107 / 146
第三章 怪奇、幽霊学習塾! 退魔剣客ふたたび
第26話 エロスの浴室
しおりを挟む「なにを、慌てているのだ……?」
首を傾げ、久美子。その姿は全裸である。白くなめらかな美肌が浴室の灯りの下、妖艶に輝いていた。
「だ、だって……まだ、僕が入ってるんだよ?」
と、隼人。顔が赤いのは、風呂が熱いからではない。
「君が、あまりにも遅いので、私も一緒に入ることにしたのだ……」
そう言う久美子との距離が近すぎた。単身用のバスルームは狭い。湯船につかる隼人のすぐ、ちょうど目の前に大人の女の股間があるのだ。きわどいパンティを穿く機会が多いせいか、陰毛はきれいに整えられている。その位置は、ちょうど真正面。美少年の眼前に黒く生えている。
「ぼ、ぼぼぼぼぼぼぼぼぼ僕は、男だよッ……!」
と、慌てふためく隼人。
“生意気なことを……"
などと、無口な久美子は言わない。そのまま形の良い尻を椅子の上に置き、壁に設置されたシャワーを流した。スポンジに石鹸をつけ、女神のように美しい身体を洗い始める。
“じーっ……"
いけないと思いつつも、隼人はまじまじと見つめた。普段、着痩せするタイプの久美子。首払村で化け物に取り憑かれた彼女は下着姿だったため、その身体の魅力を知ってはいた。だが、素っ裸ともなると印象は異なる。健全な男ならば、目が離せるものではない。小学生の彼であっても。
(和美さんの裸もいいけど、久美子さんもいいなぁ……)
そして、比較した挙句、そう思ってしまった。ふたりとも色白の豊かな胸を持つが、大きさ、という点ではGカップの河野和美に軍配があがるだろう。だが、久美子の胸もたわわなものである。88センチのFカップだ。ツンと上を向いた見事なおっぱいである。美乳度は、こちらの勝ちとするか?
和美の乳首は大きめで色が薄い。対する久美子は、それよりも赤味が強く濃い色である。健康的な色気と妖しい色香。エロスに光と影の対極が存在するならば、まさにこの二人は、正反対のその位置に当てはまるのだろう。
“じーっ……"
まだ、隼人は見つめている。
“どうかしたのか?"
などと久美子は言わない。視線に気づいたのか、こちらを見た。
「久美子さんは、綺麗だね」
と、隼人。泡にまみれた女体を見ての感想である。
“わかりきったことを……"
などと言わず、久美子は赤くなった。いくら美貌に自信があるとはいえ、小学生の子供に自分の裸を評されるなどと思わなかったのかもしれない。黙々とシャワーで、身体についた石鹸を流した。
(や、やばい……このパターンは、まさか……?)
隼人は体の芯が熱くなるのを感じた。首払村の川岸で和美に脱がされたときも、温泉旅館で倉敏子に裸で抱きしめられたときも、同じようなことがあった。むくむくと“アレ"が起き上がる。
“さぁ……!"
と、言わんばかりに久美子が湯船の方を向いた。そのまま隼人の肩を両手で掴み、動きを封じた。
「肩までつかって、二十秒たったら出たまえ。次は私が入るぞ」
と、無表情で言う久美子の乳首が至近距離の目前にある。いよいよ、ヤバすぎる状況になってきた。
「ま、待って、二十秒じゃ、“間に合わない"よぉ……」
がっちり肩をおさえつけられた隼人が言った。そして、きっかり二十秒後、久美子が腋に手を入れてきた。そのまま、立たせようというのか。
「わー、わー」
焦る隼人。
“騒がしい子だな"
などとは言わず、久美子は隼人を強引に引き上げた。
「あ……」
ポカンと口を開け、久美子は毛すら生えていない少年の一物を見た。なんと、それは自分の顔を向いて、たくましくそそり立っていたのである。
「ふえーん……」
風呂上がり、リビングで隼人は泣いていた。当然だ。“恥ずかしい状態になった"性器を見られてしまったのである。
「き、君がいけないのだぞ。餓鬼のくせに、あ、あ、あんなところを……」
“勃起させて……"
とまでは久美子は言わなかった。赤くなって、そっぽを向いている。
「ふえーん……」
と、隼人は、まだ泣いている。パジャマ代わりに久美子のトレーナーを借りていた。ブカブカな上に、袖が長い。うらめしやーと現れる幽霊の手のような形に折れた袖で、涙を拭いている。
「だって、だってぇ……いきなり裸で入ってくるんだもん……」
隼人は言った。確かに、やむを得ないことではある。久美子の裸が美しすぎるのが悪いのだ。
「……………………わかった、すまなかった」
