アキとハル(完結)

くろ

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「それで、そのままヤッたのか?」
 シュウが目を輝かせて最低な質問をする。
「俺は紳士だから、病人を襲ったりしない」
 嘘つけ、バリバリ襲ってきただろ。
 もう黙ってくれ。





 ***




 週末、シュウが遊びにきた。
 アキはあの日、熱がある俺を押し倒した。信じられないくらい深いキスをして、耳裏の匂いを嗅いで、首筋を舐めた。元々の熱と味わったことのない感覚に視界が揺れて全身の力が抜けた。
「ハル…?」
 心配そうな顔でアキが覗き込んできて、その間抜け面にキスをした。
 そのあとのことはよく覚えていない。次に目が覚めた時には頭も身体も軽くなっていて、起き上がると隣でアキが座ったまま眠っていた。軽くちょんとつつくと犬みたいにビクッと飛び起きて俺を見た。堪えきれずに吹き出すと真面目な顔で問いかけられた。
「…熱でバカになっちゃった?」
「あほか!おかげさまで元気だわ」
 布団から出ようと起き上がると、自分がパジャマになっていることに気が付いた。着替えた記憶はないからアキが看病してくれたんだろう。
「色々ありがと」
「あ、変なことはしてないからね!?」
 別にしてもいいのに、と咄嗟に思ってしまった自分が怖い。落ち着くためにコホンと咳払いをして改めてアキと向き合った。
「アキ、まだ一緒にいよう。ここにいて」
「…うん。ずっと一緒にいる」
 アキが俺を抱き締めて応えるように抱き締め返した。お互い離れがたくてどうしようかと思い始めたころにアキのお腹が鳴った。二人で笑いあって寝室を出る。もうすでに家を出なきゃいけない時間は過ぎていて、もうこのまま学校もサボってしまおうと決めてゆったりと過ごした。お粥の残りと適当にお茶漬けを準備して「いただきます」と向き合って手を合わせた。
「…シュウには連絡しておくか」
 スマホで休むけど元気だと言うことだけ告げるとすぐに電話がきた。
「どうなった?!」
「…なにが」
「アキとだよ」
「どうって、」
 どう説明すればいいのかわからず誤魔化そうとしていたらアキにスマホを奪われた。
「修平、色々とありがとね。おかげでハルと付き合うことになった」
「なっ、お前なに言って、」
 アキはスマホを奪い返そうと立ち上がった俺の頭を押さえ込んで勝手に通話を切った。振り返り、ニッコリと笑っている。
「ということで、明日遊びにくるって」


 家にきたシュウは嬉々として俺らのことを聞きたがった。それはもう隅から隅まで、根掘り葉掘り。
「それで、ハルが俺を好きだって言って」
「え!ハルから言ったのかよ!意外」
 ニヤニヤしているアキの話をニヤニヤしながら聞くシュウ。もう本当にうざい。止めろと言っても俺の声なんて届いてないようですっかり盛り上がっている。どうやら二人は早い段階で結託し、俺とアキをくっつけようと企んでいたらしい。
「だってアキがハルを好きなのは一目瞭然だったし、ハルもまんざらでもなさそうだったし」
 さらりと言ってのけるシュウに隠し事なんて無理なんだと改めて敗北感を味わった。
「なのにハルはアキが生まれ変わりだとか言い出すし」
「ね、俺もびっくりしたけど。可愛すぎてたまんないよね」
「可愛いかどうかは知らんけどまぁなんとかおさまって良かったわ」
 大仕事でも成し遂げたつもりのサラリーマンのようにふんぞり返って手柄を自慢している。俺はシュウと家族になっていなければ絶対に関わりあわない。だけどもう家族も同然なので後悔するしかない。
「で?もうヤッた?」
 飲もうとした緑茶を吹き出してシュウを見ると変態そのもののにやけ顔で俺とアキを交互に見ていた。
「まだだけど、近いうちにする」
 俺の許可無しに宣言してるアキの頭を思いっきり叩き、口を塞ぐ。
「お前もう喋んな」
 もがもがしているアキを無視してシュウを睨む。シュウはニヤリと口角を上げて楽しそうにしている。
「お前も余計な事聞くな」
「ほんとおもしれーよ、お前ら」
 シュウが立ちあがり俺とアキの頭をわしゃわしゃとして玄関へ進んでいく。
「もう帰んの」
「おじゃまみたいなんで」
 片手を口に当ててまたニヤニヤしている。アキはお気遣いどーも、と礼なんか言っていて俺はアキを蹴飛ばした。文句を言いながらも二人で玄関まで見送る。
「シュウ、あのー、ありがと」
「なんだよ急に」
「いや、色々と世話になってるな、と」
 シュウは目をパチクリさせた後、くっくっくと可愛くなく笑った。
「まぁアキとの約束だからな」
「おれ?なんか約束したっけ」
「んー?お前じゃない方のアキ」
 質問をさせる間もなくシュウは軽く手をあげて帰っていった。
「なんなんだよあいつ…」
 釈然としないまま閉まった玄関を見つめても答えは出るはずがなく、ふと横をみるとアキがこちらを見ていた。するりと手を繋いできて少しだけ緊張する。
「…なんだよ」
「なんか、家族に認めてもらった気分」
「ははっ。結婚の挨拶じゃあるまいし」
「俺はハルをお嫁に行かせるつもりないよ」
 アキは両手を掴んで俺の指にキスをする。そのまま視線を合わせて宣言をした。
「誰にも渡さない」
「…ばーか」
 お返しに繋がれたアキの指にキスをした。

 どこにも行く気なんかねぇよ、とおまじないをかけるように。





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