人間さんと暮らしてみましたが、ちっとも馴染めません。

白光猫(しろみつにゃん)

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執務室の中

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「……殿下、お話があります」

 ようやく、レオさんの意識が戻ってきたようです。おかえりなさい。
 若干表情が険しく見えるのは気のせいでしょうか?

 スクリと立ち上がったレオさんは、すぐにアーシュの元へと戻ってしまいました。
 もう少しお話ししてみたかったので、とても残念です。いつかあの灰色の毛並みを触れたらいいなあ。

「殿下。イレーヌ殿は、ログーザ語を聞き取れますか?」
「いや、まだ挨拶程度だ。このまま話してくれて構わない」

 二頭で何を話しているのですか? 私も聞いておいたほうがいい?
 人間さんの言葉がわからず、キョトキョトしていると、

『すみません。少し彼と話をさせてください。すぐに済みますから』

 そういうことなら、おとなしく待つことにしましょう。
 私が小さく頷けば、二頭はまたくっついて、何やら話し始めました。とても仲良しのようです。

「……殿下。この綺麗で可愛い未知の生物を、いきなり宮殿へ放つ気ですか? 大騒動になりますよ」
「彼はしばらく私とともに暮らす。そこでまず、人間社会についてイチから学んでもらう予定だ」
「……まるで人間ではないようなおっしゃりようですね」
「こんなに美しいものが、人間であるはずがない」
「しかし、消えたあの女魔導師の身内なんですよね? まさかあの女も? 人型になれるほどの上位種だったというのですか? イレーヌ殿もその類だと? そんな有り得ないことを信じろとおっしゃるのですか?」
「そういうことだな」
「……殿下、あとできっちり説明していただきます」
「そう怒るなレオ。おまえには全て話すつもりだったのだ。女魔導士に口止めされたのと、時間に追われて機会がなかっただけだ」
「言いわけも含めて、あとでゆっくりと聞かせていただきます」
「だからそう、怒るなというのに」

 話しているうちに、レオさんの毛がみるみる逆立ってきたのを、アーシュが肩をポンポンしてあげています。
 アーシュだとあんなに気軽に触れるのですね。本当に仲良しで羨ましい。

 レオさんは、初めての神獣相手に、緊張して気持ちが高ぶっているのかもしれません。同種のアーシュのそばで、少しでも気持ちが安らげばいいのですが。
 お水……、飲まなくていいのでしょうか?

「単刀直入に伺います。殿下とイレーヌ殿は、一体どのような間柄なのです? この部屋から出た時点で、宮殿の者たちへ隠すのはおそらく困難でしょう。王にもすぐに露見します。なんと説明するおつもりですか?」
「彼のことは一切隠すつもりはない。私のそばに置く正当な理由もあるから心配無用だ」
「理由?」
「イレーヌは、私の【使役獣】なのだ」
「……は?」
「先程、主従の契約を結んだばかりだ。王も重臣も大神官も、私がいつまでも使役獣を持たぬことを憂えていただろう? ようやく良い報告ができると安堵している。各々どんな表情をみせてくれるか実に愉しみだ」
「……殿下、俺はこの部屋から出るのが怖くなってきました」

 レオさんがとっても長く深いため息を吐きました。かなりお疲れのようです。

 やっぱり、お水……、飲んだほうがいいですよ?
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