人間さんと暮らしてみましたが、ちっとも馴染めません。

白光猫(しろみつにゃん)

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息子と俺(別視点)

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『あいつ魔導士にとっ捕まってんのか、ざまぁ!』

 イレーヌの前で、俺はさも嬉しげに大仰に叫んでみせた。
 俺が明るく母親へ関心を示すことで、イレーヌが安心することは分かっている。

 これも愛しい我が子のためだ。
 俺のイレーヌはこの地上で最も可愛い。

 あいつから受け継いだ虹色に輝く白銀の髪。俺と同じ薄紫色の瞳。透き通るような白い肌には傷ひとつない。頭頂部から爪の先まで、宝石のように光り輝いている。

 しかも人間をさげすまない【生まれながらの神獣】ときたもんだ。
 魔導士どもが存在を知れば、涎(よだれ)を垂らして、喉から手が出るほど欲しがるだろう。やらねえけどな。俺のだし。

『ねえ父様、【宮廷魔導士】ってなあに?』

 つむじも上目遣いもたまらん。頭から丸呑みしたいくらいだ。

『面倒な仕事を押しつけてくる図々しい奴らのことだ』
『ふぅ~ん。父様と同じくらいですか?』
『言うようになったじゃねえか』

 生意気なガキにはお仕置きが必要だ。
 小さな頭を、こぶしでグリグリと軽く挟んでやる。

『痛い痛いっ!』
『そりゃそうだ。痛いようにやってる』

 涙目でとびすさった我が子に、俺はニヤリと笑いかけた。
 イレーヌはこめかみをさすりながらも、懲りずになおも質問してくる。子供が好奇心旺盛なのはいいことだ。

『母様は大丈夫でしょうか? その【宮廷魔導士】のお手伝いをしているそうです。 大変じゃないですか?』
『あいつはバカみてえに強えから、放っといても死にゃしねぇよ』
『父様ひどい! 母様がかわいそう!』

 ああ、そうだよ。
 まっさらなおまえが想像できないくらいに、俺は残虐な生きものなんだ。
 恐れないのはおまえくらいだよ、イレーヌ。

 ――そう育てたのは俺だけどな。

 純粋培養なイレーヌは、離れていても両親は相思相愛だと勘違いしている。互いに意地を張っているだけで、俺から折れれば、すぐに仲直りできると信じきっているのだ。いまも目の前でぷっくり頬を膨らませてはいるが、久々に、母親の話題で俺と盛り上がれることが嬉しそうだ。
 いいぞ。いつまでもつきあってやる。

 母様が、かわいそう?
 あいつが人間ごときに縛られるわけがないだろう?
 何かと理由をつけては、未練がましく地上に残っているようだが。

 ――心底どうでもいい。

 かわいいかわいい俺のイレーヌ。
 そろそろ、森の外へ出してやろうか。

 好きなように生きるといい。
 なんでも試してみればいい。
 飽きたら壊してしまえばいいんだ。
 無理なら俺がやってやる。
 おまえの邪魔をするものは、みんな地上から排除してやる。

 おまえはこの先、どんなふうに成長していく?
 どんな景色を俺にみせてくれる?
 退屈をまぎらわせてくれる?

 なあイレーヌ。
 この終わりがみえちまう狂った世界で……

 ――もっともっと、俺を愉しませてくれ。
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