堕ちた双子

ゆきみまんじゅう

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狂気の伝染

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無我夢中に走り続け、気がつけば自分の家にいた。

部屋に戻ると、一気に力が抜けてしまい、私はその場に崩れ落ちた。

「うっ…ううっ……うっ……。」

さっきの光景が何度も思い出され、とうとう我慢できず泣いてしまった。

あの部屋にいたリッくんは、もう私の知っている、優しくて頼り甲斐のあるリッくんではなかった。

あんな、あんな姿なんて、見たくなかった。

「……っん、どうして………リッくん…。」

けれども理由はすぐ分かった。

カイくんが、リッくんを監禁して、あんな、淫らな事を無理矢理させていたんだ。

それなのに私は、リッくんの姿にショックを受けて、逃げてしまった。

あれだけ、リッくんを救いたいと思っていたのにだ。

「…………ダメ、いつまでも、泣いてちゃ。」

そうだ、思い出した。

私が、私しかリッくんを助けられないのだから、しっかりしないといけない。

私は涙を拭い決意を固めると、スマホを取り出し、110番にかけた。

「はい、110番緊急電話です。事件ですか?事故ですか?」

するとすぐに男性の警察官が出た。

「あっ、はい、事件です!友達が、監禁されました!」
「それは、いつの事ですか?」
「えっ…知りません。でも最近です!」
「場所は、どこですか?」
「友達の家です!」

私はありのまま、正直に話した。

「………それでは、 犯人は誰だか分かりますか?」
「もちろんです!犯人は、友達です!!」

私がそう言うと、警察官は少し考え込むように黙った。

「………では、それを証明する証拠はありますか?」

えっ、証拠……?

そんなものは、全く持ってなく、私は黙り込んだ。

「………そうですね。実のところ、こちらとしては、こう言う事件に関しては、何か決定的な証拠が無いと動けないんですよ。」

その時やっと、自分自身の失態に気付き、私は呆然とした。

あの時、リッくんを見た時に、私は現実が受け入れられなくて、逃げ出してしまった。

リッくんを助ける、絶好のチャンスだったのにだ。

そう思うと、自分が情けなくて堪らなくなった。

「……証拠は、無いですけど、本当なんです。一刻を争う事態なんです。だから、今すぐ乗り込んでください、お願いします!!」

私は電話越しに頭を下げ、必死にお願いした。

「ですから、証拠が無ければ、こちらとしては手が出せないんです。何か他に分かりましたら、またお電話いただければと思います。」

この警察官、適当に話を切り上げようとしている。

こっちはこんなにも訴えているのに、私の証言を嘘だと思っているんだ!

そう思うと、今度は警察官に怒りを覚えた。

「………分かりました。証拠が手に入ったら、また電話します!」

私は感情に任せて、勢いよく電話を切った。

こうなったら、意地でも証拠を手に入れてやる。

そう、決意して──。
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