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BL短編 単発
ともだち
しおりを挟む同窓会も出ない、年賀状も書かない付き合いの悪い私ですが、一人大変義理堅い友達がいるのです。
何故彼が親しくしてくれるのかを遡ると、小学生の頃のたわいない出来事に行き着きます。
彼の名前は柴崎君と言います。
二年生だったか三年生だったかその頃の柴崎君は色白で、背も低く女の子みたいでした。ただ彼が遠巻きにされていたのはその外見の理由ではなく、彼の家がテキ屋の元締めでやくざと係わりが深いから付き合ってはダメだと皆が親に言い含められていたからだと思います。
柴崎君の家は傍目からも分かる和風の豪邸で、瓦付きの塀に囲まれ、二重の門の前にはいつも黒いぴかぴかの外車があり、散歩に連れ出される犬はドーベルマンでそれを連れ出す男性はいつも人相の怖い違う人でした。
柴崎君自身はというと、無口で活発という感じではありませんでした。
ただ、裸の大将の群れにコナン君がいるように彼の存在は浮いて見えました。でもそれは私が大人になったから分かる事で当時はそんな事には気がついていませんでした。
そんなある日、柴崎君は転んで膝を擦りむきました。擦りむくというよりは深く血がダラダラと垂れるほどの怪我でした。
「保健室に行かなきゃ」
「いいよ、こんなの」
柴崎君は顔をしかめたまま投げやりに言いました。
「痛くないの?」
「痛いけど、僕の血は汚いからいっぱい流れた方が良いんだ」
傷口にバイ菌が入るから血が流れた方が良いと思っていたのでしょうか。私は子供でしたがいくつか本を読んでいたので血が流れすぎるのは良くない、と言いました。
「血がたくさん出ると死んじゃうんだよ、保健室に行こうよ」
「僕の血は汚いんだよ、汚いんだよ全部流れちゃた方が良いんだよ」
この時の柴崎君の取り乱しかたは異常でした。
怪我が思ったよりも痛くてパニックになっているのかもと思い、私は背後からぎゅっと柴崎君を抱きしめました。
何故こんな事をしたかと言えば水泳の講習で溺れた友達に近づいてはいけませんと習ったばかりでした。そしてプロのセーバーの人が溺れる人を背後から救助するのをビデオで見ていたからだったと思います。
ペットボトルを投げるとかロープを投げるとかも習ったんですけどね。
柴崎君は君は何かに溺れているように見えました。
「大丈夫だよ、汚くないよ。柴崎君の血は全然汚くないよ。血液はねぇ、四ヶ月で全部新しくなるんだよ。もう何回も何回も新しい血になっているんだから汚くなんかないよ」
私は私なりに一生懸命言ったように思います。血のことについては私にいつもお菓子をいっぱいくれる祖母の妹さんが人工透析に行っていました。そしていつもお使いに行く肉屋のおじちゃんも人工透析を受けていました。
そのおじちゃんが「チクショウキリキザンデイルゴウビョウカネェ」と言った言葉が忘れられなくて私は辞典で調べたことがありました。
『畜生切り刻んでいる業病かねぇ』
そんなはずがありません。いつもおまけをしてくれるおじちゃんが私は好きだったので私は何とかしてそれを言いたかったのですが、それをどう伝えて良いか当時はわかりませんでした。「お金持ちになったらケースのお肉とおかずを全部買いにくるからね」…なんかそんな事を毎回言っていたように思います。
ああ、話がすっかり逸れてしまいました。
「ほんとう?」
柴崎君は何度かほんとう?と私に尋ねたように思います。
信じたいけれど、信じられないという不安に満ちた声だったように思うのです。
綺麗か汚いか証明するのは、その時の私には簡単な事でした。
私はぱっとしゃがみ込み柴崎君の傷口に唇をつけました。
残念なことにどんな味がしたかを覚えてはいません。
「ほら、全然汚くないよ。保健室に行こうよ、ばんそうこうはってもらおうよ」
私はもう一度ちゅっと口をつけました。
傷さえなければ、白い石膏にほんの一刷毛桃色を薄く塗ったような綺麗な膝小僧です。
柴崎君が泣き出したので、私は彼の手を引いて保健室に向かいました。
柴崎君が汚いと言ったのは極道の血、娼婦の血でした。
小学生だった私にはまだわからない世界でしたが、この時私が汚くないと断言したことで、柴崎君は自殺するのをやめたと後日言いました。
それから彼が変わっていく様は蛹が蝶になるようでした。
ただ、蛹の時から綺麗ではあったのですが。
そして外見はひどく変わっても、根底にあるのは血へのこだわりでした。
大人になって、それがよく分かるのに私は子供の頃のように素直に振る舞えません。
大人になって再会して、一緒に酒を飲むこともありますが。
彼はもう溺れる姿を見せません。
私も彼の膝に唇をつけることはないでしょう。
友達でいつづけるにはそれが良いように思うのです。
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