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アキと雪
しおりを挟む寒すぎて目が覚めた。ぼんやりとした視界に映ったのはハルのレモン色のロンT。
昨夜も無意識にハルの布団に潜りこんでいたようだ。人肌が欲しくて足を絡めて後ろから抱き締めると目の前に広がるのは白くて美味しそうなハルのうなじ。いただきます、と心の中で手を合わせてキスをした。次の瞬間お腹に衝撃が走る。肘で攻撃された拍子に布団から放り出されて全身が一気に冷える。
てか今日めちゃくちゃ寒いじゃん。
そう思って窓を睨むと、白くてふわふわしたわたあめみたいな雪が宙を舞っていた。
「ねぇハル!雪!雪降ってるよ!!」
***
ゆさゆさとハルを無理矢理起こして部屋着の上にフードのついたパーカーを着せる。まだほとんど目が開けられていないハルはされるがままに防寒されてゆく。靴下を履かせコートを羽織らせて、マフラーをぐるぐる巻けば準備OK。自分の防寒もテキパキと済ませハルに呼びかける。
「外行こ!ハル、雪だるまつくろ!」
「……あっちいって」
お互い聞いたことあるようなセリフでやりとりしてしまったけれど、わかったよと諦めるつもりはない。ハルの脇に手を突っ込んで立ち上がらせて、引き摺るように寝室を出た。
玄関でハルの靴を準備する。ハルはまだ意識を半分くらい寝かせている顔でぼーっとしてる。先に靴を履いて目の前に座り込むと、ハルがシンデレラのように足を出して靴を履いたから思わず手の甲を掴んでキスをした。
「なに急に」
「ハルってもしかしてプリンセスの生まれ変わり?」
下から見上げると可憐なお姫様というより誇り高き女王様のようなしかめっ面で「だる」と一蹴された。
キスをした手をそのまま握って外へ連れ出す。ハルはあまりの寒さにマフラーに顔を埋めている。
「さっむ…」
「ほら、雪!めっちゃ降ってる」
「雪くらい降るだろ、冬なんだから」
「でも俺、こんなに積もってるの初めて見た」
こっちに引っ越してきて初めての冬。積もっている雪を生で見てるなんて不思議な感覚だった。俺が住んでいた地域は雪は積もる前に溶けてしまうため、積雪はテレビのニュースでしかみたことがなかった。嬉しくて飛び出すとハルの小さな笑い声が聞こえた。
「アキも雪大好きだったなぁ」
振り返ると、真っ白な景色の中にハルが居た。
何も気にしないで着せたからトンチンカンな色合いになってしまったコーディネート、あっちこっちに飛び出している寝癖だらけの髪の毛。それでも鼻を赤くさせてクスクス笑ってるハルがあまりにキレイで心臓が跳ねる。
「しょーがねぇな、作るか」
ハルが俺に笑いかける。俺は堪らずハルの元へ走った。
「?!おい、気をつけろ、」
「う、わぁ!!!」
ずるりと滑って、視界が回る。ギリギリでハルが腕を取ってくれたけど拍子にハルもバランスを崩して一緒に転んだ。
「あーーー、ごめん!ハル大丈夫?」
「最悪、つめてぇ」
どしゃ、と落ちた先は積もってまだ誰も足跡の付けていない雪の上。おかげで痛くはないけどお尻あたりからじんわり服が濡れていく。ハルは俺に覆いかぶさるように転んで、素早く起き上がろうとしてる。寒さで頬が化粧してるみたいに赤い。文句を言っている唇もいつもより血色が増している気がしてキラキラと存在感がある。
離れて行く前に腕を掴んで引き寄せた。
近距離で目線を交わすと、ハルの喉が動いた。あ、してもいいのかな。と判断して唇をくっつける。
「ん、」
ハルから少しだけ吐息がもれて、それだけのことなのにもっと深くしたくなる。ここは外で、しかも家の前だからいつ人が通ってもおかしくない。わかってはいるのにキスをやめられない。
「おい、あき…や、め」
「ハルがかわいいから無理」
外の気温ですっかり冷たくなった頬と口の中の温かさのギャップに身体が震える。そろそろやめなきゃ、駄目だ、と思えば思うほど、離れがたくなる。
無理に引き寄せたハルの体制がズレて完全に俺の上に馬乗りになった。掴んでない手で肩を叩かれて、名残惜しいけど唇が離れていく。
「は、おまえ、ふざけんな」
「ごめん、つい…」
ハルはキスの前より顔が赤くなっていて、ハルの周りに白い息が舞っている。たくさん空気を求めて肩で息してる。もう一度ごめんねと言って頭を撫でた。一回手の中に収まった寝癖が、離すとピョコンとまた跳ねる。ハルは髪の毛一本とってもかわいい。ぷいっと横を向いて不貞腐れてる横顔も、俺の服をぎゅっと握った指先も、なにもかも。
「…ちくしょう」
「ハル?」
そっぽを向いたままハルが呟く。
「濡れたんですけど」
え、どこが?と聞くと火が出てきそうなくらい真っ赤になったハルに雪の中に埋められた。
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