堕ちた双子

ゆきみまんじゅう

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双子の過去

将来の夢

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今から10年ほど前、陸斗と海斗がまだ幼稚園児だった頃、2人は幼馴染の遥華とともに、河川敷に遊びに来ていた。

バトミントンやサッカーで遊んだ後、川岸段丘に座って、海斗が持ってきたシャボン玉を吹きながら、3人は一休みしていた。

「ねえ、兄さん。大きくなったら、何になりたい?」
「何だよ急に?」

突拍子にそんな事を聞かれて、陸斗は首を傾げた。

「ううん、何となく聞きたかっただけ。」

海斗はそう言ったが、何か理由があるのではないかと、陸斗は何となく察した。

「はーい!私は、大きくなったら歌手になりたいな。そして目指すはアカデミー賞!」
「何で遥華が言うんだよ。大体、歌手になっても、アカデミー賞なんてもらえないよ。」

遥華の空気の読めなさにため息をつきつつ、陸斗はツッコミを入れた。

「えーっ⁉︎いいじゃん。せっかくだからも、みんなで言い合おうよ!」

本当はちょっぴり恥ずかしくて、言うか迷っていたが、この流れでは言わずを得なかった。

「……じゃあ、言うけど、笑うなよ。」
「笑わないよ!ねっ、カイくん。」

遥華が視線を送ると、海斗は小さく頷いた。

「そうか、分かったよ……。俺、大きくなったら、レーサーになって、世界チャンピオンになりたいんだ。」

もちろん車なんて運転した事はない。

ただ最近、偶然テレビでレースを見て、憧れただけだった。

「すごーい!!カッコいいじゃん。じゃあ、大きくなったら、2人でレッドカーテン歩こうね!」
「それを言うならレッドカーペットだろ。」

まるで漫才のような2人の会話を聞きながら、海斗はクスリと笑った。

「じゃあ、最後はカイくんだね。何になりたいの?」

そんな海斗の様子を気にする様子もなく、遥華が身を乗り出して見つめてきた。

「えっ……?ぼ…僕は……。」

海斗は困惑して言葉を詰まらせたが、やがて少し目線を落として口を動かした。

「僕は、車を直す人になりたい。そうしたら、兄さんの事、助けられるから。」

果たしてそれは、本当に自分の夢と言えるのだろうかと、陸斗は疑問に思った。

「海斗、別に俺を助けようとか思わなくていい。他に何かあるだろ?例えば警察官とか、サッカー選手とかさ。」

しかし海斗は首を強く横に振って、聞く耳を持たなかった。

「違うよ!僕は、兄さんとずっと一緒にいたいんだ。」

それは、陸斗も思っていることだった。

だが、いざ面と向かって言われると、恥ずかしくて、つい顔を背けてしまった。

「へえー、そうなの?でも、いつまでも一緒にいるなんて無理だよ。だって、いつかはみんな、結婚しちゃうんだもん。」

遥華によって、あっさりと現実を突きつけられた海斗は、唇を噛み締めながら、両手の拳を握りしめた。

慌てて陸斗は、海斗を抱きしめて、そっと頭を撫でた。

「安心しろ。俺は結婚なんてしない。海斗とずっと一緒にいる。そして、兄ちゃんとして、海斗を守るから。」

すると海斗は安心したのか、小さく微笑んだ。

「もう、本当に、リッくんとカイくんはラブラブなんだからあ。羨ましー。」

遥華が茶化すが、陸斗の耳には入ってこなかった。

海斗に言った言葉には、嘘偽りなどなかった。

だがこの言葉が、のちに悲劇を引き起こすことなど、陸斗は知る由もなかった。
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