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エピローグ
しおりを挟むヒマリのことが好き。どうしようもなく好き。
図書委員会で一緒になる前は存在すら知らなかったのに、今はわたしの頭のほとんどがヒマリで埋め尽くされている。
人見知りで目立つのが嫌いなヒマリ。仲良くなると表情はコロコロ変わってよく笑う子なんだって知った。話の中で言ったかどうかも覚えていない花の名前を憶えていてくれて、押し花で栞を作ってくれたり、実は食べるのが好きでアイスと一緒にレジ横のチキンも必ず買ったり、わたしでも読みやすいような本を進めてくれたり。知れば知るほどヒマリに惹かれていった。
今まで恋をしてこなかったわけじゃない。告白されて男の子と付き合ってたこともある。初恋とか、漫画で見るような運命的な恋とは程遠い、誰にも言えないし言いたくないこの気持ちは、海の底の一番深いところに沈めてしまいたい。
夏祭りの夜、ベッドに入っても眠れずにヒマリのことを考えた。
どうだったかなんて聞きたくないけど気になってしまう。起き上がり窓を開けるとわずかに海の匂いがした。いつも嗅いでいるはずの匂いが何故か苦しくて、うまく息が出来なくなりそうだった。ふと部屋の奥にある姿見が目に入って、ベッドから出て目の前に立ってみた。人は恋をすると可愛くなる。鏡にうつった自分はどうだろう。
「…全然可愛くないじゃん」
何もかもがめんどくさくなってスキンケアを怠った肌に半乾きのまま放置したボサボサの髪。可愛いパジャマなんて用意してないから中学の頃のジャージを着た可愛さのカケラもない女子がこちらをじっと睨んでいた。
もう夏休みの間に図書委員で一緒になることはない。次に会えるのはきっと始業式。
鏡にうつった可愛くない自分を睨み返して宣戦布告をする。
「可愛くなる。ヒマリに頼ってもらうために」
恋をしている。一生言えない一生の恋。好きな人が誇ってくれる友達でいるために、わたしはもっと可愛くなる。
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