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序章1 超常の力! 恐怖の奈美坂精神病院!
第3話 秘密
しおりを挟む一見すると、爽やかな関係にも見える隼人と香代だが、そんなふたりにも、歪んだ側面はあった。それは、性的な意味である。ある日、隼人は香代に呼び出された。場所は、奈美坂精神病院の裏庭の片隅。ここでの生活が長い彼女は、監視カメラが届かない場所を知っていた。
「ねえ、隼人。お願いがあるんだけど」
そう言う香代の顔が、少しだけ赤い。いつもは歯切れが良いが、今日は違った。
「なにさ?」
隼人は訊いた。嫌なことでなければ、引き受けるつもりだ。
「確実にきいてくれるって約束したら、お願いしてあげるわ」
なぜか、頼みごとをする香代のほうが条件を突きつけてきた。
「まわりくどいなぁ」
「ね、聞いてよ。そして、誰にも話さないって、約束して」
「だから、なにさ?」
「絶対秘密、口外絶交よ」
「わかった」
「ホント?」
「うん」
「じゃあ、言うわ」
香代はうしろに手を組み、告げた。
「隼人の、おちんちん、見せて」
「はあ?」
「きいてくれるでしょ」
「なんで?」
香代は、石ッころを蹴っ飛ばした。
「見たこと、ないから……」
「お父さんのは?」
「うちは、母子家庭よ」
それは、はじめて知った。
「あたしたちは、いずれ化け物や犯罪者と戦うことになるわ。そしたら、いつ死ぬかもわからない。男の体を知らずに、天国になんて行きたくないもの」
香代は言った。真面目な願いなのか。
「だから、見せて」
深刻な顔をされた。彼女のおかげで、孤立からは救われている。恩返しになるのか。隼人は押しに弱く、断りきれない。
「でも、みんなに見られたら……」
「大丈夫よ、急げば」
少年は、ズボンを下ろした。白いブリーフが覗いた。
「い、一回だけだよ?今日だけだよ?」
「うん……」
ブリーフを下ろした。隼人の性器は歳相応のものである。毛は生えておらず、剥けてもいない。少女のような美しい顔をしているのに、“それ"がある。ふたなりを連想させた。
「わあ……」
口に手を当て、香代は見た。彼女が見た最初の男性器である。隼人の顔は真っ赤だった。
「も、もう、しまっていい?」
「もうちょっと、もうちょっと」
香代が、それに顔を近づけてきた。その距離がやばい。
「こんなふうになってるんだ……」
彼女が言って、触ろうとした、そのとき。
「きゃっ!」
香代は、ちいさく悲鳴をあげ、尻もちをついてしまった。隼人は、勃起したのだ。見られる快感なのか、それとも、彼女の手が触れそうになったからか。
「なんで、こんなんなってるのよ」
「だって……」
隼人は涙目になってしまった。情けないし、恥ずかしい。
「あ、あんた、ひょっとして、変なこと考えて興奮しちゃったの?」
香代が言った。次の瞬間、彼女は、腹を抱えて笑いだした。
「あはは。隼人って、かわいい顔に似合わず、いやらしいのねぇ」
隼人は泣き出してしまった。ちょっとからかいすぎたのかと、香代は反省した。
「ごめんごめん、泣き止んでよ。おわびに、あんたの言うことひとつだけきいたげるわ」
「ホント?」
隼人は、鼻をすすりながらズボンを上げ、言った。
「ホントホント」
まだ、少し笑っていた。隼人は、やり返した。
「香代のおっぱい、触らせてよ」
それを聞き、今度は香代が困った。
「えー、なんでよ?」
「僕だって、女の体を知らないまま、死にたくないもん」
「ダメよ。これは、好きな男ができたときのために、とってあるんだもの」
「でも、それじゃ不公平だよ」
隼人に言われ、香代は反論できなかった。正論である。
「い、一回だけよ、今日だけよ?」
そう言って、香代は目をつむった。冷えるのでブルゾンを着けている。隼人は大胆にも、その中に手を入れた。
「んっ……!」
香代は隼人に胸を触られ、身をこわばらせた。軽く揉まれた。くすぐったい。
「も、もう、いいでしょ」
「もう少し」
「な、長いわよ、あたしより」
「んなこと、ないよ」
「あ……はぁっ……」
逆に興奮した香代の息が荒くなる。変な気持ちになる前に、ブルゾンの前を合わせた。
「もう、終わり!」
香代は、ボタンをとめ、そして訊いてみた。
「ど、どうだった?」
それに対する隼人の返答は、失礼なものだった。
「ぺたんこだった」
「もう、当たり前でしょ!」
言うと香代は、隼人の肩を、ぽかぽかと叩いた。
「いてて……」
「きょ、今日のことはナイショよ。みんなに知られたら、お互い困るんだからねっ!」
この日、ふたりの間に“秘密"ができた。それは、生涯、守られた。
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