最強の竜騎士団長は、すべてが妹♡至上主義!

黒いたち

文字の大きさ
7 / 33
第一章 兄とは妹を守るために存在する

貴方が団長です。

しおりを挟む
 連行れんこうされたギルバートは、有無をいわさず、式典用礼服に改めさせられる。
 漆黒しっこくの団長服は、長身のギルバートによく似合う。
 鋭い眼光のまま、窮屈きゅうくつそうにネクタイを締める彼に、エリオットは淡々と告げる。

「お時間です」

 それには答えず、片頬を皮肉気にあげると乱暴に髪を撫でつける。
 犬歯ののぞく横顔は、獰猛どうもうな獣を思わせた。

「無駄に飾りたてやがって。実力主義の弊害へいがいを思い知らせてやる」

 魔人ゆええられた地位に、彼は毒づく。

 就任して四年が経つが、いまだ反発の渦が、彼の足元をすくおうと躍起やっきになっている。
 逃げるのがしょうに合わないと吐きすてながら、買わなくてもいい喧嘩けんかに真正面から立ちむかうのも、団長の地位に居座る彼自身が一番納得していないからだと、エリオットは知っている。

 ――竜に乗らない竜騎士団長。

 それはもはや、この国の名物といっても過言ではない。

「……それでも、貴方が団長です」

 エリオットの独白を鼻で笑い、ギルバートが扉にむかう。
 しかしその途中で、彼がひざをついた。

「ギルバート団長!」
「……ありえねぇ」

 魔力欠乏症まりょくけつぼうしょうかと軍医を呼びかけたエリオットの耳に、しぼりだすような彼のセリフがとどく。

「妹に祝辞しゅくじを述べ忘れるとは、一生の不覚……これでは死んでも死にきれん」

 エリオットは、愚直に心配したおのれを悔いる。
 死地に向かう気でいるのはおおいに結構だが、もしやこの男は、ただの莫迦ばかではないのか。

「ああ。今日の妹も、すばらしかった」
「やかましい」

 おもわず拳骨げんこつを落とすと、うめき声があがった。
 涙目で振り返ったギルバートが見たのは、青筋をたて、犬歯をむきだしにして口角を上げる、目がまったく笑っていないエリオットだった。

「俺が言っておいた。死ぬほど感謝して、早急に壇上だんじょうへ行け」
「……どういうことだエリオット」

 うなるギルバートを追いこし、外の訓練場へつづく、分厚い扉に手をかける。
 そこは今日、入団式の会場となっている。

「せいぜい見栄みばえよく振舞ってこい。――お飾りだと言うのならばな」

 苛烈かれつな色を浮かべた瞳で、エリオットは語気を強める。
 ひきずるような音のあとに、ひらいた扉のすきまから、陽光がさしこんだ。
 彼の表情が逆光に溶け、大柄おおがらなシルエットを浮かびあがらせる。

 ギルバートは腹心の部下を、強い眼光で見かえす。

「――上等だ」

 口元に弧をえがき、ふてぶてしく笑った。

「せいぜい後悔させてやるよ。いぬたぬきしかいないおりに入ってくる、物好きどもをな」

 ユラリと黒いもやが立つ。
 枯渇こかつしたはずの魔力が、腹の底から湧いてきた。 

 悪趣味な上官を見やり、思いがけず安堵したことに、エリオットはあきれる。
 追い抜きざまに肩を軽くたたかれ、エリオットは後に続いた。

 豪胆ごうたんな魔人は、光へと突き進む。
 勇猛な側近を、引き連れて。

 壇上に上がったギルバートは、新兵達を見下ろしながら騎士団の意義を声高に主張する。

「己の生命に信仰を捧げ、己の信念に誠実であれ。不義不正に手を貸さず、正しき道を歩め」

 まきちらすオーラはどす黒く、魔人まじんと呼ばれるにふさわしい。

「――俺は諦めん。絶対にだ。貴様らに不滅ふめつの闘志を教えてやろう。勝てば正義だ! どんな手を使ってでも勝利をもぎとり、力でねじふせろ」

 涼しい顔で整列するエリオットに対し、直前のやり取りを知らないゼノの顔が、限界まで白くなる。

 ――今日が俺の命日かもしれない。

 あぁ、せっかく念願の後輩ができたのに。

「敬礼ッ!!」

 一喝するギルバートの猛々しい声音に、ゼノは奥歯を噛みしめながら、お手本のような式礼をする。
 彼が勘違いに気付いたのは、約束通りレスターにおごってもらい、余命の心配を笑い飛ばされた時だった。



 整列した新兵達が、いっせいに騎士の礼を取る。
 大勢の人間が彼に従うさまに、エリオットは不覚にも胸を熱くする。
 人を卓越たくえつした存在はいっそ神々しく、自らがつかえる男が誇らしい。

 ――貴方が団長です。

 たまに少し、いや、いつもどこかおかしな男だが。
 平穏には程遠ほどとおく、退屈とは無縁の生活が、エリオットは案外気に入っていた。

 季節は等しく万人ばんにんに降りそそぎ、彼らの上にも花弁が舞う。

 そうしてギルバートの幾多いくたのフラストレーションをぶつけられた新兵達が、過酷を極めた訓練に、一様いちように入団を心の底から後悔したのは、また別のお話。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

ギルドの受付嬢はうごかない ~定時に帰りたいので、一歩も動かず事件を解きます~

ぱすた屋さん
ファンタジー
ギルドの受付嬢アイラは、冒険者たちから「鉄の女」と呼ばれ、畏怖されている。 絶世の美貌を持ちながら、常に無表情。そして何より、彼女は窓口から一歩も動かない。 彼女の前世は、某大手企業のコールセンター勤務。 営業成績トップを走り抜け、最後には「地獄のクレーム処理専門部署」で数多の暴言を鎮めてきた、対話術の怪物。 「次の方、どうぞ。……ご相談ですか?(クローズド・クエスチョン)」 転生した彼女に備わったのは、声の「真偽」が色で見える地味な能力。 だが、彼女の真の武器は能力ではなく、前世で培った「声のトーン操作」と「心理誘導」だった。 ある日、窓口に現れたのは「相棒が死んだ」と弔慰金をせしめようとする嘘つきな冒険者。 周囲が同情し、ギルドマスターさえ騙されかける中、アイラは座ったまま、静かにペンを走らせる。 「……五秒だけ、沈黙を差し上げます。その間に、嘘を塗り直すおつもりですか?」 戦略的沈黙、オウム返し、そして逃げ場を塞ぐイエス・セット。 現代のコールセンター術を叩きつけられた犯人は、自らその罪を吐き散らし、崩れ落ちる。 「あー、疲れた。一五分も残業しちゃった。……マスター、残業代三倍でお願いしますね」 これは、一歩も動きたくない受付嬢が、口先だけで悪を断罪し、定時退勤を目指す物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...