ミステリH

hamiru

文字の大きさ
15 / 18

15 酒

しおりを挟む

昨年の暮れだった
クリスマスの数日前やり切れない感情を抱えたまま肩を当てた程度で揉み合いになっちまった相手トシミ、
今日は彼と俺の家で呑むことになった
あの夜連絡先を交換して1ヶ月ぶりの再会だった

金山駅から名城線に揺られて俺の住む名城公園まで男は来た
駅で待合せをして、奴を自宅に迎え入れた
4階建てアパートの4階の部屋で男二人
酉の刻から戌の刻に移ろうかという頃だった

俺は昨日からの夜勤明けで睡眠を取って申の刻に目を覚まして調理をした
ニラや玉葱に豚肉を材料としてチヂミなんかを作って一丁前に客人を饗す準備を済ましていた

「チヂミ作ったんだ」
「へえ、ハミル料理するのか」
「いや、簡単にできるのな」
「チヂミは手間かかるだろ」
「まあ、座ってくれよ」

ビールで乾杯して焼酎に進めて数杯飲った
トシミはメビウスの電子タバコを喫って、俺はラッキーストライクの電子タバコを吸った

「なあハミル、いいか」
「?」

トシミが何かしら箱をダウンジャケットから取り出して右手で揺らしていた

「ああ、紙か」
「酒呑むとな。たまに欲しくなるんだよ」
「いいよ。俺ももらっていいかい」
「ああ、いいぜ」

キャメルの紙タバコを2人で咥えた
久しぶりに吸った紙タバコに細胞が活性化したような感覚を覚えた

「はは、クラクラすんな」
「紙は吸ってないか」
「ああ、かなり久々だな」
「そうか」
「うめぇ」

しばらく酒を交わしながら、男同士のくだらない話で屈託のない時間を過ごした

「トシミは仕事は何してんだ」
「俺は造園師だ」
「造園師。あれか庭作ったりするのか」
「そうだな。庭園だけじゃなくて公園とかな。企業からの依頼も多い」
「へえ、すごいな。独立してやってるのか」
「いや、俺は雇われだ。そういうことも考えないでもないけどな」
「そうか。羨ましいな」
「いや」

白い煙が立ち昇り香ばしさを味わった
齢40を過ぎて全くのプライベートで親しいFRIENDができるとは思わなかった
こうして友と歓楽の時を過ごすことができるなら、それも悪くはないかなと、
千七菜との行く末ばかりに気を取られて視界が狭まっていたのかもしれない
価値観の納め所なんてどう変わるかわからない
何もかも朧気にしちまってただ楽しめりゃ良い、刹那的で短絡的な思考だが脳に憩いを与えてやれるかもしれねえ

「よし」
「どうしたトシミ」
「ちょっと酒作るわ」
「ああ、それ」
「最近ちょっとな」

トシミが手ぶらじゃなんだからと持ってきたドライ・ジンとドライ・ベルモット、雑にオリーブをカクテルピンに突いた、
俺はグラスを少し上げて礼を告げた


「なあトシミ、ハミルENって知ってるか」
「なんだ、そりゃ」
「血縁や婚姻ではない形態で家族を築いている」
「なんだと」
「おかしな話だろ」
「・・・・」
「なあ、」
「・・詳しく聞かせてくれ」

トシミが灰皿に吸殻を増やして、俺の目を見た
俺はマティーニを飲み干して、目を逸らして、オリーブを口にして声を塞いだ


#HAMIRU
#ハミル
#トシミ
#ミステリH
#20250124










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

ヤクザのお嬢は25人の婚約者に迫られてるけど若頭が好き!

タタミ
恋愛
関東最大の極道組織・大蛇組組長の一人娘である大蛇姫子は、18歳の誕生日に父から「今年中に必ず結婚しろ」と命じられる。 姫子の抵抗虚しく、次から次へと夫候補の婚約者(仮)が現れては姫子と見合いをしていくことに。 しかし、姫子には子どもの頃からお目付け役として世話をしてくれている組員・望月大和に淡い恋心を抱き続けていて──? 全25人の婚約者から真実の愛を見つけることはできるのか!?今、抗争より熱い戦いの幕が上がる……!!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...