最強の竜騎士団長は、すべてが妹♡至上主義!

黒いたち

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第一章 兄とは妹を守るために存在する

俺の妹への想いが、その程度だとでも思ったか!

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 悪魔あくまと融合をたしたギルバートは、その背に骨ばった翼を生やす。
 陶器のような白い肌に、深い黄金の瞳は、人間離れしたあやしさを秘める。

 漆黒に染まった剣をかまえ、彼は一気に飛翔した。
 竜が威嚇いかくし、騎乗するエリオットが、白銀のやりで迎え撃つ。

 高い金属音が、なんども空中でこだました。

 ふりはらわれる穂先ほさきが、ギルバートの頬に傷をつける。
 浅いはずの傷が、焼けるように熱くなり、血が噴きだした。

 白銀の武器は、魔のモノに高い攻撃力を発揮する。
 エリオットは槍をかまえ、再度、訴える。

「お戻りください。これ以上、傷を負わせたくはない」
「見くびるなエリオット!」

 鮮血がしたたる頬で、ギルバートがわらう。

「俺の妹への想いが、その程度だとでも思ったか!」

 ギルバートが消えた。
 ちがう、人の目に追えなくなっただけだ。

 エリオットがそう判断できたのは、目に見えぬ黒刃を、武人の勘で受け止めた時だった。

 ヒビが入ったのは、白銀の槍だった。
 折れないよう、力を受け流すことに集中しすぎて、防御がおろそかになる。
 その隙をねらい、黒剣がせまるのが見えた。

 
 


 白熱する空中戦をながめながら、蚊帳かやそとの竜騎士――レスターとゼノが、のんきに会話する。

「レスター先輩。言われたとおりに持ってきた大量の聖水せいすい、こむぎが飲みたそうにしてるんで、あげてもいいですか?」

 ゼノが、乗騎する竜の耳裏をいてやりながら問う。 
 小麦色の竜が、きもちよさそうに喉を鳴らす。 
 その一人と一頭を見て、レスターは片眉を上げた。

「ダメに決まっているだろ。一滴残らず団長にぶっかけてこい」
「ですよねー。ごめんな、こむぎ。あとでまたんできてやるから」

 竜の首筋くびすじをたたき、ゼノが天をあおぐ。
 快晴の空はどこまでもつきぬけるような青で、ここちよい風が、ゼノの栗色の毛先を揺らした。

「……死にたくないなぁ」
「聖水をぶっかけるだけの簡単なお仕事だろ」
「見てください、あのキレッキレの剣技。割り入った瞬間、こむぎもろとも三枚にろされます」

 確信したように、ゼノがうなずく。
 レスターが、軽い調子で口をひらく。

「エリオット副団長のえげつないあおりに、ギルバート団長がキレて悪魔と融合。すべて副団長の策略さくりゃくどおりだな」
「俺、いまだに団長がキレた理由がわからないんですけど」

 ゼノの言葉に、レスターがまたたく。

「ゼノ。団長の事情、どこまで知ってる?」
「どこまでって……さっき、妹さんを人質に取られてるみたいなこと言ってましたけど、事実なんですか?」
「ああ、うん。去年入団だと、そんなもんか」

 レスターが首をかしげて、ゼノを見た。

「そもそもな、副団長と団長は幼馴染おさななじみだ。誰よりも団長の事情にあかるい副団長が、わざわざ団長職の意義を語るなんて、あおり以外のなにものでもないだろ」
「……たしかに」
「直前で逃げられると困るから、先に融合させて魔力切れを起こさせるって作戦もエグい。徹底的に退路たいろつ構えだ」

 レスターの説明に、ゼノは言葉を失う。
 命令どおりに行動していただけだが、ちょっとして自分は、知らない間に無慈悲の仲間入りを果たしてはいないか。

「あ、副団長やばそうじゃん! 準備しろ、ゼノ!」
「こんな話のあとに、団長にとどめ刺しに行くんですか!? やみの深さに手が震えて、それどころじゃないんですけど!」

 手どころか全身を震わせているゼノを見て、レスターが苦笑する。

「じゃ、一個いい話するわ」
「……おねがいします」
「副団長がこうまでして団長を連れ帰りたいのは、魔人反対派の連中から団長を守るためだ」
「それって……」

 レスターが笑う。

援護えんごはしてやる。あきらめて職務を全うしろ」
「人生も全うしたかったです」
「終わったら、美人ぞろいの店に連れて行ってやるよ」
「えー。それより焼肉食べ放題がいいです」
「おまえ、変わってるな」
「美人で腹はふくれません」
「さすが成長期。食べた分、身長にいけばいいな」
「言外にチビって言っています?」

 目を見合わせて、笑う。
 ゼノの手の震えは、止まっていた。

「じゃ、とりあえず」
「行きますか」 

 手綱たづなを短く持ち直した二人は、同時に竜の腹を蹴った。
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