馬花

hamiru

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2章 熊と人

105 CHAILO

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秋葉原に着いた
聖地秋葉原に来たよ
今日は推しのアイドル
CHAILOのライブだ

CDは2枚買った
新曲「スカートめくり」

僕の推しはブラウだ
1枚はCHAILOの曲を聴いたりジャケットや歌詞カードで彼女達を見つめたり、通常利用だ

もう一枚は・



君との訣れが訪れた時に、割るためのCDだ
そうやって僕は僕の偶像と決着をつける
別れのケジメとして君のCDを破壊して、ブラウへの想いや憧れや恋心を粉砕する
そうやって、僕は未練を破片にして処理する

この秋葉原の地で隆盛を極めた大所帯のアイドルグループとは異なり、CHAILOは2人組のデュオだ
まだ駆け出しの2人はファンも少ない
コアなファンは僕を含め20人くらい
他にはアイドル発掘組や他のアイドル推しの連中が覗きに来るくらいだから、ライブといっても客は30~40人程の小規模なものだった

秋葉原駅電気街口の改札を出て電気街の人並みを掻き分ける
アイドルユニット御用達のライブハウスが点在する一角で今日の目的地に到着した
ライブハウスGUZOに入る

事前に2,000円で購入して、スマホに収まっているチケットを係員に提示して会場へ入る

開演15分前のホールに入ると15人ほどの人影が佇んでいた
基本的には個人個人での参加が多いが、ライブを通じて顔見知りになる
僕も完全に打ち解けるには至っていないが、2,3男と会釈を交わした
リュックからスポーツ飲料を取り出し口にして、2人の登場を待つ

・・・・

きた
ホールの暗がりが深まる中で、照明がステージだけを燦燦と光らせた





「君は焦げた」
でライブは始まった

僕はブラウに見入った
彼女の覚束無いダンスが僕の父性本能を刺激した
口パクではない生の歌に、僕は口唇を艶めた
アイドルのその息を僕は嚥むんだ
僕は此処にいるんだから

行き過ぎた恋愛の儚さを詩った「君は焦げた」のパフォーマンスを終えて

「枯の葉の残陽」
しっとりと歌いあげる
枯れ葉の茶黄色に色を移した夏の日差しの名残を謳いあげた

そして3曲目にCHAILOの代表曲
「うんうん」

照明が落ちた
スポットライトがゆっくりとブラウの姿を明らかにした
新曲「スカートめくり」のイントロが流れてブラウは微動だにしない、ぶっきらぼうに口を開く

   女手のカミソリで男のスネを丁寧に剃り上げて
   私がブラウンのスカートを男に履かせるから

スポットライトがブラウを消してキャメを映す

   浅くほのかなキャメルの肌になみなみ舞うスカートの恥じらいを覚えたなら

照明が上がり2人が揃える

 揺れるスカート 心めくり
 紳士の太もも 乙女の祈り

 スカートの君よ~



 キュロットとかいうんだ
 僕はそれ以上は踏み込まなかった
 スカートを履いて行ったならば
 僕のブラウへの熱情が届くはずだった
 僕はスカートを波かせて街を行くのが怖かった

 ステージが終演に差し掛かった
 照明が上がる中、30人程度の客の中に
 1人だけスカートを履いてきた男がいた
 大きな声でキャメー!
 心をめくって声援を送っている





 僕は後ろから彼を見つめた
  なみなみと水色のスカートが舞う
   彼の脛の毛は綺麗に剃り上げられていた

 右腿外側広筋部の皮膚の剃刀負けした赤が情熱を叫んでいた。


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