堕ちた双子

ゆきみまんじゅう

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双子の過去

いじめ

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それから数年後、陸斗と海斗が小学生になった頃だった。

内気だった海斗は、クラスで中々友達が出来ずにいた。

低学年の時は、まだクラスに陸斗か遥華がいたために、孤立することはなかったが、小学4年生の頃、とうとう離れ離れになってしまい、同級生に目をつけられた。

初めのうちは変なあだ名をつけられたり、パシリにされる程度だったが、次第にエスカレートし、ついには人気のない場所に連れて行かれて、ストレスの吐口として、殴る蹴るの暴行をされた。

だがそれでも、海斗はその事を、陸斗たちに知られないよう、ひた隠ししていた。

そんなある昼休みの事、いつものように校舎裏に呼び出された海斗は、いじめっ子3人組に取り囲まれていた。

「おい、害虫。今日こそ、あれ、持ってきたか?」

あれというのは、ゲームソフトの事である。

今まで何度かこういったように、物を要求されては渡していたが、返ってきたことは一度もなかった。

なので海斗は、もう何も持ってくるつもりはなく、ただ黙って俯いていた。

「何無視してんだよ、オラッ!」

海斗の態度に腹が立ったらしく、いじめっ子の1人が、腹を殴ってきた。

たまらず海斗は腹を抱えたが、声は押し殺した。

下手に叫んだりすると、かえって調子に乗らせてしまうと知っているからだ。

「何とか言ったらどうなんだよ!」

四方八方から殴り蹴られ、それでも海斗は抵抗する気は全くなかった。

そんな海斗の態度に飽きたのか、いじめっ子たちは暴行を中断した。

そしていじめっ子の1人が、海斗を見下ろしてニヤリと笑った。

「なあ、お前、兄貴がいたよな?お前が言う事聞かないなら、兄貴に頼もっかなー。」

それを聞いた瞬間、海斗はゆっくりと立ち上がった。

そして、両手の拳を握りしめて、体を震わせた。

陸斗が巻き込まれる事は、海斗にとって、もっとも堪え難い事だったからだ。

「………なら、僕は…………。」

海斗は下を向いたまま、聞き取れないほどの小さな声で、何か呟いた。

「あ?文句があるなら、はっきり言えよ!」

いじめっ子の1人が、海斗の胸ぐらを掴んで、拳を振り上げたまま、海斗を思い切り睨みつけた。

顔面を殴られると思い、海斗が目を瞑った時だった。

「おい、お前ら!何やってるんだ!!」

どこからか男性の声が聞こえたかと思えば、海斗はすんなりと解放された。

恐る恐る瞼を開くと、狼狽えているいじめっ子たちと、後方から現れた、血相を変えた教師と、心配そうな様子の陸斗の姿が見えた。

「せっ…先生、これには訳が──」
「事情は陸斗からある程度聞いてある。とにかく、今すぐ職員室に来い!」

先生の剣幕に圧倒され、黙り込んだいじめっ子たちは、言われるがまま職員室へと向かっていった。

それを見届けた海斗が胸を撫で下ろしていると、陸斗が後ろから、海斗を思い切り抱きしめた。

「えっ……⁉︎どうしたの、兄さん?」

突然のことに、海斗は戸惑いつつ、少し胸が高鳴った。

しかし陸斗の異変に気づき、すぐに冷静になった。

「……なんで、泣いてるの?」

顔を見なくとも、重ねた体に伝わる振動と、耳元で聞こえる嗚咽で、大体は想像がついた。

「………俺、海斗を守るって約束したのに、守れなかった。これじゃ、兄ちゃん失格だ……!」

思えば、海斗の目の前で、陸斗が泣いたのは初めてだった。

今まで海斗が見てきた陸斗は、優しくて頼り甲斐のある姿ばかりだった。

それが今は、触れただけでも割れてしまいそうなガラス細工のように思えた。

「どうして謝るの?こうして助けてくれたでしょ。」

それでも陸斗は首を横に振り、先程よりも少し強く抱きしめた。

「もっと早く気づいてやれたら、こんなに傷だらけにさせずに済んだんだ。それに、俺がもっと強ければ、先生に頼らなくたって、海斗を助けられたのに……。」

一向に自分を責めるのをやめない陸斗を哀れみ、海斗は陸斗の腕にそっと触れた。

「そんなことないよ。僕にとって兄さんは兄さんなんだ。今のままの兄さんが僕は好きなんだ。だから、兄さん失格なんて言わないで。」

海斗がありのまま思った事を伝えると、とうとう堪えきれなくなった陸斗が、声を上げて泣き出した。

その様子を肌で感じながら、海斗は陸斗が泣き止むまで、立ち尽くしていた。
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