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2章 熊と人
106 傍に添えたラヴレター
しおりを挟む女用品置きの脇にラヴレターを添えたのです
手紙を必ず見つけられてはいけなかったからです
同棲中の彼に、あの人から受け取った手紙を絶対に隠さなければいけなかったのです
しかし、
私は幾ばくかの混迷の果てに、女用品の隣に寝かせた手紙を、男用品の上に置いたのです
告白しました
彼にあの人から想いを寄せられていることを
白状いたしました
彼は怒りませんでした
私はそんな気がしていました
それは彼の気質も一つの理由ですし
私たちの居場所にも大きな関わりがあります
ハミルENの屋根の下の私達は
結婚することが認められていないのです
結婚をする場合はハミルENを出ていかなければ
いけないのです
・
結婚を認めていない
つまり生涯にワタル中で
70,80歳でも100歳でも
恋する殿と奥を見せる
ですので、
結婚によって恋のケジメを一区切りつけるのではなく、
恋の流動性を重視させていただいております
私の彼はその概念遂行の中心的人物であります
・
残酷な光景を見せます
ネクタイの上に置かれたラヴレター・
彼はお風呂上がりにそれを目にして
濡れた髪のままそれを読みました
女用品脇に添えるまでの数日
私の浮足だった心は
手紙をお風呂にまで持ち込んでいたのです
本当です
紙は水の乾きで色が濁っていました
'彼'は'私'に宛てられた'あの人'の手紙を読みました
私にはこの行動が正しかったのかわかりません
この先もずっとです
読み終えた彼の手は小刻みに動いていました
顔は真一文字にただただ真剣だった
18から彼と交際が始まって
11年の月日が流れました
私は男は彼しか知らない、
私はあの人の告白に胸が躍り
妙な複数の好奇心に唆かされました
本当です
知りたい
複数の男性を知ってみたい
色々、男の特性を知ることが
人生に色彩を持たせる正しさなのではないかと、
不埒にも想ってしまったのです
不純とは違う
私とあの人は、
でも、私のお腹の膨らみと
あの人との関係性が不純であることが
紛れもない事実でした
私は彼の子を孕った身体で
あの人に身を預けて仕舞えば
間違ったお腹になる
それだけでした
私は彼にラヴレターを読ませて
恋沙汰の処理を預けたのでした
・・・・
11年
私と彼は交際の時を過ごしました
私には分かりました
彼は感動していました
強い想いを抱えた時に
彼は右側の歯を食いしばるのです
怒りかもしれませんが
私は今でも感動だと思っています
男のラヴレターを男が読んだのです
男同士に女を仲介して恋文が渡ったのです
いやですか
これを美しきと呼ぶのです
男は男の恋文にやられるのです
彼は、怒らなかった
それが答えです
・・・・
男同士で話しをつけてきた、と
彼から聞きました
おそらく、彼は
私?
私と彼の生まれくる子の存在を告げたのでしょう
私はあの人に私の妊娠を告げていませんでした
はい、あの人の驚きの表情は、きっと私に下を向かせると思いました
彼はあの人に私を諦めさせたと、言いました
生まれくる子に正しい産声を上げさせること
それが理由だといいました
「誕生だけは間違えるな」
"そのあとは、間違えるのが人生だ"
このように彼は言いました
私はその意味を朧げではありますが、
理解しました
彼からあの人は薔薇の花を抱えていたと聞かされました
その時、始めて
私は間違えていたと分かりました
私のために用意した
花のその姿さえ
見てやることができなかったのです
あの人は私のために用意した花を
私に渡すどころか
見せることすらできずに
花を持ち帰ったのです
女性は花に準えられることがありますが、
私にはその資格はありません
当然です
男性が、私のために、用意した花に、
心で一欠片たりとも、水をやらなかったのですから
私は直接会って
受け入れるなり、断るなり
しなければいけませんでした
怖かったんです
いえ、
馬花な女です
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