追撃を加えていた。
後方には底の見えない複合魔術の罠、前方からは巨大な岩石の拳が迫る。それでもミクロフィラは一切の焦りを見せず、勢いのままにアルパインへと真っ向から立ち向かう。
「こっちへ来るかい! いいぜ、そのまま叩き潰してやるよォ!!」
「言ったでしょう。あなたの甘さはその傲慢であるとッ!」
「アルちゃん危ないわ!」
「んあっ?」
ミクロフィラは細かな爆発で軌道を逸らし、寸前のところでアルパインの拳を回避する。吐かれた捨て台詞に思わずイラついたアルパインであったが、直後にカンパネラの声が響き自身に危機が迫っていると悟った。
しかしカンパネラの指す危機が何か分からない。目の前のミクロフィラは攻撃を避ける事に必死で反撃に転じている様子はない。当然、アルパイン自身が放った攻撃の行方には注意を払っており、奥に立つ仲間達へ当たるよりも前に魔術は解除され岩石の拳はエーテルの光となって消えていく。
であればいったい何が起こっているのか。アルパインは危機の原因を知るよりも先に、強い地響きによって重心を奪われ、片膝を付いてしまう。
「んだよ、何が起こってんだよォ!?」
「楽しみの~~~カンパネラ~~~!! 不意打ちなんて酷い事は止めて、目を向き合って戦った方がお互い楽しいと思うわ♪ あなた方もそう思わないかしら?」
アルパインのすぐ後ろで、小粋な足取りで踊るカンパネラが目に映る。驚いて視線を上げると、長身であるカンパネラのさらに倍ほどの大きさを放つ魔物が数匹、アルパインの後ろに並んでいた。
アルパインへ向けられた魔物の攻撃を、カンパネラは身を乗り出して止めに入り、無意識のうちに使っている空間魔術によって無力化する。
「援軍だァ!? まさかこれを狙って一人残ったのかよォ!?」
「おやおや、それだけではありませんよ」
魔物達の後ろから怪しい影が迫る。土埃の中から現れたのは、真っ赤な給仕服に身を包んだ女と長毛の猫であった。
「折角手配して頂いた魔物を止めるとは、不思議な魔術を使いますねぇ。これはコア以外にも良い研究材料が手に入りそうです」
「ヴァーミリオン様が何故ここに!? 使いの者達はどこへ……!?」
「彼らは先に帰らせましたよ。受け取りは無事に済みましたから、あとは私に任せて君も本来の業務へと戻ってください」
「かしこまりました。……後はお願い致しますッ!!」
勇ましい返事と共に地面を蹴り、ミクロフィラは通路の奥へと消えていく。そして入れ替わるように、通路の奥からぞろぞろと魔物が姿を現す。
ざっと見て十体前後。広い通路を埋め尽くすように、給仕服の女と長毛の猫の周りを大型の魔物が立ち尽くす。
そして、警報の音と点滅が止まった。
アルパイン達はそこでやっと、自分達が誘い込まれたと気づく。
来た道を戻る事はなんとか出来るだろうが、そもそもとしてこの空間への入り口は無かったのだから戻っても追い詰められるだけだ。
後戻り出来ないほどに入り込んでしまった獲物達は、窮地の中で生きてどうにか帰る術を見つけ出そうとした。
「ボクには見えています。あたり一帯へ溢れる赤いエーテルの中に、外部と繋がったであろうエーテルの形跡が。だからまだ手は残っています!」
「だったらどんな手でも使って、抜け出し方を教えてもらいまショ。例えば目の前の人達とかからネ……!」
「あっ、みんな見てっ。あそこにもコアがあるわ~♪」
「そいつはとーっても嬉しい情報だなァ。ったく次から次へと、ここはコアの採掘場か何かよォ?」
「おやおや、面白い事を言いますねぇ。確かにここは今から採掘場になりそうです。最もコアを頂くのは、私になりますが」
ニヤリと笑うと同時、長毛の猫の首元から禍々しい赤の輝きが放たれる。
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