と言って、久美子は手にしたタオルで隼人の涙を拭いてやった。今の彼女はセクシーなバスローブ姿である。Fカップの乳房がはみ出していた。
「わーん、ちゃんとしまってよぉ……」
と、隼人。ちょうど彼の目の前にそれがあった。久美子は慌てて胸元を隠した。
久美子がこしらえた晩飯を食い終わったころには、とうに日付けが変わっていた。この部屋にはベットがあるが、寝具は一式しかない。普段、人を泊めることなどないからだ。
「狭くなって、ごめんね」
ベットの中で隼人が言った。布団にくるまっている。電気を消し、久美子も、その中に入った。まさか、寒い夜中に床で眠らせるわけにはいかない。
「今日は、迷惑かけてごめんなさい……」
という隼人の言葉は、さきほどの戦闘のことなのか。それとも、“同衾"することへの謝罪なのか。
「……………………おやすみ」
口数少ない久美子が言った。高く、澄んだ声である。普段、裸で寝る主義の彼女は、今はネグリジェ姿である。生まれたままの格好というわけにはいかない状況である。
「うん、おやすみなさい」
答えた隼人。互いに背中合わせだ。やがて、寝息をたてはじめた。子供の就寝はスムーズなものである。背中に感じる体温は心地よいものだ。
(たまには、よかろう……)
いつも、一人寝の久美子は素直に思った。ただ、やはり裸のほうが好きではある。
“くるん……"
と、隼人は寝返りをうった。こちらも振り返ってみると、ちょうど、枕の上で互いの顔が接近した。戦士として鍛えられた久美子の目は闇に慣れるのも早い。目の前にいる11歳の少年の秀逸な造形が見てとれる。
(とても、綺麗な男の子ね……)
心の口調が男ではなくなった。仕事を離れれば、女に戻るのだ。男のような言葉でふるまう自分と今の自分。どちらが本当の姿なのか。久美子自身、わからなくなっていた。
穏やかに寝る隼人の前髪を、久美子は指で分けてみた。柔らかい感触である。そして、鼻の頭までなぞってみた。きめ細やかな肌である。
母、美弥子に瓜二つの美貌は、歳相応のあどけなさを残しつつも艶っぽい。少女と見間違うほどのその顔、初対面の誰もが、この少年を男だとは思わないだろう。
(子供でも、勃起ってするのね……あのときの兄さんみたいに)
意外に思った。幼い頃に見た従兄の自慰。あのときと同じ状態になっていた。違うのは、毛が生えていないことくらいのものである。
隼人は久美子の裸を見て、そうなったのだ。女としては喜ぶべきなのだろうか?自分に魅力を感じてくれたのである。もし、そうならなかったら落胆しなければならない。
久美子はさきほど、浴室で見た隼人の裸を思い出した。身体も綺麗だった。全身、上質な白い陶器を思わせる美肌であり、肉体は華奢である。美少女の顔を持ちながら、下腹部には逞しくそそり立つ男性器がついていた。まるで、ふたなりを連想させる美しさなのである。
過去、隼人に関わった女たちは皆、その美貌に狂った。奈美坂精神病院で共に過ごした白石香代と、首払村で出会った首払啓子は、その口で隼人の唇と美顔を犯した。超常能力実行局の河野和美と倉敏子は隼人の身体を思いながら自慰にふけった。彼女らは誘惑に負けたのである。この少年が発散する魅力は、女性の母性本能をくすぐるが、同時に、サディスティックな感情も刺激する。抱いてみたいと思わせるのだ。
(私、どうしちゃったのかしら……?)
久美子も、その誘惑にかられた。自分と一緒に寝ているこの少年に、ふと、悪戯をしたくなった。
(馬鹿ね、この子は子供よ……)
だが、理性がきいた。彼女は目を閉じた。
『犯せ……』
睡魔が降臨する直前、久美子は声を聴いた。耳ではなく、頭に響く。
『汝の美しい身体で、犯せ……』
暗闇の中、久美子の瞳が妖しく光った。
『その少年、“魔剣"の助力を得、“我"を斬った』
聞き覚えがあるような気がする。しゃがれたそれは誰の声なのか?子宮が燃えるように熱くなり、無性にセックスがしたい。
『犯せ……おまえは、我が“妻"』
久美子は頷いた。そして、その美しい唇で、隼人の唇を奪った。
0
あなたにおすすめの小説
合成師
あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。
そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる